NPO法人電線のない街づくり支援ネットワークはこのほど、札幌市内で「北海道らしい無電柱化を考える」をテーマにシンポジウムを開いた。パネル討論では、石田東生日本みち研究所理事長、浜田哲美瑛町長、室谷元男江差町歴まち商店街協同組合監事、奥村敦史北海道電力流通本部配電部長の4氏が、道内での無電柱化推進を巡って意見を交わした。
「日本で最も美しい村連合」に加盟する美瑛町では、景観を撮影するために電柱を避けて畑に侵入する観光客らが課題になっていた。
浜田町長は、市街地や良好な景観地域で無電柱化を進めた結果、景観を生かしたスポーツイベントの開催や企業進出など満足度の高いまちづくりにつながった例を紹介。技術者としての経験から無電柱化工事の過重さが普及を妨げていると指摘し、「法整備に伴い、公共事業にしっかりと組み込み、無電柱化が地域にとって一つの選択肢だということを認識してもらうべき」と主張した。
江差町は、歴史的景観が残る「いにしえ夢開道」で延長1・1㌔を道路拡幅・街路整備に合わせて無電柱化。整った街道を舞台にして、花嫁行列や長持ち唄といった文化を披露している。室谷監事は「単に電線が地中化して町がきれいになったというよりも住民一人一人の心の変化が大きかったように思う」と報告した。
奥村部長は無電柱化整備手法や課題を解説。歩道部分が車両の出入り口になる商業地区では地上機器を設置する場所の確保が難しい点や、冬場の積雪による機器の埋もれなどの危険性を指摘。景観への配慮を考える一方で「停電が起きると、地中設備は掘り返してケーブルを直さないといけない。災害のことを考えると早く復旧したい」と話し、無電柱化に伴う代替電源の確保も課題に挙げた。
石田理事長は「どんなまちにしたいかを住民が自分のこととして考えることから始まっている」と両町の共通点を示し、まちづくりへの住民の当事者意識が必要とした。代替電源については「設備を地域のコミュニティーや家庭などのHEMSと組み合わせることで、誇れる町づくりにつながっていく」と話し、「互いの立場が分かることが一番重要」と住民と事業者との連携の必要性を強調した。