旭川開建旭川農業事務所は19日、当麻ダムの新たな洪水吐きが完成したことを受け、報道機関向け説明会を開いた。洪水流下能力を以前の洪水吐きの2倍近くに増強。同事務所によると、こうした改修は道内外でも前例がなく学識者らと共同で慎重に検討を重ねたという。水害対策だけでなく、ダム技術の進歩への貢献が期待される。
当麻ダムは堤高21・3m、堤頂長(改修前)221m、堤体積19万7000m³の中心遮水ゾーン型フィルダム。農業用ダムとして約60年前に整備され、当麻町内に農業用水を供給している。
従来の洪水吐きは、毎秒234m³の設計流量に対し、貯水池内の貯留効果を見込み毎秒141m³の洪水流下能力で建設された。しかし、流域内の開発に伴い洪水流出形態が変化したことから、洪水流下機能低下によるたん水被害の発生を懸念。国営総合農地防災事業とうま地区で新たな洪水吐きを整備し、このほど全ての工事を終えた。
新たな洪水吐きは、貯水池沿岸の町道を移設した場所に大林組が施工した。比較的珍しい正面越流Y型と呼ばれる形式を採用したため、30分の1の縮尺模型での性能試験も実施。洪水流下能力は従来から大幅にアップし毎秒268m³となった。
洪水吐きの整備に合わせ、従来の洪水吐きがあった部分への堤体構築のほか、取水施設の移設も必要となった。工事によってダムの機能を損なわないよう、学識者らと12回にわたる会合で設計や工法などを詳細に検討したという。
佐々木悟所長は「こうしたダム改修は全国的に見ても前例がなかった。国土交通省が既設ダムの改修などによる利活用を提唱する中、先駆的な取り組みになったのでは」と話す。気象条件が年々変化する本道の状況にも触れ、「地域住民の安心にもつなげたい」と期待感を示した。