おとなの養生訓

第93回
「就眠儀式」 酒、寝付けるが眠り浅く

張などの旅先で、疲れているはずなのに、なかなか寝付けないという体験をお持ちの方がおられると思います。「枕が変わると眠れない」という言い方もされます。旅先はどうしても緊張するものだから、その緊張で眠れないという考えもあります。

 そこで、緊張をほぐすつもりで、お酒を飲んでから眠りにつく人もいます。でも、お酒は意外と効果がなく、首尾よく眠りについても、1―2時間も眠ると目が覚めてしまい、そのあとはむしろ目がさえてしまい、朝までまんじりともせずに過ごすなんてことも、実はあるのです。

 私の業界では、やたら出張が多いのに、旅先で寝付けないことに悩んで、睡眠導入剤を使っている医者もいます。結構、みんな苦労しているようです。

 旅先で寝付けない理由の一つとして、「就眠儀式」ができないためだという考えがあります。人にはそれぞれ寝付くまでに、決まった行動があり、そのリズムの中で脳が眠りに入っていくということで、就眠儀式と呼ばれるのです。

 たとえば、明かりをつけていないと眠れない、本を読まないと寝付けない、テレビを見ながらでないと眠れない、などというのは立派な就眠儀式なのです。私の知り合いに、目がさえるはずのコーヒーを一杯飲まないと寝付けないという人がいました。本当に、習慣というのは不思議なものです。

 そこで、旅先で寝付けないことを防ぐ対策として、自分の就眠儀式を確認しておくことはいかがでしょうか。本、テレビ、明るさ、いろいろ思い当たることがあるはずです。旅先で、それを試すのです。旅先で眠れないからといって、普段は明るい部屋で眠っているのに、ことさらに部屋を暗くして寝ようとしないことです。

だ、就眠儀式がお酒である人は、今後の継続はお勧めしません。先に述べたように、お酒は寝付きをよくしますが、すぐに眠りが浅くなる効果があり、夜中に目が覚めることが多いからです。これでは、旅先の疲れは取れなくなってしまいます。

 出張先で夜に一杯やるのは楽しみでもあるわけですが、眠りにつく1―2時間前までに切り上げて、ゆったり眠りにつく方が効果的だと思われます。飲みすぎて記憶が定かでないような眠り方は、脳に悪影響があるので、呉々も避けるようにお願いします。

(札医大医学部教授)

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