真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第40回 スタジオNUKITA 代表・フードディレクター 貫田 桂一さん

2011年08月26日 11時35分

 貫田さんは、道産食材に対する愛着と飽くなき探究心で知られる料理人です。各地の農家、漁師、酪農家を訪ね歩き20年。ご自身の目と舌で確かめた一次産品を生かしたご当地名物の開発をはじめ、講演や執筆活動、テレビ出演の他、道より「北海道地域づくりアドバイザー」と「北海道食育コーディネーター」の委嘱を受け地域振興にも一役買う等、幅広く活躍しています。4年前に料理長を務めていたホテルを退職し〝フードディレクター〟として独立。今春札幌の商業施設内にオープンした「スタジオNUKITA」では、「食育」をテーマに料理教室を開催し、自ら講師を務め、家庭を切り盛りする女性を中心に人気を集めています。

貫田さんは農林水産省の取り組みを支援する「地産地消の仕事人」のお一人にも選ばれていますが、「地産地消」という言葉が広まる以前から、シェフでありながら厨房内にとどまらない活動にも注力されていました。きっかけは。

貫田 桂一さん

貫田 私の専門は西洋料理です。料理長になったのはバブル景気に沸く頃。輸入品のフォアグラやハーブを使った料理がもてはやされていた時代でした。そんな時長男が生まれ、妻の読む育児雑誌に掲載されていた道産小麦粉の記事が目に留まりました。

 気になってその小麦粉を江別から取り寄せ、実際に味わってみたところ、麦本来の「香り」と「味」がしたんです。それは、今までにない衝撃の味覚体験でした。さらに、輸入小麦の多くが、輸送時の防カビや防虫のために、じかに農薬をかけられているという現状も知りました。

 体に優しくおいしい食材は地元にこそある。灯台下暗しを思い知り、休日返上であらゆる産地を巡り始めたんです。産地では、とにかく厨房でうかがい知る事のない食材の「背景」にこだわりました。生産者の尽力や熱意に真剣に耳を傾け、時には畑の土をなめ牧草もかみ、おいしさを裏付ける理由を探りました。

 そのうち良い畑に近づくと体にほんわかと温かさを感じるようにまでなって。道産食材への関心はますます高まり、気づけば当時の14支庁管内すべてに足を運んでいました。

 ほれ込んだ食材を小遣いで購入しホテルで使用したこともありましたね。調理するだけでは飽き足らず、その食材の良さについてお客さまの傍らで直接ご説明させていただく事も少なくありませんでした。

貫田さんを活動に駆り立てているものとは。

貫田 「自然の恵み」への慈しみと感謝でしょうか。以前羅臼で、ホッケを活用したレシピ考案を試みたことがありましたが、どんなに頑張っても「ホッケの開き」以上においしい料理を作ることはできなくて、情けなくて。

 培った知識も技術も道産食材の圧倒的なおいしさに及ばないという経験を何度か重ねるうちに、厨房でも食材や生産者に〝ありがとう〟と手を合わせ、調理するようになっていました。地域振興の旗ふり役を買って出るのも同様の気持ちが原動力。当時はまだ脚光を浴びることがなかった道産食材の真価や生産者の思いに光が当たり、「食」によって地域が輝くお手伝いをさせていただきたい一心からでした。

 各産地とのお付き合いが深まるにつれ、消極的だった地域の皆さんが自発的に旗をふり、産品PRの協力を私に求めてくださるようにもなりました。思いがけない嬉しい反応でした。

 例えば、日高の天然秋鮭「銀聖」というブランドは地元の方の発案で全国公募し、審査員の私が選んだネーミングなんですよ。地域の皆さんの知恵による広報戦略で知名度が上がり、今や名実ともに全国トップブランドの秋鮭になった。道産食材が地域興しの起爆剤となった顕著な実例を目の当たりにしました。

スタジオNUKITAの別名は「食育スタジオ」なんだそうですね。新たな拠点を構え貫田さんが伝えていきたいこととは。

貫田 特に世のお母さんたちに、「食の大切さ」を心得た調理を伝えたいですね。私は、生産地を巡り、食材それぞれのおいしさを損なわず調理するためには、想像以上に繊細な配慮が必要であると身にしみて感じました。

 ニンジンだって産地や生産者の考えにより特色は違うのだから、育った畑の土の色で調味料を使い分けてみるとよい、とか。食材の「旬」は一般的には10日ほど。ブロッコリーだったら10日もない。鮭なら一週間にも及ばない、とか。

 この20年間、たくさんの道産食材を口にし習得した心得が、目の前の一皿を一層有り難く感じさせてくれたのは言うまでもありません。こうした一皿の重みは、レストランでも家庭の食卓でも同じですよね。

 スタジオNUKITAの料理教室では、あえてどのご家庭にもある調理器具を使用しています。ここで学んだことは家庭に持ち帰り、是非食卓でお子さんへ伝えてほしいからです。私はかつて親心から道産食材のおいしさに目覚めました。経験上、親が子供に対して最も親身な食育の担い手ではないかと考えています。子どもは宝です。今後は、スタジオNUKITAを、〝母から子へ〟いつも家庭とつながっている「食育発信拠点」として、食の大切さを伝える使命を果たしていきたいと思います。

取材を終えて

食材が料理の主役

 先日貫田さんの料理教室に参加。ゆでたじゃがいものおいしい切り方は、包丁は使わずそれ自体が自然にほぐれる部分を見つけ手でほっこりと割る事と教えられ、貫田さんがおっしゃる〝食材が主役〟の本意を感じる事ができました。「食」は人を良くすると書く、という貫田さん。信念と行動力に心響くインタビューでした。


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