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おとなの養生訓 當瀬規嗣/第283回 「お酒とおしっこ」晩酌で通常一日の2倍量

お酒を飲むと、おしっこの量が増えます。これはお酒という水分が多いものを飲んだためと思われがちですが、そうではありません。アルコール自体が、おしっこの量を増やす作用を持っているからなのです。アルコールにはバゾプレッシンというホルモンの分泌を止めてしまう作用があるのです。

バゾプレッシンは脳の中にある視床下部という場所で作られます。そして、体の水分が不足気味になると、下垂体を経て分泌され、腎臓でおしっこから水分を回収して体に戻し、水分不足を解消するように働きます。

視床下部にある神経細胞で作られるのですが、アルコールには脳全体の神経細胞の働きを抑制する麻酔作用があります。これにより、バゾプレッシンを作る細胞も働きを止めてしまいます。こうしてバゾプレッシンが出なくなると、おしっこから回収するはずの水分がおしっこにとどまるので、おしっこの量が増えることになります。

実際、どのくらいのおしっこが出るのか、試算してみました。もし、アルコールが飲み始めから8時間ぐらい体にとどまると考えると、3ないし5㍑のおしっこが余計に出ることになります。

2時間ぐらいの飲酒でも、アルコールがすぐに抜けるわけではありませんから、1.5から2.5リットルのおしっこになります。正常のおしっこの1日量が約1.5リットルといわれているので、相当な量であるといえるでしょう。つまり、一晩の晩酌で、通常の2倍のおしっこが出てしまうのです。

というわけで、アルコールが多く含まれているウイスキーや焼酎は、お酒自体の量が少なくても、おしっこが増えます。日本酒もしかりです。そこで、これらのお酒を飲むときは、別に用意した水を同時に飲むことが推奨されます。

ビールはアルコールが少なく、量も多くなるので、水分不足になりにくいと思われていますが、ビールぐらいの薄いアルコールでもバゾプレッシンは分泌しなくなるので、やはり相当な水分が体から失われ、おしっこの量は増えます。飲み終わった後の給水をお忘れなく。

猛暑が続きます。ただでさえ水分を失って脱水になりやすい状況です。飲酒の際は、簡単に水分不足になり、脱水症から熱中症へ進展するリスクが高まります。くれぐれもお気を付けください。

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當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ)
札幌医大名誉教授、北海道文教大人間科学部健康栄養学科教授。生理学を研究する傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも出演している。北海道建設新聞掲載のコラム「おとなの養生訓」では、現代のビジネスマンに欠かせない「健康」に関する情報をわかりやすく解説している。


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