コラム「透視図」

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安倍内閣改造

2017年8月1日

 戦前の児童文学界の第一人者、小川未明の童話に「赤いろうそくと人魚」がある。ご存じの人も多いだろう。とある町に住むろうそく売りの老夫婦が人魚の赤ちゃんを拾って大切に育てる話だ
 ▼人魚が驚くほど美しい娘に成長したころ、一人の香具師(やし)が見世物にするから売ってくれとやって来る。老夫婦は大金に目がくらみ人魚を渡してしまう。それからは海が荒れるようになり、海難事故が相次ぐのである。老夫婦の優しさはメッキで、金の亡者が地金だったというわけ。地金とはその人の隠された本性だから、それがあらわになると他人に付け込まれやすいし自分の脇も甘くなる。見ていると最近の安倍首相も、また地金を出して失敗しているなと思わずにいられない
 ▼まず稲田朋美氏のことである。28日、持ちこたえられず防衛相を辞任したが、異例の抜てきまでして入閣させた首相は最後まで稲田氏を守ろうとした。戦後日本の自虐史観否定など首相と思想信条を同じくすることがその理由らしい。国有地の安値払い下げが疑惑を持たれた森友学園問題もそう。どうやら空騒ぎだったようだが、もともと道徳教育を重視する籠池理事長の教育方針に首相が共鳴したのが発端である
 ▼デフレ脱却に力を注いでいるうちは良かった。ところが地金であろういわゆるタカ派的性格が出ると足元をすくわれる。「戦後レジームからの脱却」をうたい文句にした一次内閣時と同様でないか。あさってには政権浮揚を期して内閣改造が行われるという。さて新装安倍丸の行方は安定航海か、それとも難破か。

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蓮舫民進党代表辞任

2017年7月29日

 文章表現やコミュニケーション能力の指導をしている山田ズーニーさんは、長年勤めたベネッセを辞めて独立した後、自分の言葉が突然無力になる経験をしたそうだ
 ▼誰に何をどう言っても、理解されなくなったらしい。会社時代と同じことを、同じ手続きで話しているのにもかかわらずである。『あなたの話はなぜ「通じない」のか』(筑摩書房)で当時を振り返っていた。「翼をもがれ」たような気がしたという。言葉に力が戻ってきたのは、3年ほどたってからだったようだ。それでようやく分かったのだとか。「言葉が通じないのは、通じるだけの信頼関係がないからだ」と。肩書や所属に原因があったわけではなかったのである
 ▼この人の場合も、精一杯やっているのになぜ私の言葉が多くの人に受け入れられないのかと、歯がみし続けた10カ月でなかったか。蓮舫氏のことである。おとといの記者会見で、民進党代表を辞任する意思を明らかにした。国民との信頼関係ができなかったということだろう。NHK放送文化研究所の月例調査によると、蓮舫氏代表就任直後の民進党支持率は9.9%。悪くない滑り出しだった。ところが翌月にはもう落ち始め、今月はとうとう5.8%である
 ▼相手の人格を攻撃する弁舌や一貫しない二重国籍の説明を聞かされ続けては、信頼が育たないのも当たり前。ただ蓮舫氏にのみ責任を負わせるのは不公平だろう。代表を支えようとの気概が民進党からはまるで感じられなかった。それぞれ別の方を向き信頼関係も築けない党が国民に信頼されるわけもない。

