ビールといえば、ホップ!というくらい、ビールにホップは欠かせないものです。ビールのさわやかな苦味は、ビールの最大の魅力ですが、これはホップの苦みであることはご存じのとおりです。でも、ホップはビールに苦みを与えるために配合されたのではないのです。
ホップは麻の仲間で、つるを出す多年草です。その雌株に「球花」と呼ばれる花がつくのですが、これを取り入れて、ビールの醸造の際に配合します。こうすると、ビールに苦みと香りが付きます。そして泡立ちがよくなるといわれます。
また、ホップを入れると出来上がったビールが腐りにくく、長持ちするので、昔から使われていたのです。今は、冷蔵技術が発達したので、ホップの防腐作用は必要がないのかもしれませんが、苦み、香り、そして泡立ちはビールの魅力ですから、やはりホップは必要ですね。
ホップは、もともと薬草として栽培されていたものでした。なので、ホップには様々な薬としての作用があることが分かっています。苦味自体の作用でもあるわけですが、胃腸の運動を活発にします。さらに胃液の分泌をたかめます。二つの作用により消化吸収を促進します。
また、鎮静作用があり睡眠時間を延長するといわれます。さらに、最近の研究から、インスリンの作用を助けて糖尿病患者の血糖を下げる作用、肥満予防作用、女性ホルモン作用があることから更年期障害の改善などが、明らかになっています。実に、様々な作用を持っているのです。
これだけ体に良い作用を持っているホップがたくさんは入っているのだから、ビールは体に良いお酒といえないことはありません。たとえば、食前酒としてビールを飲めば、炭酸が胃を刺激する作用に加えて、ホップの消化促進作用が加わるので、食欲が増進して、食事をおいしく楽しめるはずです。「とりあえずビール」は理にかなっているといえます。一杯ぐらいなら、ホップの鎮静作用で、気持ちよく眠れるかもしれません。
でも、もちろん、ビールはお酒であり、アルコールの作用が強いものです。飲む量が増えれば、アルコールの作用である、胃腸運動の抑制、睡眠を浅くする作用が出てきて、ホップの利点を打ち消してしまうのです。体に良いビールの飲み方は、1日大瓶1本まででしょうか。ちょっとさびしいかな?
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)