おとなの養生訓

おとなの養生訓 第66回「フレーバー」 早食いはもったいない

2015年03月27日 14時59分

 フレーバーとは食べ物の香り、味、食感など口に入れた時に生じる感覚をひとまとまりに表わす言葉とされます。日本語では風味とか香味と訳されます。食べ物を口に入れれば味を感じるのは当然です。食感とは舌触りや歯触り、のど越しの感覚のことです。ところで、口に入れた食べ物の香りとはどういうことでしょうか。

 もちろん、食べ物を口に入れなくても香りを楽しむことはできます。でもこれはあくまで香り、英語ではスメルとアロマと表現されるもので、フレーバーではないのです。口の中の食べ物の香りは、口と鼻がのどでつながっていることで感じ取られるのです。

 食べ物の香りは口の中に出て、鼻の中へ後ろ側から立ち上り、鼻の天井にある嗅覚を感じる粘膜に到達して、そこを刺激するのです。ところが、こういう経路を通った香りは、鼻の前から入ってくる香りとは感じ方が異なるのです。

 そこで、英語ではフレーバーとアロマというように区別して表現しますし、日本語では「風味」と「香り」として区別するのです。学問の世界では、フレーバーすなわち風味は、味ではなく口の中から鼻に立ち上ってくるにおいのことと定義されています。

 実は、フレーバーは、人が食べ物を味わい、判別するために非常に重要な要素であることが分かっています。たとえば、嫌いなものを食べなければならない時、鼻をつまんで食べる人がいますが、これは嫌いな食べ物のフレーバーが鼻の中に入ってくることを防いでいるのです。そうすると口の中に何があるのかわからなくなるからなのです。

 逆に、かぜなどで鼻づまりをしているときに、食事をすると、たとえ大好きな食べ物であっても、あまりおいしく感じられないものです。大好きな食べ物のフレーバーを感じることができないからです。

 こうすると、食べ物を楽しむためには、フレーバーを良く感じることができるようにするのが効果的ということです。食べ物を口に入れたら、よく噛んで味わうことで、口の中に食べ物がとどまる時間を長くすれば、フレーバーが十分に鼻に届くことになります。

 ですから、口に入れたら、ろくに噛まずに飲み込んでしまっては、本当のおいしさを感じ取れないことになります。早食いはもったいない行為なのです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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