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【透視図】裁判官がインサイダー取引で三角術

まともな神経など捨ててしまわなければ大金は手にできない。程度の差はあれど、昔から一定の支持を得ている考え方だろう。どうやら夏目漱石も同じ思いだったらしい。『吾輩は猫である』の中で、主人を訪ねてきた客にこんなことを言わせていた▼「実業家の所へ行って聞いてきたんだが、金を作るにも三角術を使わなくちゃいけないと云うのさ―義理をかく、人情をかく、恥をかく、これで三角になるそうだ」。

まちづくりやものづくりに必要な測量や設計の数学的基礎となる「三角術」を、「三欠く術」と言い換えて金作りに応用した冗談である。金をもうけるには人の道を外れるくらいの覚悟がいるというわけだ▼こちらの人も、そんな実業家流の三角術を使いたい誘惑に駆られたのかもしれない。金融庁に出向中の30代の男性裁判官が、職務を通じて入手した公開前の株式公開買い付け情報をもとにインサイダー取引をした疑いがあるという。関係先に証券取引等監視委員会の強制調査が入ったそうだ。

この男性裁判官が、身を置く裁判所に、法の番人たろうとした自らの志に、そして世間に、義理を欠き、人情を欠き、恥をかいたのはいうまでもない。しかも現役裁判官による違法取引である。四角四面の法曹界から来たからでもなかろうが、件の実業家も勧めなかった「法を欠く」まで加え、四角術にしてしまった▼これでは順当に金が作れないのも当たり前。「三角(三欠く)」までなら下品で済むが、「四角(四欠く)」となると罪人である。裁判官がそれを知らなかったわけもあるまいに。


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