ラム酒といえば、皆さんもお分かりだと思います。でも、それはカクテルの重要なベースのお酒とか、フルーツを付け込んで、それをケーキなどの洋菓子に使っているので出会ったという感じなのではないでしょうか。ラム酒そのものを味わったことのある方は、それほど多くないと思われます。
ラム酒は、サトウキビを原料とした蒸留酒で、現在では主に中米の島々で作られています。でも、日本でも沖縄などサトウキビが採れるところを中心として、作られているのです。サトウキビが原料だといっても、サトウキビの糖液をそのまま使うのではありません。
サトウキビの糖液でお砂糖を作った後に残る褐色の液が原料です。これを廃糖蜜と呼ぶのですが、純粋なお砂糖を取った後なので、一見不純物と思われるような、様々な成分が含まれています。これを発酵させて、蒸留すると、この不純物が得も言われぬ、独特の香ばしい香りを作り出します。
この香りを生かす方法が、カクテルであったり、お菓子に利用したりするのです。でも、アルコール度数は40%ぐらいで、標準的なブレンドウイスキーと同じなので、それほど濃いわけではありません。ですから、本当はストレートで、香りを楽しみたいお酒です。
実は、ラム酒は、案外、女性が好むお酒です。カクテルならモヒート、ダイキリ、ブルーハワイ、マイタイなど、女性が好むものが有名です。ケーキに添えられるラム酒で漬けたフルーツは、必須アイテムかもしれません。
きっと、だからなのだと思うのですが、ラム酒のストレートを女性に勧めて、「おいしい」といわれることが多いのです。ウイスキーのシングルモルトでは、こうはいきません。ラム酒の香りには、女性を酔わせるなにかがあるのでしょうか。
いいや、男だってラム酒の香りは大好きです。わざわざ葉巻にしみこませたりします。シングルモルトを作るのに、ラム酒を作った後の樽を利用する製造所もあります。
ラム酒は相当な潜在能力があります。なにせ、体に害が少ない蒸留酒です。体への優しさは焼酎と同じ。日本でも、もっと飲まれていいお酒だと思います。ウイスキーがブームになった昨今です。流行りそうですね。でも水割りはいけませんよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)