ここ数年、一段とランニングが国民の趣味として広がりを見せています。とくに中高年においては、自身の健康維持のためにランニングを始める人が多くなっているようです。それも、若い頃スポーツをやっていた人が、ランニングを始めるというようなケースだけでなく、それまで全くスポーツと無縁だった人が、色々なきっかけでランニングを始めるようなケースが多くなっています。
ランニングは、自宅の周りや近所の公園などで気軽に始められることも、ブームを後押ししているようですが、そうしてランニングが日課になってくると腕試しをしたくなるもの。
最近はそうした市民ランナーが気軽に参加できるマラソン大会が各地で行われるようになりました。北海道の主要都市では、少なくとも年に1回は何らかの市民ランナーのマラソン大会が行われています。
つまり、昨今のマラソン大会は初心者の参加が増えているということです。たとえば、職場でランニングが流行り始めて、直近のマラソン大会に職場のメンバーが集まって参加することで盛り上がったとします。普段ランニングとは全く無縁だった人にも、勢い声がかかります。
みんながやるのに、自分だけ断るのは気が引ける。生返事を返しているうちに、すっかり話が進んで、出場する羽目になってしまった人も多いとか。こうしたモチベーションの低い初心者の方が、事故なくマラソンを走るための注意点があります。
大会まで、なるべく走る練習をしてほしいのですが、初心者ほど思うに任せないものです。仕事だって忙しいから、走る時間はなかなか取れません。練習不足の初心者が走るのですから、決して無理はしないでほしいものです。
まず、ふつうのTシャツやトレーナーでマラソンを走るのはやめてください。マラソン中はすぐに体が熱くなってしまうのが普通で、厚手のウエアや通気性のないウエアでは、たちまち熱中症になってしまいます。寒い春先や晩秋の北海道でも危険です。
初心者は皮下脂肪が多いので、熱の発散効率がわるく、なおさら危険性が高いとお考えください。また、初心者は周りの雰囲気にのまれて、スタート直後に実力以上のスピードで飛ばしてしまう人がほとんどです。これは、確実に後半のバテを引き起こします。昔はスポーツやっていた人も初心者です。ゆっくり走って完走できたら御の字ではありませんか?
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)