真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第11回 星景写真家 中垣 哲也さん

2010年04月09日 15時48分

 オーロラの輝きを「天からのメッセージ」と語る中垣さんは、札幌在住の星景写真家です。1年のうち数カ月を、カナダやアラスカでのオーロラ撮影に費やし、そこで収めた貴重な瞬間を、全国各地の講演やイベントで発表。連写した写真を数十枚も重ね、アニメーションの原理で、オーロラの微妙な襞(ひだ)の動きを映写するスライドショーや、自ら出版社を立ち上げ、印刷に使用するインクの種類にまで徹底的にこだわった写真集の制作など、オーロラの美しさをよりリアルに再現する独自の表現で、多くの人を魅了しています。

オーロラが伝える「天からのメッセージ」とは。

中垣 哲也さん

中垣 太陽系には太陽風というとてつもないエネルギーのプラズマが吹き荒れています。それは、磁場の無い星ならば、大気なぞ、いとも簡単に飛ばされる勢いですが、磁場を持つ地球は、磁気圏によって、太陽が放出する熱や有害物質から守られている。つまり、私たちが過酷な宇宙空間の中で生きていけるのは、奇跡のような出来事なんです。

 オーロラは、太陽風が、南極と北極辺りにある地球の磁力線に誘導され、空気の分子や原子と衝突し放電している現象です。緑色の光彩は酸素との衝突を示し、私にはそれが、地球が生命の宿る奇跡的な星の証しとして輝いているように思えます。

中垣さんの作品はどれも、まるで地上が天空に包まれているようで、普段なかなか意識できない地球のかけがえのなさを、宇宙の視点で感じられるように思います。同時に、今この瞬間、私が地球に生きていられる喜びと安堵(あんど)の気持ちで満たされます。

中垣 哲也さん

中垣 実際オーロラを撮影していると、自分は今地球上で最も素晴らしい空の下にいるんだという気持ちになります。もともと星景撮影は私の長年の趣味。星空を撮るために訪れたニュージーランドで、暗闇を後光のように明るく照らすオーロラに魅せられて以来、趣味の延長でオーロラ撮影を始めました。

 カナダでは「ブレークアップ」と呼ばれるオーロラにも出会いました。一筋の光が、天空を破らんばかりに一気に広がる非常に珍しい現象に、いったい何が起こったのか分からないほどの衝撃を受け、ますますオーロラの魅力に引き込まれていきました。

 こうした感動は、自分一人のものにしておくような、ちっぽけなものではない。3年前に病院を退職し(前職は放射線技師)、本格的に星景写真家として活動を始めたのも、撮影を重ね「天からのメッセージ」をより多くの人に伝える使命感が自然とわいてきたからです。

オーロラの撮影は、一筋縄でいかないと想像しますが。

中垣 何せ太陽と地球の気まぐれによる自然現象ですから、思い通りにならないのが前提です。決定的なチャンスを待ち続け、気持ちが切れてあきらめてしまえばそれで終わり。それに、待ち望むオーロラは決まって動きが速いもの。その瞬間をとらえたくて焦り、舞い上がってしまってもいけない。たとえ撮影に失敗しても、いちいち落ち込んでいるわけにもいかない。撮影には、技術の駆使はもちろん、客観的に自分の精神状態を見詰める感覚が必要になります。

 未開の森に身を置き、オーロラとの千載一遇の好機を逃さぬよう腐心しなければ感じることがなかった自分の存在のはかなさ、自然に対する畏敬(いけい)の念。スライドショーや写真集の自費出版で、より忠実なオーロラの再現を試みるのも、美しさだけではなく、オーロラ撮影で私が体験した感動のすべてを「天からのメッセージ」として、少しでも伝えることができればと思うからです。

中垣さんご自身が伝えたいことは。

中垣 哲也さん

中垣 宇宙の中で、地球の存在はいかに小さく奇跡的で、私たちの存在はいかに一瞬か…。私はオーロラに遭遇するたびに、壮大な宇宙の時空間を客観的に眺めることの大切さを教えられていると感じます。広い視野や視点は、私たちに謙虚さや想像力をもたらします。それは人生に立ちはだかる壁を乗り越える術にも、もしかしたら、世界各地でいまだ絶えない争い事を解決する糸口や、深刻な地球環境問題を好転させる一助にもなり得るのではないでしょうか。

 たとえオーロラを目の当たりにするような劇的な機会がなくても、太陽だって宇宙、青空だって星空だって宇宙。宇宙は決して別世界ではなく日常に存在しているんです。私の活動が、身近な宇宙に気付き、その英知に触れるきっかけになれば。大それたことはできませんが、これからもオーロラの姿を撮り続け、「天からのメッセージ」を、一人でも多くの人に、妥協せずきちんと伝え続けていきたいと思っています。

取材を終えて

極北に輝く「無」の境地

 オーロラは上手に撮ろうとしないことです、と話す中垣さん。自分の理想に固執せず「無」の境地でシャッターを切った時にようやく、なんとか及第点の作品が撮影できるそうです。自我や損得への過剰なこだわりが招く、かなしい事件も相次ぐ昨今。極北の地で一人、人の力など到底及ばない世界を被写体にする中垣さんの感性に、私たちの日常を省みました。


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