開拓精神をまちづくりに反映
明治時代に奈良県十津川村からの移住者によって切り開かれた新十津川町。先人の思いを引き継ぎながらまちづくりに取り組む。
―町の歴史が特徴的だが。
1889年に奈良県の十津川村で水害が発生し、住民の生活場所がなくなったことがきっかけで誕生した。当時は北海道も開拓の時代。移住者は不撓(ふとう)不屈、質実剛健、一致団結という精神で開墾した。
現在、町で作られるお米がおいしいと言われるのも、移住者が道路や水田などを将来を見据えて整備してくれたからだ。
―現在の課題は。
人口減少は着実に進んでいる。一定の人口がいなければ経済は成立せず、一定数を維持するためにも今住んでいる人が安心感を持つことが必要だ。
主な施策では、第1避難所やコミュニケーションの場として大きな役割を果たす行政区の自治会館建て替えを順次進めている。定住促進に関しては各種住宅支援に取り組んでいて、助成額が最大200万円のものもある。これらが良い影響を与えているのか、社会減が減少傾向となっている。
新庁舎建設も計画しており、防災機能を備えることもそうだが、子どもから大人まで誰もが使いやすく、みんなが来やすい庁舎にしたい。
―金滴酒造やJR札沼線が観光資源になっているが。
金滴酒造は土日になると各地からお客さんが訪れるなど、とてもにぎわっており、町内にある酒粕を使用した料理を振る舞うお店も人気だ。
JR札沼線は風景がきれいな路線で、新十津川駅をボランティアが掃除しているほか、地域おこし協力隊がPRに取り組んでいる。沿線の3町長がガイドを務めるツアーもあり、多くの人に魅力を肌で感じてもらいたいと考えている。
―まちづくりの展望は。
産業では基幹産業の農業を守り、雇用の確保に努める考えだ。まちづくりという意味では、先人たちがつくり上げた、どことなく安心感のある空気を受け継ぎ、これからも安心で安全な環境をつくり、この空気感を少しでも感じ取ってもらえるよう魅力を発信していきたい。
熊田 義信(くまだ・よしのぶ)新十津川町出身、1954年3月16日生まれ。初当選は2015年で現在1期目。2017年8月25日付掲載