e-特集北海道新幹線

《連載》新幹線時代 開業に沸く金沢(下)駅周辺で旺盛な民間投資

2015年9月12日付

 国土交通省が3月に発表した2015年1月1日時点の公示地価は、石川県内に衝撃をもたらした。金沢市内の平均変動率は、商業地が前年比1.3%の上昇で7年ぶりにプラスへ転換。住宅地は20年ぶりの横ばいとなり、地価が下げ止まった。

 さらに金沢駅西口付近の標準地は17.1%伸び、商業地で全国一の上昇率を記録した。市によると、駅西口付近で4月までに近年マンションとオフィスビルがそれぞれ2棟完成し、マンション1棟が施工中。開業を見据えた不動産需要の高まりが地価を押し上げた。

 市は、金沢城公園や兼六園がある駅南東部の旧市街地を保存優先エリアに定め、駅を斜めに貫くよう設定した都心軸沿いと土地区画整理事業で造成した駅北西部に開発を誘導するなど、「保存と開発の調和」をまちづくりの基本方針に掲げる。

 NHK金沢放送局が旧市街地から駅西口付近へ17年度に移転する予定のほか、都心軸沿いでは宿泊施設の不足を背景としたホテル2棟の建設計画などがある。不動産需要は堅調で、旺盛な民間投資は今後も続く見通しだ。

 旧市街地でも異変があった。駅から約2km離れた所にある北陸最大の繁華街・片町地区。ここでは、北陸初出店となるファストファッションの「H&M」を中核テナントに据えた複合商業施設の再開発が進む。

再開発が進む金沢市片町地区

新たな再開発支援策が始まった北陸地方最大の繁華街・片町地区

 同地区はバブル期に500万円を超え、長年にわたり北陸での最高値を付けていたが、景気低迷に伴い下落。08年には、整備が完了した駅東広場前に〝一等地〟の座を奪われ、地価は10分の1以下に落ち込んだ。

 歩行者数も減少傾向でにぎわいが失われつつあったが、9月18日に商業フロアが先行開業する再開発ビルへの期待感などから23年ぶりに上昇。地盤沈下に歯止めがかかった。関係者は、近接する金沢城公園など新幹線効果で人が増えた観光地からの回遊性を高める方策に知恵を絞る。

 だが、日本で最初に商店街組合が組織された片町地区のまちづくりには、大きな問題が横たわる。市の調査によると、同地区にある建物191棟の72.8%が旧耐震基準での建設。地震で多くのビルが倒壊する恐れがあり、それが第1次緊急避難道路に指定されている国道をふさぎ、緊急車両などを通れなくする可能性が指摘されている。建物の老朽化も進み、更新が急務となっている。

 そこで市は15年度に新たな取り組みを始めた。まず、ビルオーナーで構成する有志のグループと意見を交わし、再開発のニーズを把握。その後、市の委託を受けた全国市街地再開発協会が、ニーズに最も適した再開発プランナーや都市計画コンサルタントなどを紹介し、整備手法や事業化を検討。事業協力者の参入は16年度以降となる。

 全国の再開発事情を把握している同協会が調整役になることで、都市計画コンサルタントなどとつながる特定のゼネコンの関わりを排除。公益の立場から助言し、ニーズに最も合った再開発計画の策定を目指す取り組みで、全国でも珍しいという。

 市の磯部康司都市整備局担当部長は「民間が主体の再開発に、行政が関われることは限られている。身の丈に合った再開発を目指し、資産運用の観点から片町地区にふさわしいものは何かを話し合う民間の初動期活動を支援したい」と話す。

 8月末に有志グループとの勉強会を立ち上げた。取り組みがうまく進めば、他のビルでもこの手法を活用して片町地区の更新を促したい考えで、道内でも参考になりそうだ。

 本道に目を移すと、北海道新幹線の開業が半年後に迫っているが、新函館北斗駅前は紆余(うよ)曲折を経てホテルの建設がようやく決まった状態で、買い手未定の土地が多く残り、更地が広がっている。函館駅前の再開発ビルも工期が延長されるなど、玄関口の道南で駅周辺開発の遅れが目立つ。

 東北や首都圏などからの誘客を見込める道新幹線の開業は、経済波及効果が大きい観光産業を成長させ、本道経済を上向かせる千載一遇のチャンスだ。スタートにつまづくことがあってはならない。

 2次交通網の整備とともに豊かな食や雄大な自然、アイヌ文化といった特性を生かし、本道でしか体験できない観光メニューの開発を急ぐなど、ソフトでハードの遅れを補う必要がある。

 こうした地域の魅力を磨き上げる取り組みは、移住・定住や企業誘致の促進などにも生かされ、地方創生に結び付くはずだ。

(おわり)

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