真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第35回 室蘭市長 青山 剛さん

2011年06月10日 11時12分

 青山さんは全国で3番目に若い33歳の市長です。室蘭工業大学の助手職から転じ、室蘭の市議会議員を2期務めた後、今年4月の室蘭市長選で当選。若きリーダーの誕生は、最年少の鈴木直道夕張市長(30歳)の当選と共に、話題を呼びました。これまでも、地方政治家らを対象とした「マニフェスト大賞」で、老朽危険家屋に対する取り組みが評価され「最優秀アイデア賞」を受賞する等、有言実行の政治姿勢が注目されてきた青山さん。「勝力(かつりょく)あるむろらんへの挑戦」を掲げる新市長の政策と実行力に期待が寄せられています。

室蘭市は老朽危険家屋対策の先駆です。同様の問題を抱える自治体からの問い合わせも多いそうですね。

青山 剛さん

青山 例えば、一人暮らしのお年寄りがお亡くなりになった後、空き家となって長年放置され、倒壊の危険を伴う老朽家屋が増えています。市民の話を聞いてみると、風化した建材が強風で飛ばされ近隣の車等を傷つけたというケースや、そうした被害にいつ遭うのか心配だ、と言う声もありました。

 深刻な地域の実情を知り、議会で質問したのが4年前。老朽危険家屋とはいえ 、私有財産の問題には行政が介入しづらいと言われる中で、市民生活の危険と不安解消を命題に、対策が市の政策課題となるまで提言し続けました。

 所有者の法定相続人や抵当権の状況等、法律上のハードルを越えるべく綿密な調査も重ね、ようやく去年、2棟の解体を完了。有り難いことに、解体は公費ではなく地元建設会社が社会貢献で請け負ってくれました。

 室蘭市の老朽危険家屋対策は動き始めたばかりですが、思いがけず、マニフェスト大賞の最優秀アイデア賞をいただき、一地方都市の奮闘を、超少子高齢社会の普遍的な課題に照らし、広く提起させていただけたのではないかと思います。

札幌ご出身の青山さんが、室蘭市政に専心されるようになったのはなぜですか。

青山 室蘭工業大学工学部に進学し、大学院では都市計画を専攻していました。当時から研究のためにまちづくりのワークショップに参加したり、市民の一人として、地域興しのイベントや事業にも関わっていたんです。

 市民活動を通し意外だったのは、室蘭市民がなかなか地元自慢をしないこと。良好な港も、工場群の真裏に手つかずの自然が残る希有な景観も、製鋼業をはじめとするものづくりの歴史も培われた技術力も、評判のご当地グルメだってあるのに。もったいないという思いや口惜しさが募りいつしか市政を志すようになっていました。

 それだけに、市議になってからも室蘭の魅力発信にはこだわりましたよ。若者有志と立ち上げた「白鳥大橋ハッピープロジェクト」では、橋の縁結びにまつわる噂を引き合いに、主にカップルの皆さんに楽しんでいただける幸せでユニークな仕掛けを手がけ、多くのメディアに取り上げられました。地元のつり橋が「恋愛の聖地」と呼ばれ全国的に知られ始めると、それまでまちに興味を示さなかった市民の皆さんも喜んでくれましたね。市民の誇りの喚起とも思える様子は、私の喜びでもありました。

青山さんがおっしゃる「勝力」とは。

青山 室蘭の人口も10万人を割り込み、今後も減少する見通しです。超少子高齢社会には、人口増加を見越していたこれまでの都市計画が機能しません。様々な課題の解決がそれぞれの自治体に求められるようになった今こそ、まちには、「活力」よりも強い、厳しい時代にも打ち勝つ力が必要だと考えました。また「勝力」には、室蘭から日本を変えるんだという気概も込められ、そのような力が潜在していると確信しています。

 現在、産学官民の連携で進行している「シップリサイクルプロジェクト」もそのひとつ。危険な作業にも関わらず、設備や技術が伴わない発展途上国に任せきりだった廃船リサイクルを、港町・室蘭の技術力をもって行い、造船国・日本の責任を果たそうという国内唯一の試みです。国際的な環境問題にも一役買うプロジェクトに、実際、室蘭の「勝力」は生かされようとしているんですよ。

 私の仕事は、市民の皆さんが「勝力」を披露できるステージをつくり、スポットライトを当てること。今後は、若さと行動力に加え、室蘭の「勝力」を、日本や世界に貢献し得る力と捉えたダイナミックな視点で、政策立案にも努めたい。市民それぞれが輝く市政を、力強く進めて行きたいと思います。

取材を終えて

徹底した現場主義

 大学時代は、ボランティアサークル活動に励んでいたという青山さん。地元の方からの「有り難う」に力をもらえた経験が、政治活動の支えにもなっているそうです。市議の頃より市民の話を熱心に聞き歩く姿が知られていた「現場主義」の新市長。青山さんの市民の声に寄せる思いが、伝わってくるインタビューでした。


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