真砂徳子の起ーパーソン 風をおこす人々 第53回 北海道の楽しい100人主宰 株式会社恵和ビジネス代表取締役社長 渡辺 淳也(わたなべ じゅんや)さん

2014年12月05日 15時06分

 北海道在住の〝楽しい〟100人が登壇するトークイベント「北海道の楽しい100人」が話題です。2012年2月から札幌で隔月開催され、毎回4人のゲストスピーカーが、15分という持ち時間で、それぞれの経験、アイデア、ビジョンなどを語り、等身大のスピーチが共感を呼んでいます。ネット中継され、アーカイブも配信。フェイスブックや口コミで評判となり、地域のマンパワーにスポットを当てる試みが注目され「地域げんき大賞」(主催・北海道新聞社)を受賞するなど反響を広げています。主宰のお一人、渡辺さんにお話を伺いました。

★北海道の楽しい100人は、有名講師を招いたり、著名な成功者による講演会ではなく、聴く側のごく身近にいる一般市民の思いや背景に着目しています。開催の経緯は。

渡辺 淳也さん

☆渡辺 主宰は、私と友人3人(プランナー・佐藤満敬氏、14年3月まで小樽商科大学准教授、昭和女子大学准教授・保田隆明氏、小野達司氏)です。北海道は、その良さや魅力の発信が不得手といわれます。私たちは皆、道外や海外で生活した経験があり、外からの視点であらためて北海道を見ると、〝発信下手〟な道民性を惜しいと感じる事も多かったんです。アメリカの「TEDカンファレンス」(カリフォルニア州で年に1度、さまざまな分野の人物がプレゼンテーションを行う世界的な講演会。以下、TED)のような場をつくり、北海道のマンパワーを少しでも底上げできればと思い立ちました。

 TEDのスピーカーは、世界をよりよい場所にするための価値あるアイデアを持つ人たちで、元大統領やノーベル賞受賞者のような有名人もいれば、市井の人たちも名を連ねています。1人の講演時間は短ければ3分、長くても20分間ほどで、その様子は、インターネットで無料閲覧できる仕組みです。

 私たちは、ワクワクと新しい発見に満ちたTEDをヒントに、北海道の身の丈にあったイベントを構想しました。それが「北海道の楽しい100人」です。スピーカーは北海道在住者に限定しています。身近な人の楽しく豊かな視点、やっている事、やろうとしている事についてじかに話を聞き、共感したり、応援し合えるような、登壇者と聴講者の垣根を越えた温かい交流の機会を思い描きました。

★今では、100人から200人もの動員がある人気イベントとして定着しています。盛況の背景は。

渡辺 淳也さん

☆渡辺 これまでのアンケート調査で、最も好評だったスピーチは、ある主婦の方でした。ご主人の仕事の関係で海外生活が長く、帰国後東京の小学校に編入したお子さんが、なじめずいじめを受けていたそうです。戸惑うお子さんに心を痛め、教育環境に定評があった石狩市の小学校に転校させる事を決意。ご主人も転職を決め、縁もゆかりもない北海道へ一家が転居された経緯を切々と語って下さいました。

 大勢の前で話す経験などない一般の方でしたから、ご準備された原稿を一生懸命読み、不慣れながら心の内を伝えようとする姿も胸を打ち、涙を流す聴講者もいました。スピーチテーマのインパクトや、高度なプレゼンテーションスキルなどで会場が熱を帯びるTEDとは違う、「北海道の楽しい100人」ならではの一体感を感じました。

 聴講者にはリピーターもいますが、登壇者が、ゲームソフトの開発者、農家さん、ケーキ屋さん、元アイドルなど多分野にわたるため関心の幅も広く、都度、新たな顔ぶれも加わります。一度登壇された方が、以来聴講者として足を運んでくださる事も少なくないです。

 1人15分の講演は、もっと聴きたい、もっと話したいという絶妙な長さで、その後の懇親会には、登壇者も聴講者もほぼ全員が参加し、盛り上がるんですよ。イベントを機に、意気投合した人たちが新たにビジネスを始めたり、アイデアを形にするつながりも生まれています。

★SNSをはじめ〝デジタルなつながり〟が取り沙汰されている中で、北海道の地縁を重視したイベントが、人と人の結び付きを強め、信頼関係を醸成させている事に意義を感じます。

渡辺 淳也さん

☆渡辺 GPSを使えば1日に歩いた距離や歩数をデータ化できます。フェイスブックでつながっている人たちを眺めれば、自分のネットワークを俯瞰(ふかん)できます。デジタルで伝える情報にも、アナログで伝える情報にも、血の通った人の活動が息づいていると思うんです。

 「北海道の楽しい100人」は、北海道のマンパワーやリソースを実感できる媒体の一つ。中でも地縁の良さが生きた親しみやすいメディアかもしれません。先日、私たちの活動に関心を持った広島の有志が「広島の楽しい100人」を立ち上げました。名古屋の有志からも、開催検討のご相談をいただき、思いがけない広がりをうれしく思います。

 「北海道の楽しい100人」は、100人目が登壇する16年2月まで続きます。100人の、100通りの多様な視点や価値観を分かち合える場となり、北海道をより豊かに楽しい所にしていく手掛かりを発信していけたらと思います。

取材を終えて

前向きなパワーに期待

 イベントの運営には、多くの学生ボランティアも関わっています。聞くだけにとどまらず、スピーカー候補者を推薦して下さるなど、場づくりに積極的な聴講者も、自然と増えているそうです。モチベーションは、集まる人たちが楽しそうにしている様子と話す渡辺さん。「北海道の楽しい100人」が育む前向きなパワーと今後の展開に期待が高まるインタビューでした。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

  • 川崎建設
  • 東宏
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (3,193)
おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,510)
ヒトデ由来成分でカラス対策 建設業界に鳥類忌避塗料...
2019年06月28日 (1,399)
交通体系整備を考える会、札幌外周高速道を構想
2023年06月20日 (1,380)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,350)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。