途切れたレール 第3回 地域主体で存廃選択を 室蘭工大大学院工学研究科准教授 有村 幹治氏

2016年01月30日 11時27分

室蘭工大大学院工学研究科准教授 有村 幹治氏

なぜローカル線が苦境に。

 所得の増加やガソリンの安定供給などを背景としたモータリゼーションの進展で、車がなければ利用できない場所に公共施設や病院、郊外型店舗などが立地するようになり、駅を中心としたローカル線などの公共交通が利用しにくくなった。

 だが住民にも車で移動できる層とできない層がある。鉄道は車を持たない学生や高齢者らにとっては身近なもので、アクセシビリティの役割を担っている。

 一方、JR北海道にとってローカル線存続は難しい実態がある。JR北海道再生のための提言書には、安全対策に投資する経営戦略が盛り込まれたが、利用客が少ない赤字路線が足を引っ張っている。結果、利用者の安全が確保されない状態のまま営業し、事故や運休が発生することになり、利用者の減少につながっていく。

復旧、維持にはどんな視点が必要か。

 安全管理を優先するJR北海道の経営戦略では、完全復旧が大前提。部分的に復旧して運行したとしても、修繕箇所がたびたび出るようではコストが掛かる。費用負担をどうするかの結論が出ないと、鉄路は維持できない。意思決定を先延ばしにすると追加費用がかさみ、詰め将棋のように選択肢がなくなる。

 鉄道、バスなど地域の公共交通の再生を図るためには、京都府の北近畿タンゴ鉄道(現・京都丹後鉄道)沿線自治体などが作成した地域公共交通網形成計画の策定も一つの手段。国や道のサポートも必要となる。

 ただ、完全復旧したとしても、被災前と同じサービスを持続することは厳しい。生活路線としても精査すべき事項はあるし、観光面でも地域全体が企画して人を呼び寄せるような動きがほしい。鉄道を軸としたまちづくりを慎重に進めなければ、日高線を維持する方向にはならない。

バス転換という考え方はあるのか。

 日高線は、146kmと極めて延長が長いことが課題。いったんバスを選んでしまえば、鉄路に戻る選択肢がなくなってしまう。運転手の確保も厳しい上、レールを取り外すコストもかさむ。現状の代替バスはサービスが低下するイメージで、向上するという案でなければ地域の合意は得られないだろうし、他の赤字ローカル線にも波及するようなら悪いモデルケースになりかねない。

 転換に踏み切るにしても徹底的に利用者視点に立ち、道の駅や既存の駅をまちの玄関口や結節点とし、都市間高速バスとの接続など地域の交通を組み合わせるべきだ。鉄道、バスのどちらを選ぶにせよ、日高全体で地域が主体的に住民の足を守ろうとする取り組みが必要ではないだろうか。

有村 幹治(ありむら・みきはる)

札幌市出身の43歳。室蘭工大博士課程修了。10年から室蘭工大大学院工学研究科助教、13年から現職。専門は地域計画、都市計画、交通計画。

(2016年1月30日掲載)


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