道建青会ファッションショー (下)業界を支える〝力〟に

2015年11月08日 17時59分

 「全道大会のファッションショーで司会をやってみないか」と持ち掛けられたのは、1月にオホーツク二建会に入会したばかりの丸田組(本社・網走)の丸田尚弘企画営業部長(32)。「余興程度だろう」と軽く引き受けたが、デザイン画を見て「どれも真剣に作られている。魅力を最大限引き出すよう紹介しなければ」と責任の重さを痛感した。

前日のリハーサル

 デザイナーは道ドレスメーカー学院の学生。ショー当日は参加しない。「会場にいないデザイナーに代わって思いを伝えたい」。衣装の紹介はわずか1分。最終選考に残った11人の作品には「デニムが好き」「スーツのスタイリングをしたい」など、個性が反映されていた。それを短い言葉で表現するため、渡辺忍委員長と共に何度も札幌を往復して打ち合わせを重ねた。

 9月に始まった読み合わせでは「コンセプトはもっと短く」と何度も注文が付いた。デニムはもともと作業着の素材だから「THE・作業着」、スーツ風は「作業員も会社員」などに言葉を削り落とすと、シンプルになり説得力が生まれた。

 衣装がそろったのは本番3日前。前日の17日、会場設営が進むホテルベルクラシック北見に並べられた完成品は、いずれも予想以上の出来栄えだった。青のキルティングジャケットには反射ベストを参考にしたという蛍光ピンクのライン、黄色く大きいポケットは折り畳めるようマチが付くといった実用的な配慮が加えられていた。

 事業副委員長を務める早水組(本社・網走)の早水誠社長(36)は「商品として成立するレベル」と舌を巻いた。モデルに衣装の素材や機能性、着心地、こだわりをきちんと説くためステージに上がり、丸田さんの司会に合わせて動きを確認する作業を続けた。

 モデル目線で早水副委員長が「ゆっくり読んでアピールする時間を作ろう」「忘れても大丈夫なようプロジェクターにカンペを映しては」と提案。徐々に司会進行ぶりは洗練され、音楽や映像を担当するメンバーにも意気込みが伝わり、リハーサルは深夜に及んだ。

 そして迎えた18日、ホテルの控室に各地区から11人のモデルが集まった。「面白いポーズをして盛り上げようか」。緊張を紛らわそうとしてか軽口が飛び出す。早水副委員長が「学生が夏休み返上で作った力作」と言って衣装を渡すと、「ここまで本格的なのか」と皆の顔が引き締まった。袖を通すと「着心地が良い」「現場でも着られそうだ」と声が挙がった。

 空知経営研究会で北創(本社・栗山)の佐々木進一取締役(29)が着た「スポーティー」がコンセプトの作業着には、ファッション総合学科1年の木下有紗さんから手紙が添えられていた。〝私の作った服をよろしくお願いします〟。「責任重大だ」。読み終わり天井をあおぐ佐々木さんの表情に真剣さが増した。

 ショーは一発勝負。直前のリハーサルで早水副委員長がモデルに指示を出す。「袖をめくって着やすさを表現して」「立ち止まってチェックの裏地を見せて」。初めは緊張していたものの、30分後の本番では自信たっぷりに観客の前を歩く姿があった。磨き抜いたコンセプト、深夜まで続いたリハーサル、デザイナーの真剣な思いが結実した瞬間だった。

 観客の歓声と称賛で幕を下ろしたショーは多くのものを残した。「他のメンバーと本音で関わることができた」と話す丸田さん。早水副委員長は「ファッション業界の学生に建設業の仕事を理解してもらえた」と手応えを感じた。

 グランプリ作品はオホーツク二建会の公式ユニフォームとして量産。他の作品は展示会やドレスメーカー学院主催のショーに出展される予定だ。今後も作業着を通じて業界をPRする取り組みは続く。渡辺委員長は「量産メーカーも発想の斬新さに驚いている。業界の垣根を越えた」と成功を実感する。

 11着の作業着は、真摯(しんし)な思いは必ず届くことの証明となった。それは若い世代に引き継がれ、20年、30年後の業界を支える力となるはずだ。

(2015年10月8日掲載)


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