おとなの養生訓

おとなの養生訓 第72回「大声とお酒」 抑制性神経の働き鈍化

2015年06月26日 09時56分

 こんな経験はありませんか?お酒を飲んだ翌朝、のどが痛いことに気付きます。声を出してみると、かすれてしまっていて、出しづらいと感じます。かぜをひいている感じはしません。明らかに、昨夜の酒宴に原因がありそうです。

 一つの原因は、カラオケです。2次会でカラオケに繰り出すことはよくあります。お酒を飲みながらのカラオケは、のどを痛めやすいのです。理由は、知らず知らずに大きな声を出してしまうからです。しかも、その状態で何曲も歌い続けるからです。

 もし、お酒が入っていなければ、大声で何曲も歌うことはしないでしょう。アルコールは脳の活動を活発化させる作用があります。普段の脳は活動が過度にならないように調節するための神経が働いています。抑制性神経といいます。

 お酒を飲んで酔いが回ってくると、この抑制性神経が一番先にアルコールの影響を受け、働きが鈍くなります。つまり抑制が効きにくくなるので、普段より大きな声を出してしまったり、何曲も歌い続けても、のどの痛みや疲れを感じにくくなったりするのです。この時には気分自体も抑制が取れて、開放的になりますので、これも大声に拍車をかけることになります。

 お酒がのどを傷める原因は他にもあります。抑制性神経が働かなくなったあとも、お酒を飲み続けると、今度は、脳の働き自体が抑制され始めます。抑制されやすい働きとして、聴覚があります。小さな音が聴き分けることができなくなるのです。

 このため、人は自分の声を聞き取ろうとして、知らず知らずに声が大きくなってきます。お酒を飲むと、みんな同じように声が大きくなり、騒々しくなりますから、なおさら大きな声で話すことになります。でも、本人は話しをすることに夢中になっているので、そのことに気付きません。お酒の席で、大声で延々と話し続ける人をよく見かけますが、そこそこ酔っぱらっているのです。

 お酒で大声を出して歌ったり話したりしている本人は、大声を出しているという自覚がない場合が多いようで、周りに迷惑をかけていることに気付かないようです。お酒を飲んだら、誰でも必然的に声が大きくなるものだと考えて、自重するように心がけたいものです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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