おとなの養生訓

おとなの養生訓 第1回「お酒の効用」 適量で楽しい宴席に

2012年08月14日 15時32分

 体に悪いことは充分に分かっているのですが、仕事上のおつきあいもあり、お酒を飲まないでいることは、なかなか難しいものです。どうしても飲まなければならないお酒ならば、上手につきあう方法を考えることが得策です。そこで、お酒について考えてみました。

 お酒を飲み始めると、気分がほぐれて、良い気持ちになったり、爽快な気分になったりします。このタイミングを利用すれば、商談もスムーズにすすみ、職場の仲間とも打ち解けて話に花が咲くものです。これは、お酒の主成分であるエチルアルコールの作用です。

 そもそもエチルアルコールの人体に対する主な作用は、神経細胞のはたらきを抑えることです。いわゆる麻酔作用です。なので、大量に飲みすぎてしまった場合は、麻酔作用により人は昏睡状態に陥り、ついには呼吸すら止まってしまうのです。

 ところで、はじめの1杯目のお酒が体に回ったぐらいでは、ごく弱い麻酔作用しか示しません。そしてそのときに麻酔される神経は、抑制性神経と呼ばれる種類のものであることが分かっています。脳のなかの抑制性神経は、自制心や「気配りによる行動の抑制」などに関わっていると考えられるので、この神経が抑制されると、気分が開放的になり、緊張がとれます。

 普段無口な人がスムーズにしゃべり出したり、愛想がない人が急にニコニコし始めたりするのです。皆がこの状態になった宴席は、実に楽しくて愉快なものです。しかし、ここから杯を重ねるうちに麻酔作用が強まってきます。

 抑制性神経のとても重要なはたらきに「理性」がありますが、人によってはこの理性のタガが飛んでしまって、いろいろ問題行動を起こすようになります。酒宴になると決まって脱ぎたがる人、誰彼かまわず抱きついたり、キスしたりする人を時折見かけます。

 また、抑制が効かないので、些細なことで怒り出す人や、人の言うことにいちいち絡む人、人にお酒を強要する人など、酒宴を気まずくする人が出てくる原因も、エチルアルコールの麻酔作用に原因があります。

 というわけで、適度な麻酔作用を持続させることが出来れば酒宴は楽しく終わるはず。もちろん個人差がありますが、おおむね1時間あたりビールジョッキ1杯、日本酒1合ぐらいのペースなら、大丈夫かと思います。何?足りないって?後は覚悟を決めて飲んでください。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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