e-特集北海道新幹線

《連載》新幹線時代 開業に沸く金沢(中)観光客増で宿泊施設不足

2015年9月11日付

 「駅前を人が歩き、飲食店には行列ができるようになった。金沢の街の風景がだいぶ変わってきた」。高橋はるみ知事と面談した石川県の谷本正憲知事は、北陸新幹線開業後の街の様子をそう表現した。

 開業後初となる春の大型連休。県によると、4月29日―5月6日の観光入り込み客数は、金沢城公園が前年同期の2・5倍となる15万8700人、日本三名園の一つである兼六園が81%増の11万8840人に上った。金沢市内の主要観光地は、かつてないほどの人であふれかえった。

 県は、首都圏からの入り込み客数を2015年度に500万人とする目標を掲げている。これは14年度実績の2・1倍に当たる。谷本知事は「(大型連休中に)ものすごい数の観光客が来た。想定以上だ」と新幹線効果に舌を巻き、出足好調をアピールした。

高橋知事と谷本知事が面談

谷本知事(右)は新幹線効果に舌を巻き、出足好調をアピールした

 宿泊も活況だ。大型連休中の金沢市内での宿泊者数は前年同期比20%増の5万3890人。例年は8月のお盆を過ぎると減少していたが、ことしは落ち込むことなく、勢いが続いている。

 開業に向けて県が学会などMICEの誘致を強化した影響もあり、「週末は予約でいっぱい。平日も埋まっている日が多い」(市内のビジネスホテル)という状況。お土産や飲食店の売り上げも伸びている。

 新幹線の恩恵を受けているのは金沢市だけではない。大型連休中の主要温泉地宿泊者数を見ると、山代温泉など加賀地域が15.8%、和倉温泉に代表される能登地域が12.4%それぞれ増えた。「11月ごろまで週末の予約が取りにくくなっている」(加賀地域の温泉旅館)。

 県は12年度から、金沢市と能登地域を結ぶ約90kmの県営有料道路を無料化。観光客がレンタカーなどで移動しやすくなったことも後押しとなり、新幹線効果は県内全域に波及している。

 県は一過性に終わらせず、何度も訪れてもらえるリピーターの獲得を目指し、新幹線開業PR戦略実行プランを12年度に策定。これを効果的に推進するためには、複数年度にわたる財政的な担保が欠かせないとして、市町や県民を巻き込んだユニークな取り組みを展開した。

 開業PRの推進に特化した120億円規模のファンドを県観光連盟に創設。ファンドの運用益6億円と、県の一般会計から支出した4億円を合わせた10億円を開業PRの財源として確保した。

 資金は、県が60億円、県内19市町が20億円を同連盟に無利子で貸し付けて調達。残る40億円は、住民参加型市場公募債を発行し、県民や企業向けに販売したところ、わずか2日で完売。県債の購入を通じ、県民自らが開業PRに参加するという意識の高まりにつながったという。

 これにより、単年度予算主義の弊害を排し、債務負担行為のように翌年度以降の開業PR予算を担保した。新幹線開業対策としては全国初の取り組みだ。使途は情報発信が4億円、県内の魅力づくりが2億円。開業前後の3年間に集中して取り組んでいる。

 谷本知事は開業対策全体を見渡して「これまでのところは順調」と強調した一方で、課題に宿泊施設の整備を挙げた。予想以上の観光客に受け入れ能力の不足が顕在化。需要の高まりから宿泊料はじりじりと上がり、地元の常連客からは「宿が取れない」とのクレームが寄せられているという。

 道は、道南を訪れた観光客を道内各地に誘導し、開業効果を全道に広げようと、バスやタクシーの商品開発など新函館北斗駅からの2次交通網整備を急ぐ。だが、北海道ブランドや円安傾向などを背景とした外国人観光客の増加により、道内では既に道央圏を中心に宿泊施設の需給がひっ迫状態にある。

 谷本知事は「道南だけでは観光客を受けきれなくなるはず」と指摘した。道は石川県の教訓を生かし、2次交通と併せて宿泊施設の整備も急ぐ必要がある。

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