医師の診断や職場の健康診断などで血圧が高めと自覚している人は、相当な数に上るとおもわれます。高血圧は国民病であります。高血圧になれば、動脈硬化がすすみ、脳卒中や心臓病、腎臓病などを引き起こす危険性が高まるので、なんとしても血圧を下げる必要があります。そこで、一番先に取り組まなければならないのが、塩分制限です。でも、何で塩分が血圧を上げるのかご存じでしょうか?
人の体重の約60%は水分で占められていますが、その水分は真水ではなく、ナトリウムなどの塩分を含んだ塩水になっています。この塩分濃度は、狂ってしまうと細胞にダメージが加わるので、厳密に調整されています。
とくに体をめぐる重要な水分である血液にはナトリウムが多く含まれていて、その濃度は常に一定になっています。ここで、より多くのナトリウムつまり「お塩」を食べると血液の塩分濃度は上がることになります。
そうすると大変なので、濃度をもとに戻すためにより多くの水分を血液内に留めることが起きます。塩からいものを食べると水を飲みたくなるのは、この濃度調節を行うための反応なのです。
調整の結果、塩分濃度は正常に戻るのですが、結果的に血液量は増えることになります。しかし、血管が増えることはないので、増えた血液量のため血管がパンパンに張ってしまいます。これがまさしく血圧が上がった状態なのです。
日本人は、血圧が高くない人ですら、総じて塩分の取りすぎの傾向があります。ですから、血圧が高めの人に適切な塩分制限をすると、見事に血圧は下がるのです。塩分制限で問題になるのは、塩味をあまり感じない食べ物で塩がたくさん入っているものがあるということです。
代表的なのは、パン、パスタ、うどんです。塩分制限というと、すぐに味噌汁を控えることが思いつくのですが、そのためにご飯をひかえてパンや薄味のうどんを食べる人をよく見かけます。でも、実はあまり効果的ではありません。
同じ量の塩なら、食べ物の中に含まれるものより、食べ物の表面にのみかかっている塩の方が、味を感じて満足感が出ます。味噌汁は控えるとして、ご飯にほんの少しフリカケや佃煮をのせる方が、パンにマーガリンを塗るより絶対に減塩になります。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)