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やまゆり園事件から1年

2017年7月28日

 先週、105歳で亡くなった聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんは、晩年、「しっくりなじむことば」に出合ったという。アウシュビッツ強制収容所での日々をつづった『夜と霧』の著者フランクルのこんな言葉である
 ▼「しあわせはけっして目標ではないし、目標であってもならないし、さらに目標であることもできません。それは結果にすぎないのです」。著書『生きかた上手』(ハルメク)に記していた。日野原先生は人生を顧みて、確かに幸福は「結果として与えられるにすぎない」とふに落ちたそうだ。幸福とは心の状態を指し、意志によって獲得できるものでないと分かっていたからである。その上で童話『青い鳥』を引き、外を探すのでなく「心の内にある」幸福に気付くべきだと説いていた
 ▼相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が殺害された事件から1年が過ぎた。残酷な所業で命を奪われてしまった入所者たちの心の内にも、それぞれその人なりの幸福があったに違いない。植松聖被告はそれを想像しようとも思いやろうともしなかった。もっとも、かたくなな偏見と差別に覆われた目に入所者の心の内にある幸福が見えたはずもないが
 ▼先生はこうも強調していた。「異質なものが混在するから、文化は成熟し、継承されます。類で群れ合って楽を求めているかぎり、社会に、未来を切り拓くような力がみなぎることはありません」。苦労はあっても互いの違いを認め、補い合って生きるから社会は進歩するということだろう。被告のような独善は誰も幸福にしない。

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血液1滴でがん診断

2017年7月27日

 昆虫といえば身近な生き物の一つだが、小さな体に似合わず驚異的な能力を持つものも少なくない。例えば生殖行動の場面
 ▼雌が雄を引き寄せるのに化学物質フェロモンを放出することはよく知られているが、カイコガ科の一種は空気中にあるわずか1分子のフェロモンを感知できるらしい。「大海の一滴」を的確に感じ取る雄の執念や恐るべしといったところである。『昆虫はすごい』(光文社新書)に教えられた。ところで人間も負けてはいない。国立がん研究センターなどが参画する研究開発プロジェクトが、1滴の血液で13種類のがんを発見できる新しい手法を開発し、来月から臨床研究に乗り出すそうだ。がん細胞が血液中に分泌する「マイクロRNA」を調べることでがんの種類まで特定できるのだとか
 ▼しかも正確度はいずれも95%を超えるそう。このマイクロRNA、直径2(10億分の2)mのDNAよりはるかに小さいというから、血液1滴といっても大海の中から検出するようなものである。画期的なのは、腫瘍マーカーが一定程度進行したがんでないと測定できないのに対し、この検査方法だとごく早くに多くの種類のがんを一遍に見つけられること。胃、肺、乳、大腸、食道と比較的日本人に多いがんが対象なのもうれしい
 ▼早期発見なら完治も珍しくなくなっているのが今の医療である。診断装置やデータベースができ、検査体制も整えばあとは病院で気軽に血液を採取してもらうだけ。検診率も大幅に上がるに違いない。フェロモンではないが大いに興味を引かれる話である。

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現代の一揆

2017年7月26日

 日陰に生きる忍者の目線で江戸期の世相を描いた白土三平の漫画『カムイ伝』を読んでいると、百姓一揆の場面がよく出てくる
 ▼飢饉(ききん)が発生しているのに、藩主はそんな事態にはお構いなしの遊興ざんまい。あろうことか財政が行き詰まると年貢を重くする暴挙に出る。虐げられた人々が怒るのも当然だが、藩主側は徹底した弾圧でそれに応える。漫画とはいえその理不尽さに暗たんたる思いがしたものだ。この人も一部の県民から「殿」の愛称で呼ばれているそうだから、藩主として少なからず気の緩みがあったと非難されてもやむを得まい。秋田県の佐竹敬久知事のことである。大雨のため避難勧告などが相次ぎ、県内が危機的状況にあった22日に他県でゴルフや飲酒を楽しんでいたそうだ
 ▼想定を超える雨量だった上、翌日県庁に向かおうとしたら土砂崩れで道を阻まれる不運もあったことを思えば、『カムイ伝』の藩主と同列に扱うのは気の毒か。ただ、判断に誤りがあったのは隠しようがない。佐竹知事以上に判断を誤っているのが今の国会でないか。九州と東北が続けて記録的大雨に襲われたこの局面で開かれた閉会中審査の中心課題が、特区の一案件にすぎない「加計学園問題」というのである
 ▼のんきなものだ。濁流や土石流、氾濫で苦しむ人々を横目にエアコン完備の国会で空論を戦わせているだけなのだから。年々破壊力を増す大雨災害への対策を根本的に見直す審議こそ最優先するべきだろうに。野党も与党も世論調査で支持率が伸びない。国民の一揆はもう始まっている。

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