コラム「透視図」

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昭和の日

2017年4月29日

 黄金週間が始まった。初日のきょうは「昭和の日」である。もともとは昭和天皇の誕生日。今では「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日だそう
 ▼随分と仰々しい物言いだが、この高齢化社会の中で、古き良き昭和の価値に心を寄せる人は実際増えているように見える。貧しくも人情味あふれる昭和を描いた映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のヒットもその表れだろう。昭和を語るうえで忘れるわけにいかないものの一つにテレビがある。先の映画にも、普及に大きな役割を果たした東京タワーの建設風景があった。覚えている人もいよう
 ▼テレビ放映が開始された1953年にNHKの専属俳優となった黒柳徹子さんが、雑誌『ダカーポ』で以前語っていた。当時の普及台数は全国で866台。新卒の月給が9000円の時代に、1台25万円もしたそうだ。ところがいったん世に広まると、政治経済はもとより、ありとあらゆる分野に底知れぬ影響を及ぼしていく。東京五輪に歓声を上げ、全員集合で笑い、ロッキード事件に怒り、御巣鷹山墜落事故に泣いた。テレビが社会に「一億総」の雰囲気を作ったのである。続く平成はインターネット全盛のいわば「一億各」時代。皆一緒の昭和世代には少々寂しいがこれも世の流れだろう
 ▼その平成も天皇陛下退位により30(2018)年で幕を閉じる。特例法案が来月中にも成立する見通しになったらしい。さて「平成の時代」をいつか顧みるのは今の若者たち。悲哀とともに思い出すのでなければいいが。

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はりぼて

2017年4月28日

 漫画家手塚治虫に「赤の他人」という短編がある。読んだのは昔だが人間不信に陥るような薄気味の悪い作品だった
 ▼主人公のアキラが周りの世界に違和感を覚えるところから物語は始まる。皆が演技をしている気がするのだ。秘密を暴こうと悪戦苦闘した末にアキラがたどりついた真実は、自分が操り人形で、その人生は多くの観客を楽しませるための見世物だったこと。風景も建物も「はりぼて」だったのである。その短編を思い出したのは、北朝鮮が久しぶりに海外の報道陣を招いて完成のお披露目をした「黎明(れいめい)通り」のニュースに触れたからである。70階建てタワーマンションを中心とする高層ビル街を新たに整備した事業だが、工期はわずか1年だったという。北朝鮮でだけ物理や化学の法則が異なるのでなければ「はりぼて」に違いない
 ▼映像を見る限り現代風の都市建築で見栄えも良いが、つまりはただそれだけのこと。実際に住むことはできぬ芝居の書き割りみたいなものなのだろう。建物を造るには正しい手順と適切な工期が必要だ。国際社会で確固たる地位を得るのも同じこと。相応の時間はかかる。金正恩朝鮮労働党委員長はそれを核兵器で一気に実現したかったのだろうが、やはり国として「はりぼて」の感は否めない。表に戦争の火種となる核はあっても、その背後に人々の豊かな暮らしはないからである
 ▼「赤の他人」とは反対に、金委員長一人が観客で、国民全員が操り人形として人生を演じさせられているようにも見えてくる。こちらは残念ながら物語ではない。

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良かった?

2017年4月27日

 何げない日常を歌にして、心地よいハーモニーで聴かせる女性デュオ「花*花」のヒット曲に『あ~よかった』(2000年)がある。ご記憶の人もいよう
 ▼盛り上がるサビ部分の詞はこんなだった。「あーよかったな あなたがいて あーよかったな あなたといて あーよかったな 一緒にいて あーよかったな 2人でいて」(作詞作曲こじまいづみ)。大切だと思える人に出会えた幸せを素直につづっている。「良かった」という言葉は、そんな喜びを表現するときにこそ使うものだろう。東日本大震災の発生は「東北の方だったから良かった」といった文脈では使われるはずのない言葉である。なぜそこまで心ない発想ができたのか
 ▼今村雅弘前復興相のことである。おととい開かれた自民党二階派のパーティーで復興状況について講演した際、こぼれた発言という。首都圏に近ければ被害はさらに甚大だったとの趣旨らしいが、だからといって東北で良かったとはならない。比べられる事ではないのだ。勝海舟は「政治家の秘訣は、何もない。ただただ「正心誠意」の四字ばかりだ」(『氷川清話』)とかつて語っていた。今も変わらぬ政治家が肝に銘ずべき指摘だが、今村氏の関心はその四字でなく、被害の数字にだけあったのではないか
 ▼安倍首相が即刻謝罪し、事実上罷免したのも当然だろう。被災者に寄り添うべき大臣がこれでは。後任には被災地福島選出の衆院議員吉野正芳氏を充てるそうだ。新大臣は「あーよかったな あなたがいて」と評価される人であってほしいものだが。

