真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第29回 ㈱ワイズスタッフ 代表取締役・㈱テレワークマネジメント 代表取締役 田澤 由利さん

2011年03月11日 12時57分

 ワイズスタッフ(北見市)は、ネットワーク上で運営されている「ネットオフィス」です。業務の指示やホウレンソウ(報告・連絡・相談)は全てネット上で行われるため、スタッフは通勤する必要がなく、時間や場所に縛られず業務に参加することができます。業務委託契約をしている在宅のワーカー(ワイズスタッフでは、ネットメンバーと呼んでいる)は、海外在住者も含め140名ほど。業務内容に応じ、適切な人材でプロジェクトチームが組まれ、サイト制作やネットプロモーション、ネットリサーチ等のWeb事業を請け負っています。田澤さんは、19年前、ご主人の転勤と長女出産を機に、フリーライターとして独立。そもそも「ネットオフィス」という概念は、育児と仕事の間で、ご自身と同じように奮闘している女性のために、田澤さんが発案したものでした。

起業されたのは13年前です。バーチャルなネットオフィスは、かなり斬新な発想だと捉えられていたのではないかと思います。

田澤 由利さん

田澤 当時、インターネットの普及で、「在宅ワーク」自体はブームでした。でも、仕事には「信用」が重要。例えば、どんなに能力があっても、会ったこともない在宅ワーカーに、依頼はなかなかこないでしょう。それなのに、私同様に子育てや介護等の事情で、在宅ワークを選択せざるを得ない人は増えて来ていた。

 ネットオフィスは、この平行線を解決するためのアイデアでした。会社には、たくさんの人が働いていて、たとえ一人が倒れても代わりの人が職務を担い、納期までに仕事を終えます。これが、仕事の「信用」ですよね。ならば、在宅ワーカーのための会社を、ネット上につくればいいんじゃないかと。

 確かに、「在宅=1人の仕事」と解釈されていた頃でしたから、変わった起業だと言われましたが、ネット上に、机やキャビネットがあり、時計やスケジュールボードを置き、ネットメンバーが通勤者さながらに情報共有できれば、立派な会社。

 これなら弊社も、能力と意欲のある人材を、居住地に関係なく採用できますから、北見を本拠地としながら、高度な能力を要するビッグプロジェクトへの参画も可能になる。ネットメンバーの方々には、それまでの在宅ワークでは実現し難い規模の仕事にも、従事していただけているのではないかと思います。

働き過ぎによる過労死やうつ病の増加、少子化等の社会問題を背景に、充実した私生活を送りながら働ける環境が求められる時代になりました。ネットオフィスへの期待も高まっているのではないでしょうか。

田澤 最近は、情報通信機器を活用しオフィス以外で働く勤務形態が「テレワーク」と呼ばれ、ワークライフバランスを考慮した新しい働き方として注目されています。中でも、政府は、ネットオフィスのような「在宅型テレワーク」の普及に力を注ぎ、2015年までに、在宅ワーカーを、現在の320万人から700万人にする目標を掲げ動き始めています。

 特に北海道は、国のテレワーク普及促進対策の一環である「ひとり親家庭等の在宅就業支援事業」の先駆で、昼間と夜間に仕事を掛け持つひとり親の人たちを対象に技術訓練を行う等、能力開発や業務開拓のために積極的な支援を行い、弊社も協力しています。

 テレワークマネジメントは、こうした状況の中で、テレワークの受け皿を少しでも広げることを目的に、一昨年設立しました。

 経験上、テレワーク普及の一番のネックは「不可視」であること。導入を検討する企業へのコンサルティングでは、雇用側が、ランダムに撮影された在宅ワーカーのPC画面の画像で就業を確認できるITツールをご紹介する等、具体的な解決策もご提案しています。

 講演等では、ネットオフィスのノウハウやツールを詳細にお伝えし、ささやかな活動ですが、使命感を持ってテレワークの更なる認知と普及に努めています。

働き方に焦点をあてた田澤さんのご活動について伺い、社会が抱えるさまざまな問題をあらためて考える機会になりました。

田澤 たとえ今少子化対策が功を奏したとしても、赤ちゃんが成人するまでの今後20年間、日本は確実に労働力不足。企業は、パイが少ない中で、より良い人材を得て強くなっていかなくてはなりません。

 介護を理由に、働き盛りで退職してしまうケースも珍しいことではなく、これからは、住所にこだわらず有能な人材が雇え、通勤困難な社員の退職を回避できるネット上の勤務環境が、ますます真価を発揮するものと確信しています。

 それに育児は、一家庭の課題というだけではなく、次世代育てです。私は、人生それぞれの山や谷に合わせて「働き方」を選択できる柔軟な勤務環境が、きちんと働き、子育てもできる社会を可能にすると思っています。

 通勤しない働き方も選択できれば、父親や母親や、それに代わる地域の大人が子どものそばにいてあげられるんです。そのためには、従来の働き方を前提とした法律も変えなければ。国にも出向き、現場の声や状況をこつこつと伝え続けていますよ。「家にいても働ける、離れていても働ける」環境をつくることは、生涯をかけた私の仕事ですね。

取材を終えて

生き方の選択肢広げる

 ネットメンバー希望者は、学歴も職歴も素晴らしい方が多いそうです。求人倍率は40倍。優秀な人材が在宅型テレワークに活路を求めている実情は、想像以上でした。ワイズスタッフのおかげで仕事も出産も諦めなかったというメンバーの声が原動力と話す田澤さん。働き方の選択肢を広げたテレワークは、「縮小社会」が懸念される中、生き方の選択肢も広げていると思いました。


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