コラム「透視図」

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グリフィンさんの失敗

2017年6月6日

 米国のコラムニスト、マイク・ロイコが以前、ロナルド・レーガン大統領を皮肉る一文を物していたのを覚えている
 ▼レーガンは当時、軍事に大金を投入する一方で、貧困層への援助は削減する方針を打ち出していた。ロイコはまず「賢明なやりかた」と太鼓判を押す。その上でこう説明するのである。貧困層をさらに困窮させると必ず暴動が増える。それを鎮圧するには軍備の増強が必要に決まっているではないか。ロイコはさらに言葉を重ねる。レーガンが政府予算を策定するに当たっての論理は「クリスタルのごとく明快」。コラムを読んだ読者はきっとニヤリとしただろう。現代風に言えば「ほめ殺し」である。ユーモアを交えた風刺は時に真正面からの批判より力を持つ
 ▼ただこちらはどうやらそのユーモアをはき違えてしまったようだ。米国のコメディー女優キャシー・グリフィンさんが、トランプ大統領とみられる斬首された血まみれの人形の頭を持った動画を公開し、非難が殺到している件である。欧米のコメディーで際どい政治風刺は定番だが、これは悪趣味すぎて笑えない。「IS」の処刑映像を思い出した人もいよう。英国などでテロが続く昨今である
 ▼ロイコはコラムの締めに「他のどんな手段をもってしても果たせなかったことを、レーガンの福祉改革はやり遂げようとしている」と書いた。貧困者が死ぬから問題もなくなるとの毒舌だ。グリフィンさんもロシア人の格好でこう言うべきだったのでないか。「パリ協定脱退のおかげでこれからはシベリアでも暖かく暮らせます」。

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測量の日

2017年6月5日

 残雪も消え、のんびりと山を歩くにはいい季節になった。山の旅に必携品は幾つかあるが、国土地理院の地形図もその一つ
 ▼慣れた山なら登山ルートを知るのに首っ引きになることはない。ただ、時折取り出して実際の沢筋や斜面と地図を見比べてみるのも楽しいもの。形ある現実の風景を一枚の紙の上に落とし込む精密な技に、ある種の美しさを感じるからだろう。初めての山では当然、その技に大いに助けられる。物理学者の寺田寅彦も地図の価値を知る人だったらしい。1934年の随筆「地図をながめて」に、「学び得らるる有用な知識は到底金銭に換算することのできないほど貴重なもの」と記している
 ▼当時地形図の製作に従事していた陸軍参謀本部陸地測量部の技術者のことも、「まじめで忠実で物をごまかさない頼もしい精神」の持ち主と評価していた。さらには、「一本の線にも偽りを描かないようにというその科学的日本魂のおかげであの信用できる地形図が仕上がる」。絶大なる信頼である。地形図に限らず、日本のインフラ施設が優れているのも測量技術者が今も「科学的日本魂」を受け継いでいる証拠だろう。正確な位置を提供すべき測量が雑なら、まともなものができるはずもない
 ▼経緯儀を持ち運ぶ時代から、トータルステーションやGNSS、UAV(無人航空機)など新鋭機器を駆使する時代に移りはしたが、「頼もしい精神」まで変わってはいないというわけだ。きょうは測量の日。寺田氏の視点で測量技術を頭に描きながら、インフラを眺めてみるのもまた一興である。

