小矢部紀行





 北海道は開拓期に北陸から多くの移民を受け入れたが、そこに建設業者の群像を見つけることができる。旭川の荒井建設はことし創業120年を迎えた。道内最大手の岩田地崎建設は、前身の岩田組の創業が1922(大正11)年で8年後に100周年を迎えるが、2007(平成19)年に吸収した地崎工業は、前身の地崎組が1891(明治24)年の創業だ。岩田創業の翌年、1923(大正12)年には滝川で中山組が創業している。ことし9月30日に自己破産を申請した函館の加藤組土建は1913(大正2)年に黒松内で誕生し、昨年創業100年を迎えていた。いずれも開拓に深く関わって有力建設業者に成長した。岩田家を除く4家は富山県小矢部市の出身で、創業者たちは地崎組の初代地崎宇三郎と同郷の絆を持ち活躍した。岩田家も小矢部の隣、南砺市岩木の出身で西砺波郡というくくりでは同郷だ。群像のルーツを追って6月、小矢部市を訪ねた。

(文中敬称略)

(この記事は2014年11月27日から12月16日まで北海道建設新聞に掲載されたものです)








第1回 同郷の創業者一族が誕生 2014年11月27日掲載
第2回 「拓地植民」で北海道開拓 2014年11月28日掲載
第3回 初代地崎宇三郎の生誕地 2014年11月29日掲載
第4回 初代は鎮守に土地など寄進 2014年12月2日掲載
第5回 初代宇三郎の生家、今も 2014年12月3日掲載
第6回 中山佐一郎一家が渡道 2014年12月4日掲載
第7回 滝川に金刀比羅神社建立 2014年12月5日掲載
第8回 荒井初一は小矢部市島で 2014年12月6日掲載
第9回 十勝線請け負い本道進出 2014年12月9日掲載
第10回 初一が層雲峡温泉を開発 2014年12月10日掲載
第11回 加藤岩吉、地崎の森を管理 2014年12月11日掲載
第12回 小矢部市杉谷内に加藤家 2014年12月12日掲載
第13回 南砺市が岩田家のルーツ 2014年12月13日掲載
第14回 沼田に伝わるあんどん祭り 2014年12月16日掲載

 連載に当たって

 私は2014年3月に北海道地域文化学会において「北海道移住者とその末裔 3代にわたる実業と文化の軌跡」を発表して、それを基に北海道地域文化研究第6号に「地崎3代と定山渓-温泉開発・岩戸観音建立を事例として-」を書かせていただきました。この「地崎」研究のきっかけとなったのは、1997年11月に起きた北海道拓殖銀行の経営破綻と、それを起因にした地崎工業の経営不振でした。拓銀をメーンバンクにした地崎工業は北海道で唯一、全国、海外にまで拠点を持ち、売上高も1500億円を超えていた札幌の建設会社です。バブル経済崩壊の象徴とされた金融機関とゼネコンの淘汰現象の一つとして、北海道経済への打撃を懸念して、道内経済界はもとより全国的にも注目され、私も北海道建設新聞社の記者として取材を担うことになったのです。

 巨額の負債を背負いながらもメーンバンクを失った地崎工業は、2004年8月の岩田建設との経営統合発表まで迷走を続けました。その間、中央の政財界人までもが地崎救済に奔走する姿を目のあたりにした私の取材は、次第になぜそこまでして一企業を助けようとするのか、というテーマを持つようになりました。

 そして、初代地崎宇三郎が1891(明治24)年に富山から北海道に渡って地崎組を興してから1世紀、その子と孫が宇三郎を襲名しながら3代にわって北海道の政治、経済、文化といった多方面で大きな影響を与え、それらを源にした人脈が有形無形に支援する動きとなっていることを感じたのです。

 救済パワーの源泉は、3人の宇三郎が積み重ねてきた功績と系譜にこそあると考えるに至ったのです。それを理解するには3人の足跡を追う以外にないと、100年を超える歴史の追跡に着手しました。しかしそこに張り巡らされた様々な脈は想像以上に深く、広大なものでした。ここ数年は道内外のゆかりの地を訪ねて歩いていますが、どうしても行かなければならないと考えていたのが、初代宇三郎の生誕地、富山県小矢部市でした。

 初代宇三郎がなぜ北海道に来たのか諸説がありますが、私は当時の北海道への移民政策がその鍵だろうと考えました。文献を調べていくと、富山から移民の多さと道内に築かれた同郷のネットワーク、そこから大勢の建設業者が輩出されていることがわかってきました。「地崎」を追う私にとって特に惹かれたのが今回の連載で取り上げた中山組、荒井建設、加藤組土建の創業者でした。いずれも小矢部市域の数キロ圏内で生まれ、同郷の初代宇三郎と北海道で絆を持っていたのです。岩田建設を興した岩田家も隣の南砺市の出です。

 これはもう一刻も早く、発祥の地を自分で確かめてくるしかない。浅学を埋めるためには、自分の目と手、足、体全身で創業者たちの本性を感じ取ってくる必要があると考えました。その記録の一端がこの連載です。

(小泉昌弘)

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