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【おとなの養生訓 當瀬規嗣】第285回 「血糖値スパイク」食後の眠気は糖尿病予備群!?

血液中の糖分の濃度を示す血糖値は、とても重要な検査値です。特に血糖値が正常の範囲を超えて高くなると、糖尿病と診断されます。血糖値が正常だといっても、一定の値を示すものではなく、食事をすると、食べ物に含まれている糖分の吸収により上がってきます。その後、インスリンの作用により糖分が筋肉や脂肪組織に取り込まれ、徐々に下がり、完全に空腹の状態になると、低い値を示します。つまり、一日三食取るとすると、3回の血糖値の増減があるということです。

この血糖値の増減の様子を観察することは、糖尿病の診断の上で非常に重要と考えられていましたが、頻回に採血をする必要があり、病院の中でしかできませんでした。

しかし、最近、皮膚の上に特殊なパッチを張り付けることで、血糖値を連続的に測定し、それをスマホやパソコンに取り込んで、精密な分析をすることが可能になりました。血糖値の経時的測定は、各診療機関で広く使用されるようになりました。

それによって、食後に血糖値が異常な高値まで急速に上昇し、その後急速に下がるという反応を示す人がたくさんいることが分かりました。この急激な変化を血糖値スパイクと呼びます。

血糖値スパイクを示す人は、その後糖尿病に進展してしまう危険性が高いと考えられ、いわゆる糖尿病予備群と呼ばれるグループに属することが分かりました。

血糖値スパイクは、これまでの空腹時血糖の測定では見つけることはできません。経時的測定が手軽にできるようになって、初めて認識されるようになりました。

たくさんの糖分を食事で一気に取ることにより、血糖が急速に上昇することで、血糖値スパイクが始まります。この急激な血糖の上昇は、インスリンの分泌を促すので、インスリンが大量に分泌され、血糖値を一気に引き下げることになります。

この糖分過剰摂取とインスリンの過剰分泌が繰り返されると、インスリンの効きが悪くなる現象、すなわちインスリン抵抗性を示すようになり、最終的には糖尿病に進展します。

血糖値スパイクが起こっているときには、頭痛や強い眠気が出ることが分かっています。食後の眠気や頭痛が起こる人は、健康診断で異常なしとされていても、一度、専門医に相談してみるのがいいでしょう。

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當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ)
札幌医大名誉教授、北海道文教大人間科学部健康栄養学科教授。生理学を研究する傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも出演している。北海道建設新聞掲載のコラム「おとなの養生訓」では、現代のビジネスマンに欠かせない「健康」に関する情報をわかりやすく解説している。


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