コラム「透視図」

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外国人観光客

2017年5月16日

 毎週末のジョギングで、札幌市西区にある石屋製菓の「白い恋人パーク」前を通るのだが、いつもそこだけ異国の雰囲気がして面白い
 ▼理由は風景でなく言語。地下鉄宮の沢駅と「パーク」をつなぐ道を、ほとんど中国系の人々であろう外国人観光客が大声で話しながら歩いているのである。思えば道庁赤れんが庁舎や狸小路など市内ではそんな場所が随分と増えた。道内の他の観光地も状況は似たようなものだろう。1年間の道内観光総消費額が1兆4298億円に上ると聞けば、あちこちに小さな異国が現れるのもうなずける。道が先週発表した「第6回北海道観光産業経済効果調査」(2014年10月から1年間)で、そんな結果が出たそうだ
 ▼もっとも、外国人観光客はそのうち3705億円と4分の1程度。ただ04年の第4回調査に外国人観光客はほぼ存在しなかっただけに、この先まだまだ伸びが期待できる大型ルーキーを獲得したようなもの。外国人向けのサービス充実が急務とされるゆえんである。経済波及効果も初めて2兆円を超えたそうだ。同列に比較できるものでないのは分かっているが、トヨタ自動車の17年3月期営業利益が約2兆円。いかに大きな産業なのかが実感できる。訪れる人が本道の魅力を認めてくれた結果だろう
 ▼同じく道がまとめた16年度「観光客動態・満足度調査」で、外国人観光客の目的の上位は自然観賞や温泉・保養だったそう。良いところに目を付けているようだ。いろいろな言語の小さな異国が、これからも道内各地にどんどんできるのを楽しみに待ちたい。

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死亡労災多発

2017年5月13日

 少し前のこと、母子家庭に暮らす女子高生の生活をテレビが伝えているのを見た。番組名は覚えていないのだが彼女には小学生の弟と妹がいて、家計を助けるためアルバイトを2つ掛け持ちしながら弟妹の世話もしているということだった
 ▼母親も生活費を工面するため朝早くに家を出て、夜遅くに帰る働き詰めの毎日らしい。決して楽とはいえない暮らしぶりと彼女のけなげさには、ため息が出た。現代の話である。厚生労働省の「ひとり親家庭等の現状について」(2015年)によると、母子世帯の平均年間就労収入は181万円で一般世帯の4割弱。就業率は高いものの、非正規の仕事が多いため収入は低いそうだ。仕事を掛け持ちしてやっと生活できるわけである。子どもが小さければなおさらだろう
 ▼相対的貧困率は54.6%と、実に半分以上の世帯が貧困という現実。母子世帯になる理由のほとんどは離婚だが、死別も8%程度ある。大黒柱を突然失うことでもたらされるのは悲嘆だけではないのだ。道内で死亡労災が多発している。中でも建設業での発生が目立つ。道労働局の統計では、16年に全産業で77人(前年比21人増)が死亡。このうち建設業が30人(5人増)を占めたという
 ▼新たに母子家庭をつくってしまった例もあったのでないか。悲しみに暮れながら生活の心配も。残された家族には酷な話である。同局は先頃、関係団体と死亡労災撲滅に向けた緊急共同宣言を表明した。来月30日まで集中的に対策を実施するそうだ。無事でいることは家族を守ること。今一度胸に刻みたい。

