新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と豊田通商など6団体は9月29日、苫前町で町営風車の電力を活用して水を電気分解し、水素を製造する実証事業を開始した。水素は11月から町内の温浴施設でボイラ燃料として使用。2018年10月までデータ分析を行い売電と水素販売の両立可能性を探る。総事業費は11億7000万円を予定している。
NEDO、豊田通商のほか、NTTファシリティーズ、川崎重工業、フレインエナジー、テクノバ、室蘭工大が事業に参加。現在、政府は30年ごろまでに電源構成比率の2割強を風力など再生可能エネルギーにする目標を掲げている。
しかし、風任せの発電は不安定で送電網に負荷をかけることから将来的には出力抑制による大量の電力余剰が懸念されている。そこで安定的な発電部分は従来通り売電し、余った電気で水素を製造することを構想した。
現在、流通している水素は化石燃料から作られているが、風力発電で作られれば二酸化炭素を排出しないきれいな水素の普及にもつながる。
こうした可能性の検証に向け、3基の町営風車が建つ夕陽ケ丘ウインドファーム風来坊の隣に水素製造施設、町営温浴施設ななかまどの館に脱水素装置と混焼ボイラを設置した。
具体的には、気象情報を基に安定電力と不安定電力を分類し、不安定電力で水素を製造。水素は取り扱いやすくするためトルエンに吸着させ液体のMCH(メチルシクロヘキサン)に変換。
ななかまどの館に液状で運んだ後、脱水素装置で水素を取り出しLPG(液化石油ガス)と混ぜて燃料にし、トルエンは再利用する。今回は既存のボイラを使うためメーカーから保証が得られずLPG7、水素3の割合で混焼することにした。
実証に必要な風車を提供した森利男町長は「クリーンで純国産資源である風を活用できればCO2フリーで大気を汚染せず、疲弊した地域の活性化にもつながる」と期待を寄せた。