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【透視図】検察は「危険」の意味を知っているか

最近は横着をしてネット検索で済ませることも多いが、言葉の意味を正確に知りたいとき最後に頼るのは今も分厚い『広辞苑』(岩波書店)である▼先日、ふと気になって「危険」の語を調べてみた。「危ないこと。危害または損失の生ずるおそれがあること」とある。簡潔にして明快。関連の語として「危険思想」が併記され、「国家社会の存立・発達に危険な影響を及ぼすものとみなされる思想」と書いてあった。

当方がそれまでぼんやりと考えていた―命に関わるくらい重大な状況―との認識は間違っていなかったようだ。ところが検察にはまた違った解釈があるらしい。自らの意思で酒を飲み運転し、幼い子どもを含む3人を殺しても、「危険運転致死傷罪」ではなく「過失運転致死傷罪」だというのである▼ことし5月、群馬県伊勢崎市でトラック運転手の男が対向車線に飛び出し、乗用車に衝突して2歳の男児とその父、祖父が死亡した交通事故。前橋地検は10日、これを過失運転として起訴したのだ。

ニュースで男児の母親ら遺族が、到底納得できない旨の心情を吐露しているのを見た。酒を飲んで運転していた事実を重く見て、警察が危険運転で逮捕した事故だったのだから当然だろう▼飲酒で重大な事故を起こした運転手が「過失」にしか問われない非常識を正すため、重い罪を科す「危険」の法整備をしたのが元々である。なのに立証が難しいからと「危険」を回避する事案が後を絶たない。検察は『広辞苑』をもう一度読んだ方がいい。法律の軽視は国家社会の存立に危険な影響を及ぼす。


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透視図

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