おとなの養生訓

第7回
「早食い」 肥満招く原因の一つ

しいビジネスマンは食事に時間をかけられない様で、お昼の食堂ではあっという間に食事を平らげる人をよく見かけます。そういう人に限ってお腹のあたりが…。結論から言いますと、早食いは肥満の原因の一つなのです。

 人は食事をして満腹感・満足感が得られると食べ終わります。この満腹感は、決して胃が食べ物で一杯になった感覚ではなく、実は、脳で感じるものなのです。脳の奥深くにある視床下部には血液中の糖分の量、つまり血糖を常に監視するしくみが存在しています。

 もし血糖が増えて、ある程度のレベルに達すると、このしくみがはたらいて、「満腹感」を脳全体に伝えることになっているのです。もう十分なエネルギーを手に入れたから、食べるのをやめようという合図です。

 血糖が増えるのは食事をして、食べ物に含まれている糖分が腸で吸収されて血液中に入るからです。例えば、全く糖分のないお水をお腹いっぱい飲んでも、お腹が張るだけで、満腹感は得られません。逆に、お腹がすいたときにジュースやチョコレートなど食べると、さほどの量を食べなくても、空腹感が癒やされます。つまり糖分が吸収されたかどうかが、満腹感を決めているのです。

ころで、食事を始めてから糖分が吸収されて血糖が増えるのには、少なくとも30分ぐらいの時間が必要です。ここで、早食いの問題点が浮上します。もし同じ量の食事をしたとして、30分程度の時間をかけて食事をすると、食事が終わった頃に血糖が増えて満腹感が得られます。

 でも、10分ぐらいであっという間に平らげてしまうと、食事が終わった時にはまだ血糖が増えていないので、満腹感がなく、物足りなさを感じてしまうのです。そこで、もう一杯おかわり!なんてことになりがちです。

 そういう訳で、早食いの人は、早く満腹感を得たいがために、急速に血糖を増やす行動に、知らず知らずに出てしまいます。つまり、大量の食事を一気に平らげようとするのです。また満足が得られることを経験的に知っているので、糖分の多い食べ物をたくさん食べようとするのです。

 これでは結果は明白。あっという間に太ってしまいます。つまり早食いの習慣は、大食いにつながり、肥満への一本道です。食事はゆっくり味わいながら楽しむのが「おとな」です。

(札医大医学部教授)

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