先の厚生労働省の調査によると、日本の成人のうち、男性の3割、女性の2割は肥満体型であることになっています。道理で、周りを見渡すと恰幅のいい人が目につきます。でも、若い人のなかで大きなお腹を抱えている人は、それほど多くありません。
同じ調査で見ても、20代男性の2割弱、女性では1割に満たない人しか肥満ではありません。増えたとはいえ、10代の若者の肥満は、圧倒的に少ないのです。つまり、肥満である人は20代から30代にかけて急速に太るのだということです。これを「中年太り」と呼びます。
なぜ中年太りになるのか、この謎を解くカギは、同じ調査にある各年代での摂取カロリーの数値を見ると分かります。20代から50代まで、男性で一日あたり2100kcal前後、女性で1900kcal前後の摂取量となり、ほとんど変わりません。
つまり、皆さん若いときに身についた食事量を取らないと満足しないと言うことです。ところが、体の消費カロリーは年代とともに減っていくのです。それは仕事が忙しくて運動しないから、という理由もあるのですが、それ以上に一種の老化現象として、消費カロリーは減っていく運命なのです。
というわけで、中年の方々は、「普段通りに食べているのに、知らず知らずのうちに太ってしまった…」という実感を持つことになるのです。とくに30代の方は、まだまだ自分の体力に自信もあるし、自分を中年だとは思っていないので、食事量を減らすなど思ってもいないのでしょう。30代のツケは後に大きくお腹に溜まるという訳なのです。
では、対策はどうすればいいのでしょうか?まず、30代のうちに運動の習慣をつけることですが、この年代の人に運動というと、すぐにゴルフだ、野球だ、スキーだと、強い運動をしたくなりがちです。でもこういう運動はせいぜい週に1回ぐらいしかできませんし、長続きしないのです。
秘訣は歩くことです。通勤はなるべく歩く。マイカー通勤は避ける。職場ではエレベーターを使わない。昼を食べに行くときもなるべく歩く。目標は1日1万歩です。30代から始めれば、中年太りにはならないでしょう。あとは、朝はガッチリ食べて、お昼は普通、夕食は控えめにするのがいいですね。そう、50代の方も手遅れではないですよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)