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慈善コンサート

2017年6月2日

 米国の歌手アリアナ・グランデさんは、その飛び抜けた歌唱力と華やかさからマライア・キャリーの再来とも呼ばれているそうだ。そういえばうちの娘もよく聴いているな―と思い出す人も多いのでないか
 ▼実質的なデビュー曲は2013年発表の「ザ・ウェイ」。この中で彼女はこんな趣旨のことを歌っていた。「あなたが望むなら、私は毎日でもそうする。いつもあなたのそばにいる。決して離れることはない」。きっとアリアナさんは今も、そんな心境にあるのではないか。5月22日に発生した自爆テロで犠牲になった人々らのための慈善コンサートを4日、現地マンチェスターで開くことに決めたという。英BBCニュースが伝えていた
 ▼自身のコンサート終了直後に起こったテロである。子どもや若い女性を中心に22人もの犠牲者が出た。それだけに驚きや悲しみはひとしおだったろう。恐怖感も小さくなかったはず。なのにテロには屈せず、現地に戻って多くの人と思いを分かち合おうというのである。彼女の勇気をたたえたい。慈善コンサートの題名は「ワン・ラブ・マンチェスター」。アリアナさんに共感し、カナダのジャスティン・ビーバーさんや米国のケイティー・ペリーさん、英国のコールドプレイらも顔をそろえるそうだ
 ▼収益は全て、マンチェスター市と英赤十字が設立した緊急基金に寄付されるという。心配なのは再度のテロ攻撃。関係者は万全を期していよう。何事もなければいいのだが。音楽の力で自由と平和を守る。アリアナさんの願いが無事かなうことを祈るばかりだ。

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うんこ漢字ドリル

2017年6月1日

 近頃、小学生の間で大流行しているものの一つに、『うんこ漢字ドリル』(文響社)なるものがあると知り手に取ってみた
 ▼もし朝食時に小欄を読んでいるのであれば、心の準備をしておいていただければ幸いである。書名だけ見て不真面目な内容かと思ったら、これが大間違い。言うと子どもたちが無条件に喜ぶ「うんこ」という言葉を全例文に使い、漢字の読み書きを楽しく学べるよう工夫したドリルなのである。何はともあれ、6年生版の例文を幾つか紹介したい。かっこ内が問題である。実際には回答欄も全て「うんこ」の形をしている。まずは読み問題。「自(己)しょうかい代わりにうんこをさせていただきます」「父の会社に、急いでうんこを(届)ける」
 ▼読者のため息が聞こえそうだが次に書き問題。「(ぜん)悪はさておいて、うんこが出てしまった」「きょ大なうんこを運ぶため、トンネルの(かく)張工事をする」。まさに型破りである。ただこれなら確かに難しい漢字も覚えられそうだ。文響社は「笑顔で机に向かう子どもたちが増えてほしい」との願いを込めてこのドリルを作ったという。子どもたちは熱狂的に支持し、発行から2カ月でシリーズ累計180万部の大ヒット。低迷著しい出版業界には干天の慈雨となった
 ▼やはり支持率低迷著しい民進党も、ドリルに学ぶところ大かもしれない。最近は森友、加計、便宜、忖度(そんたく)とこちらもいろいろ漢字を並べて政権攻撃の大ヒットを狙っているが空振り続き。「うん」も大切だが何より国民の心をつかむ工夫がいる。

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ビール安売り規制強化

2017年5月31日

 明治から昭和前期にかけて、文学者と酒は分かち難い関係で飲み方も豪快な人が多かったらしい。小説家の火野葦平もご多分に漏れず、中でも無類のビール好きとして名が通っていたそうだ
 ▼愛好する気持ちが高じて、「ビールの歌」まで作ってしまったくらい。一部を紹介すると、「ビールこそよろしきものか白き泡/かみつつあれば世界はいらず」「ビールびん百ダースほどならべおき/将軍のごと閲兵をする」。これはわが心の内を歌っているのでは、と思われた人も少なくないのでないか。当方もその一人である。汗をかいた後に飲む、あの冷たいビールといったら。ところでそのビールの気が抜けてしまうような無粋な話題で恐縮だが、あすからついに酒の安売り規制強化が始まる
 ▼酒税法の改正により、過度な安売りをすると酒類免許取り消しも含む厳しい処分を受けることになるそうだ。ビール会社や卸の販売奨励金で安売りの目玉づくりをしてきたスーパーなど量販店にとっては相当な痛手だろう。もちろん懐の寂しい一消費者にとっても値上げはつらい。葦平と違いビールを100ダース並べて閲兵することはないにせよである。最近は消費税が8%のせいもあり、ちょっと買い物をしたつもりでもすぐ目を見張る金額になる
 ▼どうやらビールも気軽には買い物籠に放り込めなくなりそうだ。仕方がない、これを機にビールはあまり飲まないことにしようか。「前言をはや撤回やビール干す」橘夫仁子。暑くなる6月でもある。少し高くてもやはり「白き泡」の誘惑には勝てる気がしない。

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