コラム「透視図」

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宗谷ひと図鑑

2017年3月24日

 「宗谷ひと図鑑」という小冊子をご存じだろうか。宗谷地方の高校生が若者ならではのみずみずしい視点で地元の人々をインタビューし、その魅力を紹介する写真誌である
 ▼ことし1月に第2号が出たばかり。2015年11月に第1号を発行している。筆者も最近知り、宗谷総合振興局地域資源活用推進室に送っていただいた。この内容が素晴らしい。宗谷をわが都と定め、頑張る人の姿を実に生き生きと伝えている。管内人口減少に歯止めをかける「SOYA移住・定住促進事業」の一環として実施しているとのこと。2号「継続は力なり」では浜頓別と枝幸両高の生徒が手分けして取材している。固いことはさておき肝心の中身に触れたい
 ▼チーム「ふるくら!!」は、札幌出身だが「スーツを着て仕事するのは得意じゃなかった」ため枝幸で漁師になった男性から話を聴いている。チーム「白鳥豚」は林業会社の社長に、「自分達が守り続けてきた山を若い人達にも守り続けていってほしい」との夢を託された。一方、1号「島を愛す」では利尻と礼文両高の生徒が取材を担当。チーム「りっぷ」は利尻島で食堂を営む91歳(当時)の女性から島で生きてきた歴史を学んだ。チーム「アツモリ」は礼文島が気に入って移住した米国人男性に、地元の人が見落としがちな島の良さを教わっていた
 ▼まだまだ多くの人が登場している。機会があればぜひ実際に手に取って見てほしい。2号の巻頭の詩で吉田紫音さん(浜頓別高2年)もこう呼び掛けていた。「平凡にこそ隠れる魅力、あなたにも見てほしい」。

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テロ準備罪法案

2017年3月23日

 函館に住んでいたとき、家具の後ろから突然ムカデが出てきて驚いたことがある。グロテスクな姿が大層恐ろしく、しばらくは黒くて細長いものを見るたびビクついていたものだ。家具の裏を見ることさえできなかった。ムカデではなくとも似たような経験を持つ人は多いのでないか
 ▼人は一度恐ろしい目に遭うと、その記憶からなかなか逃れられない。「蛇にかまれて朽縄におじる」ということわざもあるくらいだ。進化の途上で生き残りのため自然と身に備わった危険回避の能力が、さほどそれを必要としなくなった現在も残っているらしい。臆病風に吹かれることだけが理由ではないのである
 ▼ただ、これも程度問題で、「すっかりトラウマ(心の傷)でして」と笑い話にできるうちはいいが、度を越すとPTSD(心的外傷後ストレス障害)に進み激しい恐怖心で心身に過剰な反応が出る。犯罪や自然災害、戦争などで命にかかわる悲惨な体験をし、許容範囲を超える心理的衝撃を受けると発症するという。政府が21日、「組織犯罪処罰法改正案」、いわゆるテロ準備罪法案を国会に提出した。審議はまだだが既に各方面で始まっている議論を見ていると、社会にもPTSDがあると思わないわけにいかなかった
 ▼戦時下の治安維持法と同じ経過をたどるのではと激しく反対する論調が目立つからである。戦争が残した傷痕はそれほど深かったのだろう。心配は当然だ。一方で国際関係上、必要な法案と指摘されてもいる。それが毒ヘビなのか犯罪者を縛る縄なのか、国会で明らかになればいいのだが。

