コラム「透視図」

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ベスト・カントリーズ

2017年3月17日

 米国の時事解説誌USニューズ&ワールド・レポートが先日、「2017ベスト・カントリーズ」を発表した。どこの国が最も優れているのか、さまざまな観点から分析し順位付けしたものである
 ▼日本は80カ国中、5位だったそうだ。一番の評価項目が起業家精神なのは意外だったが、指標を見て納得した。万全のインフラを備え、世界との交流も盛ん。教育程度が高く革新的技術も豊富。抜群の環境があるわけだ。上位は1位からスイス、カナダ、英国、ドイツときて、日本以下スウェーデン、米国、オーストラリア、フランス、ノルウェーと続く。経済力も重要な指標ではあるが、お分かりの通りそこに偏ってはいない。ベスト3を見ると、スイスは市民意識と充実した仕事環境、カナダは生活の質、英国は同盟関係を背景とした国際的影響力がそれぞれ高く評価されている
 ▼ちなみにお隣の国々はといえば、中国20位、韓国23位、ロシア27位。自由や公平性が社会に根付いているかどうかで差が出るらしい。経済は依然ぱっとせず、政治はごたごた続き。目を覆いたくなるような事件も相次ぐ。ニュースをただ聞いていると日本は救いようのない国に思えてくるが、実は他国からの信頼も厚く、可能性に満ちた国なのである。「ベスト・カントリーズ」が示すのはそういうことだ
 ▼きょうは多くの小学校で卒業式が予定されている。巣立ちの日を迎え、子どもたちの目は希望に輝いていよう。彼らは「ベスト・カントリー」の継承者である。大人が悲観的な側面ばかり見せて輝きを失わせてはいけない。

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横文字略語

2017年3月16日

 いつからだろう、横文字略語がこんなにはびこり出したのは。DIY(日曜大工)が使われ始めたころはさほど多くなかった気もするが、CEO(最高経営責任者)だのCOO(最高業務執行責任者)だのが広まり出した10年ほど前から急に増えてきた感がある
 ▼日本がグローバル化したのか、それとも和訳するのが面倒になったのか。いずれにせよかっこ書きがなければまるで意味が分からない。難儀なことである。横文字もあまり縁のないところで使われているだけならどうということはない。ところが近頃は建設分野にまでこの流れが押し寄せているようだ。例えば本紙14日付4面、国土交通省の「技術基本計画案」の記事はこんな調子である
 ▼〈「人を主役としたIoT(インターネットオブシングス)、AI(人工知能)、ビッグデータの活用」を技術政策の柱の一つに位置付け、ICTと人の持つ創造性を融合〉。読みながら思わず「何のことやら」、と天を仰ぎたくなった人も少なくないのでないか。この計画の核となるのは、やはり横文字でi―Constructionというそうだ。本紙でも連日のように紙面を飾る言葉だが、何度見ても親しくなった気がしない
 ▼横文字が全て悪いわけではないだろう。ただ国交省も政策を成功させたいならもっと分かりやすく伝える工夫があっていい。映画の原題『ボニー・アンド・クライド』を、『俺たちに明日はない』とするなど数々の名訳を生み出してきた日本ではないか。何にでもかっこを付けて良しとするのはNG(ノーグッド)だ…。

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大岡越前が今いたら

2017年3月15日

 冷静な判断力を持ち人情にも厚い江戸南町奉行大岡越前守忠相の名裁判、いわゆる「大岡裁き」のほとんどは後世の人の創作らしい。「三方一両損」や「実母継母御詮議の事」はご存じの人も多いだろう
 ▼もっとも、卓越した人物だったからこそ功績をたたえる逸話が生まれたわけで、決して凡庸ではなかったようだ。40歳そこそこで8代将軍吉宗に登用されて町奉行となり、19年間も務めたのが何よりの証しである。忠相が普請奉行から昇進し南町奉行に就任したのが1717(享保2)年3月15日(旧暦2月3日)のことだから、きょうでちょうど300年になる
 ▼作り話を抜きにしても、目覚ましい成果を上げた仕事は枚挙にいとまがない。刑罰の適正化は本業だから当然として、江戸を火事から守るため町火消いろは四十七組を組織したり、貧者救済のため小石川養生所を設立したりもした。さらに幕府財政立て直しのため新田開発にも手腕を発揮したというのだからその多彩な能力にはおそれ入るばかり。今の東京都に大岡越前がいれば、20年東京五輪・パラリンピックも豊洲新市場移転も各段にスムーズに進んだかもしれぬ。殊に都議会が百条委員会まで設置して泥沼の様相を呈する豊洲に関しては、どんな「大岡裁き」を下すのか。かなわぬ願いながら大いに興味を引かれる
 ▼将軍吉宗にも直言した大岡越前のことだ。中ぶらりんのまま放置され続ける市場関係者や延期費用を負担する庶民のことを第一に考え、このままでは三方皆損、政争の具にするのはもうやめよ、と意見するのでないか。

