コラム「透視図」

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夏の長雨

2017年8月18日

 もう20年近く前の話だが、宮之浦岳を登山がてら縄文杉を見るため屋久島を訪れたことがある。淀川登山口から荒川に縦走するルートで、日程は2泊3日
 ▼本道とは趣を異にする山容や樹齢数千年といわれる杉の巨木、こけむした深い森には胸を打たれた。ただ、全行程のうち雨に当たらなかったのは最初と最後の数時間のみ。さすがに「屋久島では、1カ月に35日雨が降る」と聞かされただけあると感心したものだ。もちろん「1カ月に35日」は大げさだが、東京や仙台に暮らす人もそろそろそんな気分にとらわれているのでないか。両地域とも記録的長雨に見舞われている。東京では今月1日からきのうまで17日、仙台でも7月22日からきのうまで27日連続で雨が降ったそうだ
 ▼「水面に刺さる一瞬水ならず輪をひらきつつ走る雨脚」時田則雄。そんな光景が毎日のことらしい。特に東京では統計開始以来2番目、8月としては22日連続して降った1977年に次ぐ長さとのこと。かなりうっとうしい記録だが。雨だけでなく日照不足と低温も困りものだ。関東では野菜が値上がりを始め、夏物商戦やレジャーも軒並み低迷していると聞く。消費は湿るばかりだろう
 ▼内閣府は先頃、ことし4―6月期のGDP速報値を発表した。実質で前期比1.0%増、年率換算で4.0%増と好調だった。けん引役の一つは個人消費である。それがここにきて天候不順の急ブレーキ。実はこの天気、全国的な傾向という。1カ月で35日とは言わないがせめて半分は晴れてくれないと、消費も心も上向きそうにない。

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夏休み

2017年8月17日

 この夏休みも子どもたちの宝物になるたくさんの思い出が生まれたのではないか。「西瓜を食べてた 夏休み 水まきしたっけ 夏休み ひまわり 夕立 せみの声」
 ▼「麦わら帽子は もう消えた」で始まる吉田拓郎さんの歌『夏休み』だが、今振り返ると詞に出てくるような特別でないことでも、夏休みというだけでなぜあれほど楽しく感じられたのか。今も昔も子どもにとって夏休みは魔法の時間であるらしい。いや子どもたちにとってだけではなさそうだ。孫が遊びに来たおじいちゃん、おばあちゃんにとっても貴重な時間に違いない。『こどもの詩』(文春新書)に、「夏休みの一番楽しかったこと」があった
 ▼「おばあちゃんの家に行った いっぱいけがをしたけれど 一番たのしくあそんできた 滝を見にいったり みんなでごはんを食べにいったりした 帰るとき おじいちゃんがなぜか泣いていた そのあとで にがわらいしていた」(橘祐樹・小5)。自分のことだと思う人も多いのでないか。ところがおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行った帰り、泣いて別れを惜しんだ孫も10年もたてば自然、足は遠のいていく。子どもの成長は早いものである。そんなうれしくも寂しい現実を知っているからこそのいとしさでもあろう
 ▼さて子どもたちには残念なことだが、本道の小中学校ではほとんどが21日、早い地域だとあす、新学期が始まる。宝物のような思い出は残ったが、実は宿題もまだいっぱい残っているという子も少なくないのでないか。こればかりは魔法でもどうにも…。