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1兆円企業

2017年5月12日

 帯広出身の作家池澤夏樹は、ワープロで書いた作品で芥川賞を受けた最初の小説家だったという。エッセー「デジタル化で失ったもの」に記していた
 ▼以来、情報機器を活用してきた氏は同じエッセーで、まずデジタル化の恩恵に触れている。「百科事典で一つの項目を引く手間を思い出してみれば、インターネットに重さがないことの利点がわかる」。本など重い媒体からの解放は相当印象深い出来事だったようだ。実はこのエッセー、2009年に出されたもの。当時でも既に驚くほどの利便性があったが、インターネットの世界が今、さらに進んでいるのはご存じの通り。であれば、当然の結果なのだろう
 ▼インターネットを事業基盤とするソフトバンクグループの17年3月期最終利益が、初めて1兆円を突破したそうだ。10日に連結決算の発表があった。前期比3倍の1兆4263億円というから著しい伸び。株式の売却益もあったが主力の光回線通信事業の好調が、飛躍的な利益の向上に貢献したらしい。最終利益の1兆円超えはトヨタ自動車に次ぐ2社目の快挙。一方、トヨタも同日、決算を発表したもののこちらは円高の影響で5年ぶりの減収減益。明暗を分けた。この3月期は「重さ」がない方の企業に軍配が上がったわけだ
 ▼池澤氏は、デジタル化で「肉体感」が失われたが「文化的な営みの多くは肉体の参与を求めている」と指摘していた。ならば体験を売る自動車は世界でまだまだ求められる製品だろう。「重さ」がある方もぜひ、日本企業の雄として存在感を示し続けてほしいものだ。

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韓国新大統領に文在寅氏

2017年5月11日

 米国のファンタジー作家ル=グウィンの連作長編に『ゲド戦記』(岩波書店)がある。これを下敷きにしたジブリ映画の方をご存じの人もいよう
 ▼第1巻「影との戦い」では主人公の魔法使いゲドが若いころ犯した過ちと、そこから立ち直るための戦いが語られる。ゲドは自分には強大な力があると思い上がり、誤って死の国から世界の秩序を壊す「影」を呼び出してしまうのだ。ゲドにできるのは逃げ回ることだけ。実は「影」とは、自分自身の醜い分身だったのである。逃げるとどんどん大きくなるが、立ち向かって正面から光を当てると力を失う。苦難の末、やっとそのことに気付いたゲドは、「影」をも受け入れて生きることを学んでいく
 ▼きのう、韓国大統領選で文在寅氏が当選したとの報を聞き、この物語を思い出した。というのも反朴槿恵政権、反日、親北朝鮮と、文氏も多くの「影」を引きずって船出するからである。今はそれらを背にしていられるが、これからは対峙(たいじ)せねばならない。韓国政治史上初めて罷免された前大統領の後を受ける革新派の指導者として、期待はいやが上にも高まっている。中でも財閥と政治の癒着解消や既得権益の打破、若者の雇用創出を熱望する国民の姿には、鬼気迫るものがあるらしい
 ▼気になるのはこれらの課題が暗礁に乗り上げたときのことである。自らの失政を反日という「影」に移し変え、さらに事態をあおることで国民の目をそらそうとしてきた大統領を、これまで一体何人見てきたか。文氏にはそんな旧弊をも革新してもらいたい。

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ほどける靴ひも

2017年5月10日

 しっかり結んだはずなのにどうして―。いきなりほどけてしまう靴ひもに、いら立たしい思いをさせられた人は多いに違いない。最近、この靴ひもが急にほどけてしまう謎が解明されたという
 ▼AFPによると突き止めたのは米カリフォルニア大の3人の研究者たち。トレッドミルで繰り返し人を走らせ、超スローモーション映像の分析を続けたそうだ。まあ、原因が分からなくても支障はないが若干の興味は覚える。仕組みはこういうことらしい。足が地面を叩き付ける衝撃と前後に素早く揺らすことで起こる振動、その2つの力が同時に作用して徐々に靴ひもを緩め、ある点を超えると一気にほどけてしまうのだとか。なるほど何にでも理由がある
 ▼民進党の蓮舫代表にも、ぜひ教えてあげたいものだ。おそらく今、党組織が急激にほどけていく理由を探しているだろうから、いくらか参考になるのではないか。気付けば長島昭久氏ら重鎮が去り、党内の不協和音は増大。都議選でも離党ドミノが加速している。おとといの国会で福島伸享議員が安倍首相と森友学園は「ずぶずぶの関係だ」と指摘したときには、品の悪い言葉で中身のない質問をする姿勢が支持率に表れている、と首相に皮肉を言われる始末
 ▼失言連発の大臣らを抱える首相もよく唇が寒くならないものだと感心するが、日本の針路より政権攻撃にしか関心がないかのような近頃の民進党への批判としては一理あろう。先の研究によると絶対にほどけない靴ひもはないそうだ。民進党は一度立ち止まり、走り方、結び方を見直した方がいい。

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