おとなの養生訓

第30回
「辛口とアルコール」 濃度で決まらぬ酒の味

近は、居酒屋や和食処でメニューを見ると、たくさんの種類の地酒がずらりと並んでいます。20年ぐらい前なら「お酒」とか「燗酒、冷や酒」と書いてあるのが関の山でした。本当に日本酒のバラエティを楽しめる良い時代になったものです。

 そんな世の中ですので、日本酒に相当なこだわりや蘊蓄をお持ちの方がたくさんおられます。と言うわけでお客様の要求に応えるべく、メニューにはそれぞれの銘柄についての解説がついています。そして辛口とか甘口とか口当たりの説明。プラス6・0からマイナス6・0の表示までついていて、通の心をくすぐります。

 辛口とはアルコール濃度の高いお酒のことと、一般に理解されています。プラス6・0からマイナス6・0というのはそのアルコール濃度の指標です。ところが、数字が高いほど「辛い」のかというと、そうでもありません。「辛口」のフルーティなお酒は、舌にピリピリこなくて、むしろすっきり甘い。日本酒の本当のうまさはこれなんじゃないか!と思ったりします。

 逆に数字がマイナスのお酒で、アルコールを強く感じて辛いお酒もあります。辛口かどうかは、単純にアルコール濃度だけで決まるものではないようなのです。

ういえば、30年や35年のビンテージ物のシングルモルトでも、50度近いアルコールなのにとろりと甘いものに出会ったりします。このあたりが、お酒の深いところで、面白みでもあります。でも、メニューでいう辛口はアルコール濃度だけで一方的に決められているのが現状のようです。

 それにしても、口当たりの良い辛口のお酒は、とても危険ですね。本来、ちびりちびりとやるべきである日本酒なのに、ぐいぐいと飲めてしまう。肴の味も引き立てるから、箸も進み、それにつれて杯も重ねてしまう。

 気がついたら、とっくに定量オーバー!一次会であえなく撃沈。私も何回となく、そんな経験をしました。どんなに口当たりが良くても、結局、アルコール度数が酔いの深さを決めるのですから、辛口が酔いやすいことだけは、間違いがありません。

 今は、辛口のお酒は始めの2杯までにしています。どうせ、それ以後は酔ってくるので、繊細な日本酒はもったいない。焼酎かガツンとウイスキーに走っています。あれれ、冷静に考えると、もっと酔いが強くなりそうですね。反省…。

(札医大医学部教授)

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