真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第47回 喜茂別町地域おこし協力隊 隊員 橋口 とも子さん

2011年12月09日 12時04分

 橋口さんは、昨年、総務省が推進する「喜茂別町地域おこし協力隊」の公募に志願。札幌から移住し、町の非常勤職員として、高齢過疎化地域の活性に尽力しています。地元産物を活用した商品開発にも着手。「トマトカーシャ」(300g入り630円)は、道産のソバの実とトマトを主原料にした橋口さん手づくりのトマトソースで、子どもたちや健康志向の女性に好評です。NPOの協力を得て2カ月前より販売を開始。受注製造が主で、既に100個以上を売り上げています。これを足掛かりに、来年の協力隊任期満了を待ち本格的な起業に踏み出す橋口さん。目指すは〝つながり創造事業〟と、生き生きと話します。

喜茂別町の地域おこしに関心を寄せられたきっかけは。

橋口 とも子さん

橋口 大学で心理学を学ぶために、新卒で入社したガス会社を7年で退職。向学心高じ大学院進学も志したのですが、当時の私には授業料が高額で、断念せざるを得ない状況に陥って。目標を失い、その後5年ぐらいは、日雇いもいとわずアルバイトをしたり、派遣社員として働いていたんです。

 そこで、労働形態や社会構造の矛盾に悩む人たちに触れ、世の中の理不尽さを垣間みて。ささやかでも行動を起こして、こうした社会を変える一助になれないだろうかと志向するようになりました。

 その頃、元上司のご厚意で再度同じガス会社に嘱託として勤務。顧客満足度向上を目的とする部所に配属され、他者の気持ちをくむ仕事の必要性を実感する機会にもなって。休みを利用しては、市民活動等に積極的に参加しながら、心の充足感が得づらい殺伐とした社会に対し自分はどんな貢献ができるのか、模索し続けていました。

 思いつのるも、会社員として働きながらでは、活動時間の制限もあり、個人の意思で行動もしづらい。昨年一念発起し、起業を念頭に再び退職を決意した直後、協力隊の募集を知ったんです。任期終了後には、町内で起業か就業も募集の条件で。ここで、自分が遂げるべき使命のようなものを見出せるのではないかと思いました。

トマトカーシャ開発には、どのような思いが込められているのでしょうか。

橋口 徳島県上勝町の〝葉っぱビジネス〟は、野山の葉や花等の植物を、料理の〝つまもの〟用として販売。山村の地域資源を生かし成功しました。同様に、喜茂別町の事情に即した産物で、新たな市場を生み出せないかと。

 実際のところ、喜茂別のソバは各家庭が小規模に栽培している程度。でも日頃から食卓に自家製の手打ちそばが上がるほど、町民の暮らしに根付いていました。ソバが大規模生産されていなかったのも好都合。

 農家さんに限らず、町の家庭菜園でつくられているソバに至るまで、少量ずつを買い取り集め、加工する仕組みが構築できれば、多くの町民が事業に関われるのではないかと思いました。

 それに、トマトカーシャは、ソバを実のまま炊きソースに混ぜた〝新しいそばの味わい方〟。これを喜茂別から発信し、新たな市場をつくれればと。いずれは原料も全て喜茂別町産にし、地域おこしの好展開を図っていきたいです。

 一軒一軒を訪問し、集落の実情を知る事から始まった協力隊の仕事。高齢の方からは未体験のまき割りも教えていただいて。〝便利〟に頼りすぎず、必ずしも合理的をよしとしない皆さんの暮らしぶりは、経験と生きる知恵に基づいたものだと感じました。

 この地で皆さんが積み重ねてこられた 〝日常〟を大切にしたい。トマトカーシャには、協力隊の活動から得た実感が生きています。

ビッグビジネスを志す起業とは違う橋口さんの姿勢に、新しい時代の、ひとつの起業家像を思います。

橋口 目指すは、〝つながり創造事業〟です。世の中の変化は目まぐるしく、機動力ある個人や小規模な企業活動が注目されている時代。個が緩やかにつながり連携し、それぞれの役割を全うする事業がますます求められていると感じています。

 まずは、私のような家内事業でも起業は成り立つ事を示し、その経験を意欲のある方に還元して、喜茂別に次々と起業家が生まれるお手伝いがしたいんですよ。私は、「ヒト・モノ・カネ」ゼロからのスタートでした。それでも地域の人たちと交流を深めお知恵をいただき、試作に関わる資金も内閣府の起業支援金の助成で何とか補い、トマトカーシャ商品化を実現しました。

 嬉しいことに、はやくも栽培している野菜でジャムを作ってみたいという生産者さんが現れて。加工品製造には、販促を左右する容器の選定やパッケージデザインも重要ですから、忙しい農家さんに代わって関係業者と交渉したり、所持した製造許可でテスト販売のご協力をしたり、私ができるあらゆる助力を思案しているところです。

 トマトカーシャに、おばあちゃんたちの針仕事で作った小物を添える企画も進行中です。商品に付随する仕事をどんどん創出し、町全体でもうける仕組みをつくりたい。夢は膨らみます。

 移住当初は、「協力隊の人」と呼ばれていました。今では「ともちゃん」を応援したいからと、商品を買ってくださる町の皆さん。農家さんは、原料の試験栽培に快く協力してくださいます。

 町を元気にしたい一心でしたが、私自身が勇気づけられていて。励ましや期待に応えられるようがんばらなくちゃ、と。皆さんへの感謝の気持ちが、今の私の原動力です。

取材を終えて

人への敬意と思いやり

 「Travessia(トラヴェシーア)」は、橋口さん個人の活動総称。〝つなぐもの〟を表現するポルトガル語に由来しています。誰かの役に立っているという一人一人の実感が〝つながり〟を生むのだと思う、と話す橋口さん。つながり創造事業を展望するその笑顔から、人の「力」への敬意と思いやりが伝わってくるインタビューでした。


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