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「山の日」に

2017年8月11日

 きょうは「山の日」である。去年設けられた国民の祝日だが、お盆と並んでいるためか少々影が薄い
 ▼ただ深田久弥氏が著書『日本百名山』に「日本人ほど山を崇び山に親しんだ国民は、世界に類がない。国を肇めた昔から山に縁があり、どの芸術の分野にも山を取扱わなかったものはない」と記している通り、古くから日本人と山との関係は深く濃い。今回は山にちなんだ言葉を紹介し、「山の日」に色を添えたい。最初にアイガーなど世界三大北壁の冬期単独登山を成功させた長谷川恒男。「みんなの中に、きっと北壁があると私は信じている。その壁に向かって努力している人は、きっとまた新しい壁を見つけるだろう」。誰もが汗をかきながら、心の中の自分の山を登っている
 ▼次に夏目漱石の『行人』から。「君は山を呼び寄せる男だ。呼び寄せて来ないと怒る男だ。(中略)。そうして山を悪く批判する事だけを考える男だ。なぜ山のほうへ歩いてゆかない」。来ぬことに怒るのでなく自分が動くべき。続いて世界7大陸の最高峰を登頂した女性登山家田部井淳子さん。「知らない山では近道を選んではいけない」。楽そうに見える道には思わぬ落とし穴がある
 ▼石塚真一氏の山岳漫画『岳』で主人公島崎三歩が遭難者らにまず掛ける言葉。「良く頑張った」。つらいとき、ねぎらいの一言に勇気が湧く。最後は食生態学者西丸震哉氏の仲間との会話。「山なんか登るやつはバカだよ」「あしたっからはバカになるんだなあ」。二人はきっと笑顔だろう。人生、ばかなことほど面白いことはない。

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人生の質

2017年8月10日

 米国の小説家アーネスト・ヘミングウェイに短編「挫けぬ男」があるのをご存じだろうか。かつて闘牛士として一時代を築いたマヌエルが返り咲きを夢見、興行師の戸を叩く話である。ただ、既に老い、けがで片足を失っていた。しかも病院から出てきたばかりという
 ▼復帰は無理と見た興行師が「どうしてまともな仕事を見つけて働きに出ないんだ」と尋ねると、マヌエルはこう答える。「あっしは闘牛士なんだ」。やりがいもなく命をつないでいるだけなら、本当に生きているとはいえないとの意志表明だろう。仕事でも趣味でも、自分のしたいことができてこその幸福。「クオリティー・オブ・ライフ(人生の質)」が近年重視されるゆえんである
 ▼病状が進んだ高齢のがん患者に積極的な治療をしない病院の割合が高まっているそうだ。国立がん研究センターがきのう発表したデータで分かったことである。手術や薬の副作用で苦しませるより、人生の質を高めるよう治療のあり方が見直されているらしい。ホスピス医小野寺時夫氏は著書「人は死ぬとき何を後悔するのか」(宝島社新書)で嘆いていた。余命少ない貴重な時期を効果のない治療に費やし、ずたずたになってからホスピスに来てすぐ亡くなってしまう患者が多いのだとか
 ▼先の小説でマヌエルは勝負の機会を与えられ、闘牛場で果敢に戦った。あえなく牛に瀕死(ひんし)の重傷を負わされたものの、絶え絶えの息の中、誇らしげに言うのである。「すばらしい成功をおさめるところだった」。最後までかく自分らしくありたいものだ。

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暑い日が続く

2017年8月9日

 先の日曜日のこと、札幌の新川通でジョギングをしていたのだが、前田森林公園を走っている辺りで暑さに耐えられなくなった。午後1時すぎころである。後で調べると気温は30度近くに達していた。日差しが強く照り返しもあるから体感としてはもっと高い
 ▼ほうほうの体で道沿いのスーパーに逃げ込み、アイスを食べて体を冷やし事なきを得た次第。店はそんなランナーたちでちょっとしたにぎわいを見せていた。「炎天のここが中心かと思う」山中麦邨。真夏の日盛り、自分が太陽に一番あぶられているような気になるから不思議である。もっとも感じ方は人それぞれ。暑さに強いと過信して熱中症になる人もいると聞く。注意を呼び掛ける人が身近にいるに越したことはない
 ▼同じ日曜日、北海学園大アメリカンフットボール部の男子部員が部活中に熱中症で亡くなったそうだ。午後2時すぎのことだったという。注意を呼び掛けてはいたのだろうが、事故が起きたのであれば何かが間違っていたのだろう。「炎天下道路工事に脱帽す」松尾美代子。道路工事に限らず、屋外の現場で作業する方々には本当に頭が下がる。本道も平年以上の高い気温で推移しているが、西日本などでは35度を超える猛暑が続く。汗で身も細る毎日なのに違いない
 ▼水分と塩分の補給は適切か、休憩はとれているか、つらいけど急いでいるからと無理はしていないか。個人に全てを任せるのでなく、管理監督者が目配りし、早め早めに手を打つのが肝要である。熱中症による死亡の悲劇を防ぐのに、予防に優る近道はない。

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