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むかしむかし

2017年4月26日

 この始まりの一節を、子どものころから何度聞いたか分からない。日本人なら皆同じだろう。「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました」
 ▼昔話の開演舞台あいさつのようなものである。金太郎、一寸法師などそこから語られる内容はいろいろなのだが、最後にはやはり定番のせりふで幕を下ろすことが多い。「おじいさんとおばあさんはいつまでもしあわせにくらしましたとさ」、と。なぜ昔話に高齢者がよく出てくるのかについては、敬われていたからとの説がある一方、共同体の中で役割を持たぬ異質な存在だったからとの説もある。さて、それでは今の日本で話を作るとしたら高齢者の役回りはどんなだろう
 ▼この事故の報に触れた後では、悲しい展開ばかり頭に浮かんで仕方ない。おととい、川崎市にある小田急線の柿生駅で高齢の女性2人が通過中の快速急行電車にはねられ死亡した。自殺とみられるという。手をつないで飛び込む様子が防犯カメラに映っていたそうだ。1人はかなりの高齢で、つえをついていたらしい。事情は知る由もないが、そこまで生き抜いてきた末に自殺を選ぶしかなかったのだとしたらあまりに切ない
 ▼厚労省の統計によると、80歳以上の自殺者数はこの10年ほぼ横ばいが続いている。20歳から79歳までは大幅減、中でも50代はほぼ半減しているのにもかかわらずである。何もかも高齢化のせいにするわけにもいくまい。知恵を絞らねば、「いつまでもしあわせにくらしましたとさ」の言葉が近いうち、昔話の中でしか通用しなくなる。

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北海道の桜

2017年4月25日

 本道にもようやく桜前線が上陸したらしい。気象台でなく松前町の独自観測だが、おとといの昼過ぎに松前公園の松前城前でソメイヨシノの開花が見られたそうだ
▼10年ほど前に松前を訪れたときには、幾種類かの桜が見事に咲き競う風景を眺めることができた。「桃色を重ねてさくら空に入る」松山瑛子。松前城では色調の異なるいろいろな桃色の重なりを見ることができて楽しい。そんな満開の日も、間近である。開花と聞いて、少し前に読んだ話を思い出した。ジャーナリスト池上彰氏が斎藤美奈子著『それってどうなの主義』の解説に書いていたことである
▼臨時教育審議会を取材していた際、日本の学校も9月入学を認めてはとの議論になったという。すると、「ある『有識者』が、四月入学の死守を主張して『入学式は、やっぱり満開の桜の下で行われないと』と発言したのです」。これには池上氏もあぜんとしたそうだ。その「有識者」は、日本国中どこでも桜の咲く時期は同じと信じていたらしい。北東から南西にかけて長い日本列島とはいえ、あまりにも想像力に欠ける。もとより本道の入学式が満開の桜の下で行われたためしはない。道産子にとって桜といえばやはり5月ゴールデンウィーク前後の行楽と花見だろう
▼日本気象協会の開花予想によると、函館がきょう25日、札幌が30日、5月に入り旭川が3日、釧路が14日とのこと。新年度が始まってひと月。一息入れるにはちょうど良い頃合いだ。その気持ちに寄り添うように咲く北海道の5月の桜もまた、風情のあるものである。

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