ブロック調達難で特例措置
十勝強靱化へ災害復旧本格化
「強い雨が降ると、今でもどきどきする」
清水町内の建設業者は1年前を振り返り、こう話す。「あんな豪雨、見たことがなかった。でも、あれ以上の雨が全国で頻発している。異常だよね」
ことし、十勝の川は穏やかだ。しかし、クレーンや大型建設機械が立ち並ぶ光景はいつもの年には見られない。災害復旧工事が本格化している。
帯広建管が8月末までに発注した2017年度の公共事業は工事と委託を合わせて223億円。前年度累計の152億円を既に大きく上回る。
国や市町村も例年にない発注量で地元企業だけでは請け負いきれないため、入札の中止、不調、不落札が増えている。特に道の工事で目立つ。
帯広建管工事で相次ぐ不調・不落
帯広建管が3月から8月までに執行した災害復旧の入札は127件。35.4%に当たる45件が不調・不落だった。
対策として地域要件や格付けといった入札参加要件を拡大。帯広建管が8月24日に入札した簡易型総合評価の豊頃糠内芽室線の栄橋上部架設に応札したのは荒井建設、タカハタ建設と、いずれも旭川市の業者だけだった。
入札参加の一番大きなハードルはコンクリートブロック(CB)の調達だ。例年だと、管内の需要は年間20万㌧程度だが、今回の災害復旧では国と道、市町村を合わせて1000万㌧が必要とされる。然別川が氾濫した、いわゆる「56台風」が来襲した1981年当時に28社あった管内の工場は7社に激減。法枠ブロックや積みブロックは既に管内では製造されていない。道工事向けのCBは直轄工事が一段落する9月以降、全道から十勝管内に輸送される見込みだ。
日本の食料基地守る地元建設業
帯広建管では、円滑な入札執行のため、CBが調達できるまで工事は一時中止可能な緩和策を9月末から実施している。中止期間は技術者配置や現場の管理は不要とする特例措置だ。
帯広建管担当の永山秀明十勝総合局副局長は「必ずしも順調ではないが、工事発注は着実に進んでいる。地域のため、速やかに事業を執行したい」と意気込みをみせる。
ただし、これからの時期、CBなど資材輸送に必要なダンプ車両が大幅に不足する懸念がある。既に足りないところに加えて、精糖のビート輸送が本格化するためだ。厳しさは続く。
管内の建設業者を取材して、皆が口をそろえるのは「ことしと来年は工事があるからいい。再来年以降はどうなるのか」
帯広建設業協会の萩原一利会長は「ことしは十勝強靱(きょうじん)化元年。地域の防災強化に必要なインフラ整備はまだ必要」との見方だ。
河川上流部の砂防をはじめとするハード・ソフトの総合的な治水対策、代替道路の確保、既存施設の長寿命化対策。
日本の食料基地である十勝を守るため、地元建設業が総力を結集する戦いは始まったばかりだ。
2017年10月5日掲載