室蘭市が、周辺の宅地開発に伴い伐採する方針を固めていた市内知利別町のクロマツ、通称「あんぽんたんの木」の保存が、宅地開発事業者である新日鉄興和不動産などの理解・協力で決まった。伐採方針を示した後、市民から「切らないで!」との声が多数寄せられたことから再検討したもの。樹木医による診断、交通安全上の検討を通じて結論を一転。安全対策を図った上で、残すことになった。
あんぽんたんの木は、知利別町4丁目の道路中央に生えている一本松で、樹齢80年、幹周182cmに上る。地元の市民から親しまれており、近隣の桜蘭中では部活動のランニングで目印にもなっている。
近隣にはかつて新日鉄住金の社宅などがあり、同社のグループ会社で宅地開発などを手掛ける新日鉄興和不動産が「リビオ知利別プレミアタウン」として宅地開発中。
この路線は市が所有しているが、宅地開発に合わせて正式に市道認定するに当たり、車の接触痕などもあり交通安全上問題だと判断し、伐採の方針を固めた。
だが公表後に市内外から「残してほしい」という趣旨の要望が市に殺到。桜蘭中の学校祭で展示された壁新聞にも「木を残して!」と書かれていた。
市はこうした背景を踏まえ、木を残したまま交通安全上のリスクを回避できないか再検討。樹木医から「現状のままで衰弱の可能性はない」との診断結果も得た。さらに通路拡幅や交通安全施設整備に当たって、周囲から協力を得られることも分かったため、一転して伐採を取りやめた。
周辺整備は、新日鉄興和不動産側で実施。土地を所有する親会社の新日鉄住金が中島町寄りの10m²を無償貸与し、クロマツを回避しながら車両が通行できる幅を確保。木の前後にはクッションドラムなどの交通安全施設を設置することなどで合意し、12月までに工事することとなった。
青山剛市長は「生徒たちのクロマツに対する思いをくみ取った。地域のシンボルとしてこれからも大切にしてほしい」と話す。市民からは「市民運動が実った結果」「市の対応に感謝」といった声が聞かれる。(室蘭)