真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第2回 株式会社ローレル 代表取締役 今井 浩恵さん

2009年10月30日 12時09分

 ことし6月、JR札幌駅直結の商業施設に、直営店「LAUREL」がオープン。そこには、日本初輸入のトルコ産月桂樹オイルが配合された製品が並び、配合率の違いを「%」別に表示したせっけんや女性の好みを掌握したアロマ製品など、ユニークな品ぞろえで人気を集めています。砂川に本社を置くローレルは、ニーズをとらえた企画力と、研究所、工場による開発・製造の一貫体制で、数々のヒット商品を創出している生活雑貨メーカーです。今井浩恵さんは、同社が経営危機となった2000年、26歳で営業係長から社長に就任。土産品メーカーから転換を進め、売上高9億9300万円(08年8月期)の企業に再生、躍進を続けています。

会社のピンチに、あえて社長を引き受けた理由は。

今井 浩恵さん

今井 就任を切り出されたのは、入社して5年がたち、ひと通り仕事を任せてもらえるようになったころ。前社長に退職を申し出たら「会社は今井さんでもっている。あなたが辞めて廃業か、あなたが社長になって立て直すか、どちらかにしたい」と想定外の選択肢を提示されたんです。

 廃業となれば多くの従業員が路頭に迷い、これまでお世話になった前社長に恩返しもできない。自分の退社は、誰にとっても幸せではない、と引き受けることにしました。異例の人事に反発する社員が会社を去り、取引先に相手にされないことも幾度となくありましたが、深刻には受け止めず、仕事に集中していたら業績も上がり、就任5年目を待たず、数億の借金が返済できていました。

製品づくりで、心掛けてきたことは。

今井 もうけを重視しないことです。利益を優先すれば、安価な材料を使用したり製作の手間を省かざるを得ず、結局そこを「イメージ」や「コピー」でつくろい、販売することになる。そんな商品の「うそ」に、ユーザーは敏感です。重視するべきは、自分が身銭をきっても買う商品かどうか。冷静なユーザー目線です。

 お客さまが喜んでくださるのは、料理店でいえば、プロの料理人の間だけで食べる「隠れレシピ」のようなもの。つまり裏メニューをメーンメニューにするという発想が生きた商品だと思っています。そのような商品でしたら、初めは採算が合わなくても開発、製造し、市場に出します。お客さまに満足いただき、商品が売れれば、おのずと利益の出る仕組みはできるものです。

消費者の嗜好(しこう)やニーズが多様化する中、ヒット商品を生み続けるのは至難の業では。

今井 浩恵さん

今井 私の判断基準は「世の中を幸せにできるかどうか」その思いで商品も開発しています。新企画を練る作業は、幸せなサプライズを考えること。今までにない発想で、みんなをあっと驚かせるのも私の役目だと。

 社員時代、分包の入浴剤を大手雑貨店に納品していました。分包タイプは、日々の気分に合わせ違う香りが楽しめるので、容量の多いボトルタイプでは満足できなかったユーザーをとらえ、コーナーの棚が増えていったんです。全国の雑貨店にも広がり、大それた錯覚ですが、自分が積極的にかかわり、時代を新たにつくり上げる醍醐味(だいごみ)を知りました。

 当時の喜びが、今に生きていると思います。ヒットを狙うよりも、しがらみや固定概念に縛られず、都度、世の中を幸せにする出会いやひらめきに従っていたら、ここまで来たという感じです。

今井さんがお考えになる「幸せ」とは。

今井 シンプルに、みんなが腹から笑っているということ。お客さまには「この商品に出会えてよかった」と心から喜んでいただくことです。

 ローレルの事業以外にも、仲間とNPO法人「恵まれない子供達に学校をつくる会」を立ち上げ、昨年ラオスに小学校を開校しました。彼らの貧困の理由の一つは字が読めず、書けないこと。そのために不当な条件で資源などを搾取されている現状がある。彼らの幸せに教育は不可欠なんです。私たちのプロジェクトは、NPOを主宰する草野順子さん(ネイルアーティスト)がデザインしたヘアピンを、賛同企業の協力で商品化、販売し、売り上げを学校の設立に充てるもの。来年はガーナにも考えています。

 お客さまに欲しいものを購入していただき、誰もが幸せになるなんて、すてきじゃないですか。この活動はチャリティーではなく、かかわるすべての人が幸せになる新しいビジネスの仕組みとして、広げたい。地道に、そして、私自身ハッピーに続けていきたいと思います。

取材を終えて

「幸せ」を表現する達人

 取材当日、本社のある砂川から札幌へ駆けつけてくださった今井さん。「本社を移転する予定は」の問いに、「創業の地に感謝がある。そこに税金を払い還元するのは、地方の企業のあり方」と即答でした。「幸せ」や「感謝」の表現は大切なことだけれど、気恥ずかしく躊躇(ちゅうちょ)してしまいがち。それを素直にカタチにできる達人だと思いました。


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