コラム「透視図」

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どこの国?

2017年4月11日

 これから紹介するのがどこの国かお分かりになるだろうか。こんな所である。物乞い、ホームレスはほとんど見掛けず軽犯罪も少ない。バス停や名所旧跡に荷物を置きっ放しにしても後で返ってくる。誰もが家に泊めてくれるし、街中に居心地の良いのんきな雰囲気が漂っている
 ▼さて、どうだろう。答えは「日本」、と思った人も多いかもしれない。実は、今は泥沼の内戦に苦しむシリアの1990年代の姿である。中東特派員経験も持つオランダのジャーナリスト、ヨリス・ライエンダイクが著書『こうして世界は誤解する』(英治出版)に記していた。カイロ大在学中にシリアを旅し、西欧以上に穏やかで整った社会秩序に驚かされたという
 ▼90年代といえばさほどの昔ではない。戦争がいかに短期間で社会を崩壊させるかを示すものだろう。今回の新たな展開が、混迷するシリア情勢にさらなる追い打ちをかけるのは間違いない。トランプ米大統領が踏み切ったアサド政権軍へのミサイル攻撃のことである。米国の攻撃根拠は政権軍の化学兵器使用だが、政権軍や後ろ盾のロシアはこれを否定している。真相はまだ「藪の中」だ
 ▼ヨリス氏は駆け出しのころ、先輩記者にこう助言されたという。中東について書くなら1週間で書いた方がいい。いればいるほど分からなくなるから―。もちろん冗談。意味は全く逆で、目の前の事だけ見ても真相はつかめないからよく調べなさいというのである。トランプ大統領にこそ聞かせたい言葉だが、まあ、ジャーナリストの助言になど耳を貸すはずもないか。

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ふるさと納税

2017年4月8日

 女性3人組アイドルグループ・キャンディーズが引退直前に発表した「微笑がえし」(阿木燿子作詞)の歌詞にこんな一節があった。「お引っ越しのお祝い返しは 微笑にして届けます」
 ▼大好きなアイドルにそう言われたらこちらも笑顔で納得だが、現実には各種お祝い返しをいくらにするか悩むことも多い。一般的には「半返し」とされているものの、相手によっては「返し過ぎ」とかえって迷惑がられたりする。人の気持ちに関わることだから、そのあたりは相手の顔を思い浮かべながら一人一人判断するほかないのだろう。ところで個人間のやりとりではないが、こちらは相手や周りの反応を見ているうちに少々行き過ぎてしまったのかもしれない
 ▼ふるさと納税の返礼品のことである。総務省が先頃、「地方団体の様々な取組を応援する気持ちを形にする」趣旨から逸脱する返礼品が散見されるとして、各自治体に責任と良識ある対応を要請したのである。換金が容易なものや高額なものがあったらしい。筆者もそろそろどこかに納税しようと、少し前から情報サイトを眺めていた。これが地元の名産品めじろ押しで、見ているだけで楽しい。納税というより「全国うまい物めぐり」なのである
 ▼総務省は今回、返礼品は寄付額の3割以内にせよとのお達しを出したが、さてどうだろう。行き過ぎの見直しは当然としても、地場産業振興や交流促進、PRなど各自治体に確かな戦略があるなら一律の制限は不自由でないか。もちろん返礼が「微笑がえし」で済むならそれに越したことはないのだが。

