そのときに備える 自然災害の記憶と教訓

その時に備える 自然災害の記憶と教訓(1)

2017年10月10日 17時10分

町全体で防災意識向上へ
 甚大な水害受けた南富良野町

被災した南富良野町

災害時に中心部まで泥水が襲った幾寅地区(札幌開建提供)

 「生まれてから70年、ずっと幾寅に住んでいるけれど、あんな災害は初めての経験だった」

 2016年8月31日、台風10号によって、空知川の左岸2カ所が破堤するという甚大な水害を受けた南富良野町幾寅地区。9月4日に同地区で開かれた防災訓練に参加した須藤良志恵さん(70)は、当時の状況を思い起こす。

 31日未明、須藤さんの自宅では玄関からじわじわと泥水が入り込んできたという。「最初は対処できると思った」とほうきで掃いていたが、水の勢いはどんどん悪化。慌てて2階に避難して救助を待った。

 自宅の浸水被害だけではなく、水が付いた2台の車も廃車になった。「ニュースでいろんな災害の様子は見ていたけれど、まさか自分が住む場所や家で、こんなことが起きるなんて」と話す須藤さんにとって災害は無縁のものという意識があった。

 観測史上最大雨量 空知川堤防が決壊

 国土交通省が設置した雨量計では、昨年8月29日の降り始めから31日正午までに、同地区上流の南富良野町串内観測所で515㍉、同町狩勝観測所で512㍉の累加雨量を記録。30日午後2時から31日午前1時までの12時間雨量も狩勝で255㍉、串内で292㍉と観測史上最大値を大幅に更新した。

 この前代未聞の大雨によって、空知川左岸の堤防が150m、300mと2カ所決壊。地区内約130haを濁流が襲い、家屋約160戸、道の駅や食品加工工場、町の福祉施設など多くの建物や農地が被災した。

 「見渡す限り泥だらけだった。途方に暮れた」と南富良野町内の後藤治子さん(66)は当時の惨状を思い返す。泥をかき出す道具もなく、スコップやちり取りも持ち出した。被災直後に設置されたボランティアセンターを通じ、町内の清掃活動には全国からボランティアが駆け付けた。ことし5月までにその数は道内外から約6000人。「助けてくれた人たちへの感謝を忘れずにしっかり伝えていかなくては」。災害をきっかけに意識が大きく変わった。

 防災の心得配布 無線導入も検討

 未曽有の災害を経験した南富良野町。堤防の改良復旧も完了し、1年以上たってその爪痕は徐々に癒えている。池部彰南富良野町長は「大雨災害は今後またいつ起こるともしれない。安心してばかりはいられない」と語気を強める。

 同町では、ことし2月に災害への備えや今回の浸水被害も記した「防災の心得」を作成し、各家庭に配った。また、8月31日を「南富良野防災の日」に制定。災害時のアナウンスとなる防災無線の導入も検討し、災害に備えるまちづくりの取り組みを進めている最中だ。

 「今回の災害をきっかけに、町全体で防災意識を高めていきたい」と池部町長。自治体と住民らが一体となって災害に備えるまちづくりの重要性を訴えている。

  ◇  ◇  ◇
 昨年8月に道内を襲った連続台風をはじめ、ことし9月に上陸した大型の台風18号など、かつて「想定外」や「未曽有」とされた自然の脅威は珍しくなくなった。爪痕が今も各地に残る中、自治体や地域がこれらの記憶と教訓を生かし、次の災害にどう備えるか。現状と課題を探った。

2017年10月3日掲載


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