更別村で進めるリラクタウン構想の策定から約10年がたつ。「誰もが安心して住み続けられるむらづくり」を基本理念に村と社会福祉法人博愛会(細川吉博理事長)が連携し、市街地南東の国道236号沿いに広がる5万9733m²で、福祉施設の建設や宅地造成を展開するものだった。当初計画では2009年の供用開始を目指していたが、17年時点で進捗(しんちょく)率は3分の2程度にとどまっている。構想に引かれて移住をした家族もいるだけに早期実現が求められる。村は構想の再構築を進める方針だ。(帯広支社・太田 優駿記者)
障害者授産施設 断念響く
構想は06年に策定。居住してくつろぎと癒やしを実感する「リラックス」、地域と関わりを持ち生活感のある日々を送る「ライフ」、創造性を発揮して人生を輝かせる「クリエーション」の頭文字を取り「リラクタウン」と命名された。事業費は10億円を見込み、診療所や老人福祉施設などを集約した保健・福祉・医療ゾーンに隣接する形で整備するものだった。
事業は07年度から着手した。博愛会は08年に地域密着型介護老人福祉施設に小規模多機能型居宅介護事業所を併設した「コムニの里さらべつ」を開設。セラピー農園としてヒマワリ畑を整備した。村では施設職員などの入居を見込んでコムニ団地を造成し宅地分譲を展開。公園施設や住民の交流施設、62台分の公共駐車場などの整備も計画していた。
ところが、構想に思わぬ問題が生じる。博愛会は当初、障害者通所授産施設とグループホームの建設を計画していた。だが障害者自立支援法が12年に改正され、村外の障害者が地元に戻る見込みが薄くなった。博愛会は2施設の定員確保が難しいとして開設を延期。16年度に定員数と建設コストを再検討すると法人単独での運営が難しい見通しとなり、村に建設断念を伝えた。
村が新設を計画していた交流施設と公園施設も授産施設ありきの計画だったため発注を延期。建設予定地は空き地のままとなっている。
半面、宅地分譲は好調
一方、村が進める宅地分譲は好調だ。当初は施設職員らの入居を想定していたが、村内事業者などが34区画のうち32区画を契約。さらなる住宅需要を見込んで16年には更別幼稚園前の南1線97にも5区画整備して3区画が契約済みだ。
また隣接する保健・福祉・医療ゾーンの入所施設も満床に近い状態。17年には管内の民間企業が村内で就労継続支援B型施設の建設に着手し、18年3月の開業を目指している。村の福祉環境は構想策定時と違う形になりつつある。
その中で構想が再び動きだそうとしている。西山猛村長はことし6月の定例村議会で「計画が10年も進展しなかったのは村としても無責任だった。基本理念を守って考え直していきたい」と陳謝した。再構想に向けては保護者との話し合いでニーズを調査し、他地域の福祉のまちづくりなどを参考にしながら進める方針。「構想にある就労継続支援A型施設やグループホームは、まず必要。最近は充実した医療・福祉環境に引かれて村外から移住する高齢者も増えているから宅地開発やシルバーハウジングなどの充実も求められるだろう」と話す。従来の保健・福祉・医療ゾーンとの兼ね合いも考慮し、施設整備をさまざまな角度から検討していく考えだ。
再構想では実現の可能性を高める必要が当然ある。ただそれ以上に将来長きにわたって障害者や高齢者が安心して住み続けられる環境づくりが求められる。