真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第1回 株式会社レブニーズ 代表取締役 鹿内 茂光さん

2009年10月16日 17時04分

 スコトン岬は、日本最北の離島である礼文島の北端に位置します。稚内空港からフェリーとバスを乗り継いで移動するだけでも、3時間以上を要するにもかかわらず、トレッキングファンを中心に、口コミで全国から観光客が訪れている、知る人ぞ知る場所です。レブニーズは、この岬の観光客向け物販店舗と民宿の経営や、島の海産物等をネット販売するECサイト「島の人」の運営を中心に、年商約6億円(2009年度)を売り上げる注目企業です。「礼文島は辺ぴだからこそ、輝いていた」と創業を振り返る鹿内茂光さんにお話を伺いました。

鹿内さんが感じた礼文島の輝きとは。

鹿内 茂光さん

鹿内 礼文島で食べるウニがおいしかった。光っていました。私は道産子(札幌市出身)ですが、こんなにおいしいウニをその時まで食べた経験がなかったんです。輸送に時間もコストもかかるために、新鮮な島の海産物を島外に送ることができない事情を知り、何とかして、このおいしさを多くの人に届けたいと。流通困難な地理的条件があるからこそ、礼文島の海産物は貴重なもの。これは、優位だと思いました。それに礼文島は、父方の祖母がスコトン岬で土産物屋を営む縁の深い土地。大手コンビニエンスストアのスーパーバイザーとして道内各地の店舗経営の改善指導に携わり3年がたち、そろそろ、もっとダイレクトに、顧客の満足を追求したいと考えているころでした。

ネット販売3億円以上の売り上げは、「楽天市場」の食品部門で全国トップクラスだそうですね。商品が支持される理由は何だと思いますか。

鹿内 北海道産だけでは弱いので、「北海道産プラス島産」を強調した品ぞろえで、価値をさらにコアにしていること。その価値を正しくユーザーに伝えていること。その中でお客さん、生産者、レブニーズの3者が「WIN」になるように努力しているからだと思います。

正しく伝えるとは。

鹿内 私は、北海道産がすべて良質ではないと思っています。例えば、創業前から、礼文島のウニのおいしさは全国的に有名でしたが、「最高のウニを捕る」という気概の漁師もいれば、「とりあえず捕ってくればいい」という漁師もいます。こうしたものが、これまでは一緒くたになっていました。本当においしい産品は、実直に真っ正直にものづくりをしている人たちによるもの。私たちは、そのような価値のあるものであれば相場より高い値段で買い、生産者の思いや信念、考え方と共にお客さまに販売しています。

その価値をいかに損なわずに消費者に届けるかも、重要ですね。

鹿内 茂光さん

鹿内 離島だから輸送に時間もコストもかかる、というのは売り手の論理。ユーザーは、おいしくて新鮮なものを安く食べたいのですから。しかしフェリーを使用する礼文島の物流には、商品価格の半分くらいの運賃が掛かる。それにどんなに新鮮なものでも顧客に届くまで4日前後もかかり、味が落ちることを承知で薬品による消費期限の延長をせざるを得なかった。

 そこで、私たちは運送会社と協力して、空港の出発便と集荷時間を調整し、全国に翌日配送できるシステムを構築しました。これまでの常識を覆すわけですからあつれきもありましたが、「地元のおいしさを、一緒に全国に届けませんか」と熱心に伝えました。最終的には、運送会社も採算よりその思いに応えてくれました。

プロモート下手といわれる北海道ですが、鹿内さんのご経験から考えるプロモートの強化とは。

鹿内 プロモートは、ものづくりと一緒だと思うんです。おいしい野菜を栽培するために水やりや肥料を研究するように、プロモーションも試行錯誤が大事。私は、手段としてインターネットに着目しましたが、これは道具で売り方が至らなければ売れません。ネットに流す情報はすぐに真似されます。このスピードに対応し、確実にプロモートの方法を転換するには、徹底的な勉強と研究しかありません。常に他の半歩先をやり続けようとしています。

鹿内さんのビジョンは。

鹿内 良い物を正しい価値で伝え消費者に届ける、いわゆる仲介です。今後は、良い物の価値に見合う〝魅せ方〟や切り口を提案するプロデュースカンパニーを目指したい。「北海道の食材はレブニーズに持ち込めば売れる」を可能にする、北海道プロデュースカンパニーを。北海道と同規模の北欧の国に世界企業があるように、北海道を拠点に、世界に商圏を広げるチャレンジを続けていきたいと思います。

取材を終えて

真っ向勝負の人でした

 鹿内さんは、「ベンチャー起業家は要領が良く複雑な戦略が得意な人」という私の偏見を見事に裏切る、真っ向勝負の人でした。仕事に対し「最後の1%まで詰め切る」姿勢は、スーパーバイザー時代からの教訓だとか。ごまかしの嫌いな鹿内さんのパーソナリティーそのものが、レブニーズの商品力と重なりました。


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