e-特集北海道新幹線

《連載》新幹線時代 開業に沸く金沢(上)随所に〝おもてなしの心〟

2015年9月10日付

 2016年3月に開業する北海道新幹線より1年早く運行が始まった北陸新幹線。年間1800万席を輸送する高速鉄道により、首都・東京と2時間半で結ばれた終着の石川県は、人の流れが大きく変わった。地価の下落に歯止めがかかるなど、その効果は観光だけでなく、まちづくりにも大きな影響を与えている。運行開始から半年近くが経過した8月下旬、高橋はるみ知事をはじめとする道内の視察団に同行した。待望の開業に沸く金沢の様子と官民の取り組みを3回にわたり紹介する。

 石川県の中央に位置する県庁所在地の金沢市は、富山と福井の両県を加えた北陸3県の中心都市。その歴史は、一向宗徒が寺院を建立した15世紀にさかのぼる。

 1583年に前田利家が金沢城へ入城し、城下町・金沢の礎を築いた。前田家が歴代藩主を務めた加賀藩は工芸や芸能の発展に尽力。江戸時代に幕府を除く大名としては最大の102万5000石を誇り、その栄華は「加賀百万石」として知られる。

 第2次世界大戦で空襲を受けなかったことから、歴史的な建造物や街並み、伝統工芸、食文化などが受け継がれ、400年以上経過した現代でも息づいている。

 その金沢市を経由し、東京都と大阪府をつなぐ新幹線の建設が提唱されたのは1965年。長野駅までの部分開業などを経て、構想から半世紀経った15年3月、首都圏と北陸地方を結ぶ北陸新幹線の運行が始まった。東京駅―金沢駅間(約450km)の乗車時間は最速2時間28分。特急などを使った従来に比べて約1時間20分短縮した。

 今回の取材では、停車駅が最も少ない速達タイプの列車「かがやき」に東京駅から乗車して石川県入り。金沢駅に降りると、加賀友禅や輪島塗、九谷焼などきらびやかな伝統工芸品の数々が目に飛び込んできた。待合室の壁面に30品目236点、コンコースの柱には24点が設置されていて、さながら美術館のようだ。

 これらは全て本物。県によると、駅の改装に当たり伝統工芸品の活用を鉄道・運輸機構に提案したが、模造品を製作する予算しか捻出できないとの答えだったため、県が原材料費を全額支出し、人間国宝の作家らに、ほぼボランティアで製作してもらったという。

 県は、新幹線開業に向けて官民連携のアクションプランを08年度に策定。「おもてなし」「食文化」「歴史・景観」の3点にポイントを絞ったPRを展開する内容で、駅舎の装いはその一環。〝石川らしさ〟を表現した。

 駅の東口から外へ出ると、ガラス張りの「もてなしドーム」と、木造の「鼓門」という2つの巨大モニュメントに出迎えられた。

伝統ある街のイメージを発信する鼓門

金沢駅東広場にそびえる鼓門。
金沢を代表するシンボルとなっている

 日本海側気候の金沢市は、湿度が年中高く、雨の日が多い。8月20―21日の取材期間中もあいにくの雨だった。

 3019枚のガラスと6000本のアルミパイプで組み合わせたもてなしドームは、柔らかい自然光を差し込ませて広場に明るい雰囲気を演出するとともに、観光客らが雨や雪にぬれないよう、そっと傘を差し出す金沢人の優しさを表現したという。鼓門は、金沢の伝統芸能である加賀宝生で使用する鼓をモチーフとした高さ約14mの建造物で、伝統ある街のイメージを発信する。

 バスターミナルやタクシープールなども加えた東広場は04年の完成で、市が総工費172億円を投じて7年かけて整備。地下のイベント広場では、地元経済界が2000人の観光客にお茶と和菓子を振る舞う「大茶会」が開業日とその翌日に開かれた。

 鼓門などは金沢を代表するシンボルの一つとして国内外に認知され、11年には米国の旅行雑誌「トラベル・レジャー」により、世界で最も美しい駅14選に国内で唯一選ばれている。

 駅長らの案内を受けた高橋知事は「歴史と文化は逆立ちしてもかなわない」と、本道で金沢駅の取り組みをそのまま採り入れることはできないと指摘。その上で、随所から感じられたおもてなしの心は道新幹線でも重要との認識を示し、食や雄大な自然など本道の特性を生かした、おもてなしの仕方の検討を急ぐとした。

新着ニュース

ニュース一覧へ

入札公告速報

入札公告速報一覧へ

連載・特集記事 ~紙面から~

おとなの養生訓 おとなの養生訓
第118回は柳陰。江戸時代のカクテル です。スッキリと口当たりの良いお酒 は、暑さしのぎにぴったりです。

はばたけわこうど2017 はばたけわこうど2017
2017年春、建設業の世界へと はばたき始めた、新入社員の 声を紹介します。

マイナス金利時代を聞く マイナス金利時代を聞く
マイナス金利政策が道内の企業や建設業に与える影響と、今後の経済動向について聞きました。