まちづくりに関するNPO法人のTOMネットは22日、札幌市内で空き家対策セミナーを開いた。会員間のリレートークでは、中央区内のビル空室を活用した地域交流スペース「サードプレイスSapporo」での社会実験などを紹介。少子高齢化や人口減少が加速する中、空き家は地域のコミュニケーション形成に重要な役割を果たすものの、運営や管理の方法に課題が残り「将来像を考えながら、ハードとソフトの両方から考えなければならない」と考えをまとめた。
空室を社会実験に提供しているアルファコート(本社・札幌)の樋口千恵専務は、自社が手掛ける商業ビルやマンションの空室対策を紹介。「良さを引き出したり地域のニーズを的確に捉えれば、古い建物でも高い稼働率を確保できる」と話した。
ウェブによる不動産セレクトショップ「街のツカイカタ」を運営するアーレックス(本社・札幌)の佐藤克俊氏は、サードプレイスSapporoの利用例を説明。7月以降、運動や工作の教室で使われ「今後はSNSを活用した入退室の管理システムで、個人でも気軽に立ち寄れる場所にしたい」と新たな展開を示した。
子育てに関するフリーペーパー「エミナ」を編集するアートピア(本社・札幌)の本田美穂子社長は「家事や育児など時間の制限される母親にとって、家の近所に集まれる場所があるのは理想」と話す一方で、「空き家を活用したりコミュニティーに入りたいというニーズはあるが、ボランティアで運営していくのでは長続きしないと思う」と語った。
TOMネットの林秀樹代表は「空き家は、使われてさえいれば建物として持つ。海外では行政が工具を貸し出し、地域の有志がDIYで直しながら自由に使っている例もある」と説明。「使ってもらえば長持ちし、危なくも汚くもない。かつコミュニティーができ、何らかの消費も起きる。公民館やまちづくりセンターのように広域ではなく、狭い範囲で数多くできれば、ものすごい数の空き家が利活用できる」と述べた。
進行役を務めた北海道科学大の浜谷雅弘人間社会学科教授は「いろいろなコミュニティーができるよう将来像をイメージし、ハードとソフトのパッケージで考えていくことが重要だと思う」と話し、「街を愛する気持ちを表に出しながら、空き家や空き店舗対策ができれば」とまとめた。