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重大ニュース2024④北海道新幹線、30年度末の札幌開業を延期/先行き見えず 

5月、北海道内の自治体、経済界に衝撃を与える大きな判断が下された。北海道新幹線新函館北斗―札幌間の2030年度末開業延期だ。工期短縮に努めてきたが有効な手立ては見つからず、冬季五輪札幌大会の誘致断念で、30年度末に間に合わせる意義が失われたことも影響した。沿線からは「早期に新たな開業時期の提示を」と望む声が相次ぐ。国の有識者会議で工期再設定の検討が進むが、先行きは不透明だ。(画像は開業延期を説明する藤田鉄道・運輸機構理事長)

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北海道の経済に影響を及ぼす、さまざまな出来事が起きた2024年をニュースで振り返る。


岩塊に阻まれトンネル工事難航

鉄道・運輸機構の藤田耕三理事長は5月8日、「2030年度末開業は極めて困難」との見解を斉藤鉄夫国土交通相(当時)に報告。羊蹄トンネルで見つかった岩塊の撤去に加え、渡島トンネルが地質不良により対策が必要になるなど予定通りに工事が進まない状況が続き、計画通りの開業が危ぶまれる中での出来事だった。

小樽や八雲、倶知安などの沿線市2030年度末というゴールを見据えて新駅舎を中心とした駅前整備などを進めていただけに落胆は大きかった。関連工事を遅らせる必要があり、開業効果も先送りになるなどまちづくりに与える影響は計り知れない。すぐさま国交省、鉄道・運輸機構へ詳細な説明と新たな開業時期の提示を求めた。

これを受け、国の有識者会議で工期短縮策や全体工程の見直しなどの協議を開始。しかし、課題整理や地質不良の状況など現状把握や検討材料をそろえる作業に時間を費やすこととなる。

開業はいつに?早期提示望む声

「いつ開業するのか具体的な数字を出してもらわないことには事業着手が難しい」「難しい工事であると理解しているものの、見通しが立っていないことに困惑している」「企業誘致について危惧する事項が出てくる」―。沿線市町の首長から上がった悲痛な声だ。

渡島トンネル南鶉工区、調査ボーリングすら難しい地質(鉄道運輸機構提供)

工期短縮に努め、早期開業を目指すのはもちろんだが、関係者の一番の望みは“開業時期の早期提示”。トンネル工事は不確定要素が多く、有識者会議では委員からある程度幅を持たせた工期が提案されるなど明確な開業時期設定に慎重な姿勢も見られるが、いつまでも先延ばしにできる問題ではない。

羊蹄トンネル有島工区で掘削を再開してすぐに新たな岩塊が見つかり、再び掘削を停止するなど依然として厳しい状況は続いている。ただ、次回の有識者会議で新たな開業時期が決定する可能性が見えてくるなど、着実に前進はしている。

工事の前途には不安がつきまとうが、新幹線整備、開業効果の発現には地元の協力、理解が欠かせない。鉄道・運輸機構などには不安を解消する丁寧な説明と、工期短縮に向けた不断の努力が求められている。


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