真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第5回 株式会社エーデルワイスファーム 代表取締役社長 野崎 創さん

2009年12月24日 12時11分

 「フロンティアフェスタ」は、手づくりハムやベーコンに定評があるエーデルワイスファーム(北広島市輪厚)の敷地内で、毎年収穫時期に行われる「食」のイベントです。そこには、札幌から車で数十分のアクセスでありながら、喧噪(けんそう)とかけ離れた牧歌的風景が広がり、今年も、市内や近郊から、蔵出しのビールや売り切れご免の手づくりパン、化学肥料を使わず育てられた野菜など、生産者の心意気と技が生きた「食」を提供する10店舗が出店。運営資金や宣伝力のままならぬ中、2日間で5,000人もの動員を記録する盛況でした。イベントを立ち上げた野崎創さんにお話をうかがいました。

自治体や大手企業が主催する「食」のイベントが数多くある中、主に地元有志によって行われているフロンティアフェスタが、開催2年目で早くも5,000人規模になっていることに驚きます。人気の理由は何だと思いますか。

野崎 創さん

野崎 ご提供している「食」が、おいしさの追求に手間を掛けたものばかりであること。そして、ごちそうのような景色があるからだと思います。ものづくりに込められた時の経過と、丘の景色が醸す時の流れは、あこがれのスローライフに通ずるもの。これは都心などで開かれる物産市にはない魅力です。

 例えば、エーデルワイスファームでは、通常の2、3倍のコストと手間、時間を掛けて商品をつくります。それを「趣味か道楽の世界」と言う人もいるほどなのですが、イベント会場の空間にも同様のぜいたくな雰囲気が溢れ、多くの人を魅了しているのだと思います。

運営で心掛けていることは。

野崎 仲間やお客さまと大いに楽しむことです。フロンティアフェスタは、ぜいたくな予算が確保されているわけではありませんので、損得抜きで手を貸してくれる仲間がいなければ、成り立ちません。集まった有志は、ものづくりの奥深さを広めるためなら、惜しまず協力してくれる人ばかり。頼りの協力者が、転勤で北海道を離れなければならないというピンチにも、「大丈夫、一緒にやろう」と背中を押してくれた別の仲間の声に奮起できました。

 以前、人間不信で悩み苦しんでいたころ、出張先の福岡で、初対面のある方に「縁だから」と、玄界灘をのぞむ最高のシチュエーションで、手厚くもてなしていただいたことがあり、心が救われました。その経験から、「縁」のある方と共有、共感する何かしらを持つ尊さと、人とともに生活を楽しむ温かさを学びました。

 フロンティアフェスタは、消費者と生産者が、直接顔を合わせ語らう場です。この機会に、私たち生産者が、匠(たくみ)の技や食にかかわる歴史的背景などを、お客さまに直接伝えることができれば、「食」と密接な「人」をよりリアルに感じていただけます。お客さまとの出会いも大切な「縁」。縁を信じ楽しむ力は、今後のイベント運営の原動力にもなっています。

地元の消費者を意識したこのイベントに、どのような思いが込められているのでしょうか。

野崎 創さん

野崎 地元の人は、地元の魅力に気付かないとよく言われますが、その地の「食」を地元の方に楽しんでいただける仕掛けによって、おらがまちの魅力に気付き誰かに伝えてくれる人が出てくるはずです。地元の魅力を堂々とアピールできる人が増えれば、地域に活気が生まれます。

 活気ある場所には人が集まり、縁が生まれ、これまでかかわることのなかった人たちとのビジネスや新たなコラボレーションも期待できます。目先の経済振興ばかりにとらわれず、地元の人間の誇りや自信に着目した地域振興に力を注いでもいいのではないかと思いました。それは、私たちのものづくりにも通じていると感じます。

野崎さんが思い描く未来図は。

野崎 北海道の「食」は、多くの人と感動を共感できる大切な要素です。エーデルワイスファームの商売も、イベントでの売り買いも、「こだわり」を押し付けるのではなく、お客さまと共に「食」の感動を楽しむコミュニケーションがあるからこそ。

 こうした共感の輪がさらに広がり、各地でその土地ならではの「フロンティアフェスタ」を開催いただけるようになるのがひとつの目標。各地とのネットワークも視野に入れています。人が集まって楽しくなるのは、イベントを開催している瞬間だけではありません。ネットワークができれば考える「頭」も増え、将来的な楽しみが増えていくものです。

取材を終えて

北海道の魅力発信に期待

 野崎さんにとって、こだわりある人たちの力あってこそのフロンティアフェスタは、互いの「違い」を肯定し、そのハーモニーを楽しむ醍醐味(だいごみ)を学ぶ機会にもなったそうです。オンリーワンの魅力溢れる北海道。このイベントが、数々の特色を束ねても決して総花にならず、かえってそれぞれの良さが生きてくる魅力発信の舞台として、さらに発展することを願っています。


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