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脅威増す北朝鮮

2017年4月7日

 「名月をとってくれろと泣く子かな」一茶。そういえば昔はどこか店に行くたび、子どものわがままに悩まされたと懐かしく思い出す人もいよう。欲しいものを買ってもらえず転げ回って泣きわめく。今でもごくたまに見掛ける場面である
 ▼子どもには子どもなりの知恵があり、大人を困らせれば目的達成の可能性が高まると分かっているのである。近頃の北朝鮮情勢を見るとそれと同じ場面が頭に浮かんで仕方ない。北朝鮮が5日、再び弾道ミサイルを発射した。雨後のたけのこでもなかろうに、よくまあ次から次へとポンポン出てくるものだ。軍事にばかり予算を使わず民生に充てれば、どれだけ人々の暮らし向きが楽になることか。そう考えると他国のことながら憤りを禁じえない
 ▼6回目の核実験も近いとの確度の高い分析もあるやに聞く。しかも今回は従来の十数倍の規模という。米中会談をけん制するためとの見方もあるが、国際社会への挑発や自国の孤立化に、もはや歯止めをかける気はなさそうだ。暴君の悪名高いローマ皇帝ネロも若くして就任して5年は善政に努めたらしい。ところが次第に実力不足の地金が現れ、周囲への疑心暗鬼を募らせていったという。金正恩氏も同じではないか。権力の継承からはや5年である
 ▼危険な火遊びの段階はとうに過ぎ、現実に平和を脅かす存在になりつつある。最近では自信なのか破れかぶれなのか、名月ならぬ米国を取りたいとの野望を隠しもしない。わがままを言って暴れたからとて、よしよしと聞いてくれる大人などもうどこにもいないのだが。

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春の全国交通安全運動

2017年4月6日

 車のハンドルを握ると途端に性格の変わる人がいる。身に覚えのある人も少なくないのではないか。いつもは温厚なのに、運転すると他の車や歩行者に対してやたら荒い言葉を投げ付け始めるのだ▼もちろん外には聞こえていないのだが、普段のその人を知っているだけに同乗して驚くばかり。なるほど二重人格を描いた恐怖小説『ジキル博士とハイド氏』もただの作り話ではなさそうだと、妙に納得する次第である。この性格の変化は行動科学で「ドレス効果」と呼ばれているものが影響しているらしい。警官などその典型だが、制服を着ると自然とその職業にふさわしい性格になるのが「ドレス効果」。運転者は車を「着る」ことで無意識のうちに強くなった気分となり、優越感に溺れてしまうのだという▼雪が解け、運転を控えていた人も路上に戻ってくる季節になった。きょうから春の全国交通安全運動である。知らぬ間に自分が身の丈を超えたドレスをまとっていないか点検するのに絶好の機会でないか。運動の重点は子どもと高齢者の交通事故防止。道警によると児童のうち最も被害が多いのは小1男子で、特に飛び出しと自宅の近所が危ないそう。新学期も始まった。親御さんは子どもが元気に帰ってくるまで気が気でなかろう▼一方の高齢者は信号のない所での横断や認知機能低下による運転ミス、歩行と運転の両面で注意が必要だ。子どもも高齢者も時に予測できない行動をとる。いっそのことハンドルを握ったら意識して性格を変えてみるとしようか。ただし、思いやり深い方に。

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夢はっけん!

2017年4月5日

 日本の霊長類研究の第一人者で京大総長も務める山極寿一氏は少年時代、児童文学『ドリトル先生』(ヒュー・ロフティング)シリーズが大好きだったそうだ。『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)に教えられた
 ▼動物語を自在に操って世界を旅するドリトル先生に憧れていたらしい。いつの日か自分も「アフリカに行って動物たちと話をしたい」と考え、探検家になることを夢見ていたという。山極氏のように、子どものころの夢をそのまま実現させられる幸運な人はあまりいない。ただ振り返ってみて、夢が人生を航海していく上で羅針盤の役目を果たしてくれた、と感じている人もまた少なくないのでないか
 ▼さてことしの新1年生はどんな夢を持っているだろう。あす、本道の多くの公立小学校で入学式が行われる。第一生命が1月に発表した児童の「なりたいもの」調査では1位が男子でサッカー選手、女子で食べ物屋さんだったとのこと。とはいえ、職業だけが夢の全てではない。そもそもまだ夢などなくても一向に困らない。読売新聞家庭面の「こどもの詩」精選集『ことばのしっぽ』(中央公論新社)にこんな詩があった。吉田駿君(小1)作「はっけん!」である。「おひめさま めをぬいたら おひさま/ありんこ りをぬいたら あんこ/にんじん んをぬいたら にじ!/わぉ!」
 ▼「にんじん」が「にじ」に変わるのを発見し、おまけに心でその虹を見て歓声を上げるなんて畏れ入った。子どもは夢を考える天才である。大人が余計な邪魔をしない限り。

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