おとなの養生訓

おとなの養生訓 第121回「お酒が抜ける」 眠ると分解作用が遅く

2017年09月22日 10時50分

 気の置けない仲間と、大いに盛り上がって、ついつい杯を重ね、相当に酔った状態で帰宅。それでも一晩ぐっすり眠ったにもかかわらず、翌朝、目が覚めると、明らかに酔いが残っているということはありませんか?二日酔いで具合が悪い、というのではなく、まだ酔っぱらっている、お酒が体に残っているという感覚です。飲み過ぎなのは明らかですが、飲酒を終えてからお酒が体から抜けるにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

 お酒を飲むと、長くても数十分の間に血液中にアルコールが完全に吸収されます。この血液中のアルコールは主に肝臓で分解されていきます。しかし、吸収のスピードに比べて、分解のスピードは遅いので、結構な時間、アルコールは血液中に残るので、酔いは長く続くのです。

 たとえば、350㍉㍑の缶ビール1缶を、時間をかけずに飲んだとすると、15分ぐらいで血液中のアルコール濃度は最高になり、その後ゆっくりと減っていきます。血液中から完全にアルコールがなくなるのは、飲んでから2時間後となります。これが缶ビール2缶だったとすると、完全にアルコールが抜けるのに4時間を要します。500㍉㍑缶2缶なら、おおよそ5、6時間ほどかかることになります。500㍉㍑缶は日本酒ならおおむね1合に相当します。日本酒を3合も飲むと、10、11時間ほどかかるのです。実は、眠ると分解作用は遅くなるので、睡眠を加味すると12時間は抜けないことになります。これでは12時前にご帰還だとしても、翌朝の出勤時には、まだお酒が残っていることになります。もし、通勤に車を使えば酒気帯び運転です。

 よく、酔いをさますために水を飲む人がいますが、翌朝にまだ酔っているのを確認してから水を飲んでも効果はありません。水を飲むなら、せめて眠る前、それもコップ一杯以上の水が必要です。それでもアルコールが抜ける時間はわずかしか短くなりません。水を飲むのは、アルコールによる脱水を防ぐのには有効ですが、アルコールは抜けないのです。

 これらの話は、体重70㌔ぐらいのお酒の比較的強い人の話です。飲むとすぐ顔が赤くなるような方は、2時間程度余計にかかるとお考えください。翌朝のことを考えてお酒を楽しむのが、おとなの養生訓です。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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