私たちの周りには、炭酸入りの飲み物がたくさんあります。コーラやビールは言うに及ばず、最近は日本酒にも微炭酸のものが出てきて、独特の味わいが受け入れられています。炭酸入りの飲料の特徴としては、炭酸の細かい泡が口の中ではじけ、それが舌や粘膜を刺激することで形作られる清涼感です。ですから、のどが渇いた状態では、その清涼感が渇きをいやす効果を生みます。真夏のビールはおいしいですよね。
でも、炭酸自体も味覚に大きな影響を与えています。まず、炭酸は溶けている液体を酸性にする作用があります。酸性を示すものは、もちろん、酸っぱいわけです。その酸っぱさは、炭酸水をそのまま飲まないとわからないようなものですが、そのほのかな酸っぱさが、さっぱり感につながって、炭酸の清涼感に貢献していると思われます。
また、炭酸は甘味に強い影響を与えることが分かっています。甘味を感じやすくする作用です。なので、少ないお砂糖で甘味を感じることができるようになります。ところが、濃い濃度の砂糖水の甘味を抑える作用もありますので、強い甘味をまろやかにする性質もあるわけです。
たとえば、気の抜けたソーダは甘いだけで、全くおいしくないのですが、炭酸の存在が甘さをおいしく変身させているということになるのです。甘さと炭酸は絶妙なコンビといえます。
というわけで、炭酸はおもに甘い飲み物に使われています。甘くて炭酸が入っている飲み物としては、カクテルが思いつきます。相当な種類のカクテルに炭酸が入っています。でも、甘くない飲み物にも炭酸は使われています。代表的なのは、いまブームとなっているハイボールです。
ウイスキーを飲むときは、水割りやロックにはなるべくしないで、ストレートを選ぶ私ですが、ハイボールだけは別。とくに個性的で有名なスコッチシングルモルトのハイボールは非常に素晴らしいものです。
ウイスキーの香りや味わいが、炭酸により引き立ってくるのです。決してウイスキーが薄まったという感じがしないのです。これも炭酸の効果だと思います。炭酸には甘味だけでなく様々な味覚を引き立てる作用があるのだと思います。
宴会のスタートは「とりあえずビール」が大多数だと思いますが、「とりあえずハイボール」も悪くないと思いますよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)