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春になると

2017年3月22日

 詩人の丸山薫に今時季の情景を描いた一編「北の春」がある。作品の中にこんな一節があった。「緩みかけた雪の下から 一つ一つ木の枝がはね起きる それらは固い芽の珠をつけ 不敵な鞭のように 人の額を打つ」
 ▼当方も先週土曜、札幌近郊の空沼岳に登り幾度か木の枝に額をむち打たれたため、この詩を思い出した次第。頂上付近にはまだ冬の趣がそのまま残っていたが、麓の方では春が顔をのぞかせていた。春分の日も過ぎ、いよいよ本道にも本格的な春がやってきそうだ。真冬日もめっきり減った。「女子寮のピンポンの音春めけり」谷内瑞江。長く寒い冬が終わり、心が浮き立ってくるからだろうか、何を見ても聞いてもそこに春を感じてしまう。不思議なものである
 ▼本道ではまだ1カ月ほど先のことになりそうだが、東京では早くもきのう、桜が開花したとのこと。「一からの出直しとなる桜かな」磯野充伯。毎年、桜前線の話題が出ると、自然と気持ちが新たになるのも日本人ならではだろう。春はまた、異動だ何だと身辺が騒がしく、心が不安定になる季節でもある。事実、自殺者が一年で最も多いのもこの3月だという。厚労省がきのう発表した2016年度「自殺対策に関する意識調査」によると、成人の4人に1人が自殺を考えたことがあるそうだ
 ▼まあ慌てることはない。つらいことは頭を低くしてやり過ごそう。「時ものを解決するや春を待つ」高浜虚子。あれだけ悩まされた雪も春には解ける。心に積もったものが消えれば、元気な自分も木の枝のように跳ね起きよう。

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何もなかった?

2017年3月18日

 サラリーマンの悲哀を描かせたら右に並ぶ者のない青木雨彦のエッセイに、こんな一節があったのを覚えている。昔読んだ話のため正確ではないが、単純な内容だから筋は違っていないはずである
 ▼夫の不倫がついに妻にばれてしまった。怒った妻は大変なけんまくで夫を問い詰める。一体いつから、相手の女とはどこで会ってたの―。夫は防戦一方。こう言うのが精いっぱいだ。本当に何もなかった、信じてくれ―。そんな小さな問題と一緒にするなとお叱りを受けそうだが、ちゃかしたくもなろう。あまりにお粗末ではないか。南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報が、奇術さながらに消失したり現れたりする一件である
 ▼防衛省は当初、廃棄したのでもう存在しないと言っていた。相手が信じてくれることを期待して、「なかったんだよ」と苦しい言い訳をしてみたわけだ。ところが国会で追及され再調査してみると、統合幕僚監部にも陸自にもデータが残っていたのである。見つかった時点ですぐ公表していれば傷も浅くて済んだ。ところがずるずる引きずっているうち、1月下旬に統幕の防衛官僚から公表するなとの指示が出たらしい。今さらあったとは言えない、なかったことにしようというわけだ。その官僚にとって防衛すべきは自分と省だったに違いない
 ▼浮気と防衛省の虚偽対応、騒動に大小はあれど、共通するのは一度地に落ちた信頼はなかなか回復しないことだ。国民に三くだり半を突き付けられる前に、防衛省は徹底して身をきれいにした方がいい。

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ベスト・カントリーズ

2017年3月17日

 米国の時事解説誌USニューズ&ワールド・レポートが先日、「2017ベスト・カントリーズ」を発表した。どこの国が最も優れているのか、さまざまな観点から分析し順位付けしたものである
 ▼日本は80カ国中、5位だったそうだ。一番の評価項目が起業家精神なのは意外だったが、指標を見て納得した。万全のインフラを備え、世界との交流も盛ん。教育程度が高く革新的技術も豊富。抜群の環境があるわけだ。上位は1位からスイス、カナダ、英国、ドイツときて、日本以下スウェーデン、米国、オーストラリア、フランス、ノルウェーと続く。経済力も重要な指標ではあるが、お分かりの通りそこに偏ってはいない。ベスト3を見ると、スイスは市民意識と充実した仕事環境、カナダは生活の質、英国は同盟関係を背景とした国際的影響力がそれぞれ高く評価されている
 ▼ちなみにお隣の国々はといえば、中国20位、韓国23位、ロシア27位。自由や公平性が社会に根付いているかどうかで差が出るらしい。経済は依然ぱっとせず、政治はごたごた続き。目を覆いたくなるような事件も相次ぐ。ニュースをただ聞いていると日本は救いようのない国に思えてくるが、実は他国からの信頼も厚く、可能性に満ちた国なのである。「ベスト・カントリーズ」が示すのはそういうことだ
 ▼きょうは多くの小学校で卒業式が予定されている。巣立ちの日を迎え、子どもたちの目は希望に輝いていよう。彼らは「ベスト・カントリー」の継承者である。大人が悲観的な側面ばかり見せて輝きを失わせてはいけない。

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