見出し画像

【おとなの養生訓 當瀬規嗣】第286回 「猛暑の秋」気付かぬ「暑さ疲れ」対策を

9月に入りました。今までなら、夏から秋へ急速に変化する時期なのですが、今年は例年通りにはなりそうもありません。今年の夏は、猛暑といわれた昨年と同様に、厳しい暑さに見舞われました。札幌でも一日の最高気温が30度を超えることがあまり珍しくならなくなり、蒸し暑く寝苦しい夜が続きました。熱中症になってしまう人が続出するのではないかと、警戒をしておりました。

ところが、9月9日の救急の日に発表された札幌の救急搬送の今年9月までの累計数が、昨年に比べて2000件以上も減少したというのです。その理由は、夏の暑さで体調を崩す人の数が減少したためということです。暑さに慣れていないはずの北海道の人も、暑さ対策を意識するようになり、冷房や換気、給水、遮光などの対策が広く行われたためと考えられます。

しかし、どんなに暑さ対策を施しても、暑さを感じないことはあり得ません。暑さに長くさらされると、人は体力を消耗して疲労してしまうことが分かっています。暑さに対抗して体の真ん中の深部体温を一定に維持するためには、血流調節や発汗などを盛んにする必要があり、これは思った以上にエネルギーを消費するからです。

冷房機を使うのには相当の電力が必要であることに例えることができるでしょう。したがって、猛暑が長く続くことは、熱中症にならなくても、それなりの体力消耗につながると考えられるのです。

実は、暑さによる疲労の蓄積によって起こる「夏バテ」は、暑さの峠を越えた8月末に多いのです。したがって、まだまだ暑い今年の9月は要注意です。8月は乗り切ったとしても、たまった疲れが9月にどっと出る人が多くなると心配しています。

対策は、疲労を取ることです。まず、十分な睡眠です。やはり、夜更かしは禁物ですね。しかし暑さがまだ続くとしたら、寝苦しい夜がくる危険性もあります。夜間の冷房はまだ必要かもしれません。

もう一つは栄養バランスのいい食事を取ることです。特に朝食は十分に取ることが大事です。そしてぬるめのお風呂にゆっくり漬かって、体をリラックスさせることが効果的です。疲れを感じていなくても、暑さ疲れが残っているとお考えください。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ)
札幌医大名誉教授、北海道文教大人間科学部健康栄養学科教授。生理学を研究する傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも出演している。北海道建設新聞掲載のコラム「おとなの養生訓」では、現代のビジネスマンに欠かせない「健康」に関する情報をわかりやすく解説している。


©2024 The Hokkaido Construction News Co.,Ltd.


「e-kensinプラス」に、新聞紙面をPDFで見られる紙面ビューアを追加しました!機能追加に併せ、お得な入会キャンペーンや無料体験を実施中です!