おとなの養生訓

おとなの養生訓 第48回「お酌」 善意の勧めが強要にも

2014年06月27日 13時08分

 差しつ差されつ、お酒を酌み交わすのは、酒席での重要なコミュニケーションツールといわれます。しかし、注がれたお酒に、必ず口をつけなければならないという「決まりごと」は結構、厳しいものがあります。結婚披露宴の席で、次々にお酌されて、顔真っ赤にしてふうふう言っている新郎を見たりすると、かわいそうになってきます。

 正直、お酌は体に良くないと思います。自分がどのくらいのお酒を飲んだのか、判らなくなってしまうからです。お酌する方は、そのことだけが目的(?)だから、相手が前後にどのくらいのお酒を飲んでいるか、そのピッチはどのくらいかなんて、一切構わず、善意の塊として勧めてきます。

 断れないからと、素直に受け続けると、結果的にハイピッチで、相当な量のお酒を飲む羽目になります。これは、悪名高き「一気飲み」とさほど変わりません。さらに、注がれた杯やコップを空にすることを求められたりして…。やはりお酌なんてなしで、気兼ねなくマイペースで楽しみたいものです。

 そういえば、ワインやビールより、日本酒の方がお酌されてしまう確率が高いような気がします。もともと、日本酒はお燗して飲むのが普通で、それもお猪口で、一口ずつ飲むものでした。お燗が冷めないように楽しむための方策です。

 だから、日本酒はもともとお酌が前提のお酒なのです。ところが、今は冷やのコップ酒に平気でお酌してしまいます。で、酒宴ではビールやワインまでお酌するのです。味が変わっておいしくないと思うのですが…。

 元来、ワインは大きなグラスに入れて、ある程度自分のペースで飲み進めるのが原則。ビールはジョッキに入れて、それを飲み干すまで注ぎ置きなんてしません。ウイスキーのストレートをお酌なんてしないでしょう!よく調べると、お酒がまだ入っている杯にお酌をするのは、日本ぐらいのものらしいのです。

 日本のお酌文化は、もちろんいいところもあるのですが、ともすると、お酌する方が、される方に飲酒を強要することにつながってしまいます。学生や若い人たちの飲酒事故は、お酌による飲酒の強要が発端である場合が大半です。お酌は、初めの一杯目でとどめたらどうでしょうか?

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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