真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第18回 北海道バリュースコープ㈱ 代表取締役 三浦 重道さん

2010年08月27日 10時57分

 「じゃらん北海道発」は、道民の4人に1人が読んでいるともいわれる人気のご当地観光情報誌です。創刊は1994年。道民をターゲットにした道内観光のプロモーションにいちはやく着目し、リクルート北海道じゃらんを立ち上げた三浦さんの指揮によるものでした。三浦さんは退職後、隠居生活を経て、北海道バリュースコープを起業。各地の観光資源を生かした宿泊プランの提案やネット予約システムの運用サポート、旅行代理店に依存しない直販営業力を強化する社員研修を実施するなど、集客に伸び悩む宿泊施設へのきめ細やかなコンサルティング事業で、再び、北海道の観光プロモートに乗り出しています。

三浦さんが北海道の観光振興に尽力しようと思われたのはなぜでしょうか。

三浦 重道さん

三浦 私は帯広市の出身です。大学を卒業して18年間は、東京・大阪で仕事をし、その後リクルートの北海道支社長として札幌に赴任しました。翌年、道が全国初の観光立県を宣言。北海道に戻りその魅力を再認識していた私は、このままここにとどまって観光を盛り上げる仕事に携わることはできないだろうかと思い巡らすようになりました。

 そこで、リクルート北海道じゃらんを設立し、道民のための旅と遊びの情報誌「じゃらん北海道発」を創刊しました。リクルートでは初めて別会社としてスタートした事業でしたが、既に始まっていた東京の「じゃらん」事業が、累損を抱え厳しい状況でしたから、「東京の十分の一以下しかない北海道のマーケットでうまくいくはずがない。また、北海道観光は道外客が中心で、北海道の人は、あまり旅行しないのではないか」と、私の試みを危ぶむ声もありました。

 ところが道の調査では、道外客は600万人に対し、道内客が4000万人を超えており、北海道の観光を支えていたんです。「じゃらん北海道発」で道民の観光マーケットを活性化すれば、それによって北海道の観光市場は拡大して行くと確信できるデータでした。

今春開設された「ぐうたび北海道」は、北海道の女性に向けた道内観光の専門サイトです。インターネットは、他媒体に比べより広く情報伝達できる手段だと思いますが、道民の需要を強く意識したサイト展開に、何を期待されますか。

三浦 確かにインターネットを活用すれば、全世界に情報発信できます。しかしそれはあくまでも発信できる、というだけのこと。私たちが遠く離れた外国のサイトを頻繁に閲覧しないように、多くの人は、ネットから「身近で役立つ」情報を得ているんです。

 団体旅行から個人旅行が中心の今日、インターネットによる集客は観光業界の大きな課題ですが、ローカルな情報を必要とするニッチなユーザーをとらえ、彼らにとって価値ある情報を発信していけば、やみくもに広く情報を提供するよりも、集客に結びつきやすくなります。

 「ぐうたび北海道」は、道内在住の女性にとって「身近で役立つ」情報を網羅したサイト。九州のように県分割されていない北海道を、ほどよくまとまった国内最大規模のネット圏域だと考えれば、そのプロモーションの効果は、決して小さなものではないと思います。女性の口コミ力にも注目しています。

新会社は、隠居生活を返上しての起業です。どのような思いが込められているのでしょうか。

三浦 じゃらん時代の私は、「北海道観光を活性化することによって北海道を元気にしたい」その一心で過ごしてきました。しかしあらためて振りかえれば、仕事を通し元気をもらっていたのはむしろ私の方だったんです。社員の頑張りや、読者の励まし、また新しい試みに観光業界の理解と協力をいただけなかったとしたら今の私はありません。

 起業は、これまで私を生かしてくれた元部下や観光業界にご恩返しをしたいという思いから。今後も北海道観光の魅力(バリュー)を、あらためて顧客視点に立って探索・創出(スコープ)し、マーケットを動かす情報を発信していくこと。これが私達の果たすべき役割と考えています。

取材を終えて

旺盛な起業家精神を実感

 「自ら機会を創造し、機会によって、自らを変えよ」は、リクルート創業時の社訓だそうです。その言葉にご自身の人生を照らし、気づけばそのように歩んでいたと話す三浦さん。新たな起業と旺盛な起業家精神が「待ち」の姿勢を打破し、変わろうとしている観光業界の追い風になっている、と感じるインタビューでした。


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