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混迷する韓国政治

2017年3月14日

 西暦2世紀のローマを支えた皇帝マルクス・アウレーリウスは、施政に当たり「二つの思念」を大切にしていたそうだ。『自省録』(岩波文庫)にこうある
 ▼一つは「人類の利益のためになせと君が命ずることのみ行うこと」。もう一つは「もし誰か君のそばにいて、君のひとりよがりの考えをただし、これを変えさせようとする人がいたら、考えを変えること」。誤りを認める勇気と柔軟さを持てということだろう。ただしアウレーリウスは、考えを変えるのはそれが正しいか、人々の利益にかなう場合のみとのいさめも忘れなかった。当時も国民のためと装って、実は自分の利益のために近づく者が後を絶たなかったらしい
 ▼さて韓国で4年余り大統領を務めたこのご仁はどうだったのか。収賄容疑で憲法裁判所から罷免を宣告された朴槿恵氏がおととい、大統領府を退去した。真相究明はこれからが本番だが、私益をむさぼっていた人物を友と認め、公私にわたって助言も受けていたからには責任は免れまい。最近の韓国の政治状況は、まさに国を挙げての劇場型政治。朴氏弾劾に続く第2幕は次期大統領選に舞台を移す。有力候補たちは既に活動を始め、国政の立て直しを盛んに主張しているようだ
 ▼中でも最有力は最大野党「共に民主党」の文在寅前代表だそう。ところがこの文氏の基本姿勢は反日、親北朝鮮なんだとか。やれやれ、第3幕が日韓対立激化ならあまり観劇意欲はそそられない。親日路線とまでは言わないが、新大統領には独善を排した「人類の利益のため」の政策を期待したい。

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想像すること

2017年3月11日

 イラン出身で大学教授も務めたアーザル・ナフィーシーの著書『テヘランでロリータを読む』に、こんな一文があるそうだ。「読者よ、どうか私たちの姿を想像していただきたい。そうでなければ、私たちは本当には存在しない」
 ▼暴力的な政治に脅かされながらも希望を求め、見つかれば死罪の西洋文学に親しんだ著者の体験を記したものという。直木賞作家西加奈子の新作「i アイ」(ポプラ社)に教えられた。西さんの作品の主人公は、夫が米国人、妻が日本人の夫婦に養子として育てられたシリア人の女性。愛情深い家庭だったが、その複雑な背景から自分の存在にどうしても自信が持てない。彼女はアーザルさんの著書と出会い、自分が想像することで苦しんでいる誰かの支えになれることを発見するのである
 ▼アーザルさんが伝えたかったのは、まずつらい状況に立たされている人々が現に存在すると知り、その確かな姿を想像してみること。問題に気付かねば苦しむ人々も居て居ないようなものだ。ことしも3・11が巡ってきた。6年目である。どれだけの人が今も、東日本大震災が発生した当時と同じ熱量で被災地の人々のことを想像できているだろうか。正直言って当方は心もとない
 ▼高く頑丈な防潮堤が築かれ、高台移転も進んでいる。交通インフラはほぼ元通りと聞く。ただ生活の再建は難航し、行方不明者の捜索や身元不明遺体の確認も暗礁に乗り上げたままだ。被災地の問題は常に新しい。われわれはもっと想像をたくましくする必要がある。忘れることからは何も生まれない。

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