おとなの養生訓

おとなの養生訓 第13回「お酒と睡眠」 脳の休息妨げる原因に

2013年01月15日 17時19分

 この時期は忘年会に新年会と、行事や宴席が続きますので、お疲れの方が多いのではないかと拝察します。疲れを取るには、よく眠ることが一番です。でも、夜遅くまで仕事があったり、宴席で夜更かしが続いたりすると、体のリズムが狂うのか、なかなか寝付けなかったりします。

 そこで、ついつい寝酒を飲む人が少なからずいるわけです。確かにお酒を飲んで床につくと、寝付きが早いのですが、実は、通常の睡眠とお酒を飲んで眠ることは、脳に対する影響が全く異なるのです。

 そもそも、人が毎日睡眠を取る理由は、一日中はたらいている脳に、休息を与えるためです。体の休息は横になっているだけでとれるのですが、脳の休息には睡眠が必要であることが分かっています。

 その睡眠中には、脳のはたらきが低いレベルになっている徐波睡眠という状態と、脳がやや活発に動いているレム睡眠と呼ばれる状態が、交互に繰り返されています。このレム睡眠の状態が、脳の休息に必要不可欠です。たとえれば、睡眠中に脳を試運転して点検しているというような感じです。

 そこで、お酒をのんで睡眠した場合は、この徐波睡眠とレム睡眠の繰り返しのリズムが乱れてしまい、脳の休息がうまく行われないのです。とくに徐波睡眠のときに、浅い眠りにしかならないので、夜中に目が覚めてしまうことがよく起こります。

 また、アルコールには脳を麻酔する作用があります。眠るつもりがなくても、飲み過ぎてしまうと眠ってしまうことは誰でも経験していると思いますが、これはアルコールによって脳が麻酔されたために起こることです。「飲んだことで疲れて眠った」と誤解されていますが、脳が麻酔されたのですから良いことではありません。

 飲み過ぎて眠った場合は、レム睡眠自体も起こらなくなり、脳はむしろ深いダメージを受けると考えられます。なので、眠る前に起こったことを忘れる、逆行性健忘と呼ばれる状態になります。朝目が覚めたらベッドの中にいるけど、どうやって帰って来たのか全く思い出せないこと、ありませんか?

 こう考えると、寝酒を習慣にしてしまうと、逆に脳に大きな負担をかけていることになります。やはり、原則的には寝酒はしない。夜は適当な時間で飲むのをやめて、少しさめかけてから眠るのがいいようです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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